ヒューマンドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』は同じ年・同じ日に生まれた3人の男女の苦難と心の交流を描く心温まる物語だ。主演で一家の父親・ジャックを演じるマイロ・ヴィンティミリアは2017年から3年連続でエミー賞ドラマ部門主演男優賞にノミネート、息子のひとり・ランダル役のスターリング・K・ブラウンは2017年に同賞ドラマ部門主演男優賞を受賞。また本年度のエミー賞ではドラマ部門の作品賞にもノミネートされたこの傑作シリーズに、最新作となるシーズン4が登場。じわり涙するストーリーと、息を呑むような驚きの展開が持ち味だ。米NBCが9月下旬から放送している。
問題だらけ、それでいて美しい人生
同じ年、同じ日に生まれた3人の男女。俳優のケヴィン(ジャスティン・ハートリー)はドラマから舞台に活動の場を移し、慣れない環境で演技のプロとしてのフラストレーションを募らせている。そんなケヴィンをエージェントとして支えるのがケイト(クリッシー・メッツ)の仕事。仕事にダイエットにと奮闘する彼女だが、自分を追い詰めすぎて心が折れそうになることもしばしば。トレーダーとして成功しているランダル(スターリング・K・ブラウン)がケヴィンと犬猿の仲なのも彼女の頭痛のタネになっている。
不思議な縁で結ばれた彼ら主役3人組に加え、シーズン4では第1話から新たなキャラクターが続々と登場。中東に派遣され、愛する夫と離れ離れになった軍人のキャシー(ジェニファー・モリソン)は、前線で部下8名を失くしたことから、深いトラウマを負ってしまう。そのほか、幼い娘を献身的に育てる10代の少年・マリク(アサンテ・ブラック)ら。人と人との不思議な縁が織りなす温かな世界が、いっそう鮮やかな彩りを帯びる。
思いがけない発見の喜び
人生の辛さとその克服をテーマにした本作だが、単に涙を誘うストーリーだけではこれほどまでのヒット作にはならなかっただろう。物語の展開の巧妙さを米The A.V. Clubは褒め称えている。最新シーズンでは、キャシーやマリクなど新キャラクターを視点人物に据えたシーンが展開。これまでの『THIS IS US』とはまるで違うドラマが始まってしまったような展開に、シリーズのファンは戸惑いを覚えることだろう。しかし辛抱強くエピソードを見てゆくと、これまで登場した思わぬキャラクターと縁があったことが明らかに。すべてが一本の糸で繋がる瞬間は、鮮やかで忘れられない視聴体験をもたらしてくれる。
さらに深読みし、シーズンを通じて気が抜けないと身構えるのは米Vultureだ。キャシーとマリク視点での物語が新鮮な感覚をドラマに注入した後で、第1話が終わるまでにメインキャラクターたちとの関係性が開示される。しかし同メディアは、これまで『THIS IS US』は情報を一旦視聴者に開示し、その後で思わぬ隠し球を投げかけて不意打ちを仕掛けてきた、と振り返る。まだシーズン4の放送がアメリカで始まったばかりだが、クライマックスまでに嬉しいサプライズが続く可能性はありそうだ。
フレッシュな10代のラブストーリー
もちろん構成上のギミックに依存してばかりではなく、ヒューマンドラマとしてのしっかりとした物語性も健在だ。観ているだけで幸せな気分にしてくれる良質なラブストーリーのパートも見逃せない。10代で父となった少年・マリクとその恋人について、Vultureは微笑ましいお似合いのカップルだと受け止めたようだ。一緒にハンバーガーを頬張っているだけでも幸福そうに見える二人に、冷え切った自分の心に温もりを取り戻させてくれたと同メディアは述べている。
放送が始まったばかりというだけあって、まだシーズンの全体像を想像することは難しい。ただしThe A.V. Clubが述べるように、前シーズンに増して勢いを感じさせる良いスタートを切っている。涙と驚きの展開に向けて期待は募るばかりだ。
新キャラクターの導入でますます拡がりを見せる『THIS IS US/ディス・イズ・アス』シーズン4は米NBCで放送中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『THIS IS US/ディス・イズ・アス』シーズン3 (C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.