『ジュラシック・ワールド』『その名にちなんで』イルファン・カーンが53歳で死去

アカデミー賞監督賞など4部門に輝いた映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で主人公パイが大人になった姿を演じたほか、『スラムドッグ$ミリオネア』『めぐり逢わせのお弁当』『その名にちなんで』といった母国インドを舞台にした映画や『アメイジング・スパイダーマン』『ジュラシック・ワールド』のようなハリウッド大作映画にも出演していたイルファン・カーンが、4月29日(水)にムンバイの病院で亡くなった。亡くなる前日の28日、結腸感染のためICUに入っていた。享年53。米Varietyなど複数のメディアが一斉に報じている。

母方のおじが舞台俳優だったことから俳優になったイルファンは、売れない時代はエアコン修理屋として働いていたこともあるという。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたミーラー・ナーイル監督の1988年の映画『サラーム・ボンベイ!』で映画デビュー(その時の出番は最終的にカットされたが、のちに『その名にちなんで』と『ニューヨーク、アイラブユー』でも同監督と組んだ)。その後、経験を積んで2000年代に入ると主演も務めるようになり、2005年にボリウッド映画初主演。2011年に母国よりパドマ・シュリー勲章を授与された。約35年のキャリアで出演した作品は150本以上に上る。2016年には日本・オランダ・カナダ合作のTVドラマ『東京裁判』でインドのパル判事を演じていた。

イルファンは、2018年に神経内分泌腫瘍と診断され、ロンドンの病院でおよそ1年にわたり治療を受けていた。一時は、遺作となってしまったインド映画『Angrezi Medium(原題)』の撮影に参加できるまで回復していたという。同作は今年3月にインドなどで公開されたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で早目に公開が打ち切られた。イルファンはまた、逝去する数日前に母親を亡くしていたが、インドは新型コロナウイルスの感染拡大防止のため封鎖状態になっていることから、別の州にいた母親の葬儀にはビデオを通して参加せざるを得なかったという。

世界中で愛されたインドを代表する名優の逝去に、業界から悲しみの声が上がっている。

ボリウッドのスーパースター、アーミル・カーン(『ダンガル きっと、つよくなる』)は、「我々の愛する仲間、イルファンのことを聞いてとても悲しい。なんて悲劇的なんだ。彼は本当に素晴らしい才能の持ち主だった。彼の家族と友人に心からのお悔やみを。イルファン、演技を通して我々の人生に大きな喜びをもたらしてくれて本当にありがとう。君のことは絶対に忘れないよ。愛をこめて」とツイート。

サスペンスドラマ『クワンティコ』などで知られるインド出身のプリヤンカー・チョープラは、イルファンとのツーショット画像とともに以下のようなコメントを投稿。「あなたがもたらしたカリスマ性は本当にただただ魔法のようでした。あなたの才能のおかげで多くの道が生まれました。あなたは私たちの多くに影響を与えてくれました。イルファン、寂しくなります。ご家族の皆さん、お悔やみ申し上げます」

イルファンと『ライフ・オブ・パイ』でタッグを組んだアン・リー監督は「イルファンは偉大な芸術家であり、真の紳士であり、勇敢な闘士だった。彼の死は映画業界にとって大きな損失だ。寂しくなるよ。親愛なる友人、安らかに」とコメント。『アメイジング・スパイダーマン』のマーク・ウェブ監督は「イルファンは、力と優しさが完璧なバランスで共存できることを証明したような人でした。彼が『その名にちなんで』の中でドア越しに新妻に歌を歌うシーンは、『ライフ・オブ・パイ』の父親に訴えているかのようでした。皆さんは、彼という偉大な才能がもたらした魔法の目撃者です。彼は、私がこれまで目にした中で最も微妙な演技ができる俳優だったかもしれません。私はこれからも彼の熱狂的なファンです。ご家族にお悔やみを申し上げます」と述べた。

人気ドラマ『SUITS/スーツ』のハーヴィー役で知られるガブリエル・マクトも、共演したことはないがイルファンと面識があったという。「『その名にちなんで』で妻のジャシンダ・バレットがイルファンと共演した時、私もイルファンに数回会う機会がありました。彼はとても面白く、地に足がついた優しい人でした。そして素晴らしい俳優でもありました。彼とご家族にご加護を」

世界中で愛されたイルファンは、妻スタパとの間に二人の息子、バビルとアヤンがいる。イルファンのご冥福を心より祈りたい。(海外ドラマNAVI)

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イルファン・カーン