『アメリカン・ビューティー』や『1917 命をかけた伝令』でメガホンを取ったサム・メンデス監督が発起人となった、英国の劇場を救うための基金に、スティーヴン・スピルバーグ監督やNetflixが協力している。米Varietyが報じた。
演劇関連の組織であるソサエティ・オブ・ロンドン・シアターとUKシアターが、Netflixからの50万ポンド(約6700万円)の寄付を受けて基金を設立。同基金は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響で4カ月にわたり閉鎖され、打つ手がなくなっている劇場関係者を資金的に援助する。英国政府が演劇や音楽関連、美術館や映画館といった芸術部門をサポートするために総額150億ポンド(約2兆円)以上を投じるというニュースが同時期に報じられていたが、それですべての人を救済できるわけではないようだ。
この基金は、3月16日より劇場が閉鎖されたことで仕事を失いながらも、政府からの助成金を受けられないフリーランスなどの人々を支援するために設立された。一人につき1000ポンド(約13万円)が支給される助成金は、2019年1月から2020年3月31日までの期間、劇場で勤務した人が対象となり、申請者は労働証明と身分証明書の提出が必要になる。
同基金の中心となっているのは、ロックダウン中に劇場を支援しようと声を上げ続けていたメンデス監督。1999年の初監督映画『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞監督賞を含む主要5部門を受賞と華々しいデビューを飾ったが、それまでは演劇界で演出を手掛けていた同監督は、「イギリスで演劇に携わる何千人もの人々が窮地に立たされ、彼らの多くは政府から支援を受けることができませんでした。今、彼らは助けを必要としています」と訴えている。また、『アメリカン・ビューティー』はスピルバーグの製作会社、ドリームワークス配給作品のため、スピルバーグとメンデスは長年の知り合いである。
同基金に寄付をしているのはNetflixとスピルバーグのほか、米HBOの政治コメディドラマ『Veep/ヴィープ』でクリエイターを務めたアーマンド・イアヌッチ、英国コメディドラマ『Little BRITAIN/リトル・ブリテン』で脚本・出演を兼任していたデヴィッド・ウォリアムズなど。なお、3月にNetflixは新型コロナウイルスの感染拡大により、映画やドラマの製作中断で仕事を失った関係者を支援する基金を設立し、1億ドル(約111億円)を寄付。英国の映画やドラマのためにも120万ドル(約1億3000万円)の寄付を行っていた。
そしてNetflixとスピルバーグといえば、動画配信サービスの製作した映画がアカデミー賞にノミネート・受賞されることをめぐって衝突していたことでも知られる。2019年、映画を劇場で体験する文化を守るべきだと訴えるスピルバーグに対し、Netflixは「我々は映画を愛している。そして気軽に劇場へ行けない人々や、フィルムメーカーが作品を発表する場を与えることも大事にしている」と反論していた。そんな過去のある両者が同じ目的のために協力し合っていることは、雪解けにつながるだろうか。(海外ドラマNAVI)
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2000年、『アメリカン・ビューティー』でゴールデン・グローブ賞を受賞したサム・メンデスとスティーヴン・スピルバーグ
(C) Hubert Boesl/FAMOUS