ついにファイナルとなるシーズン15の放送が始まった大ヒット犯罪捜査ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』。今回、日本でも愛され続けた本作で吹替えを務めている、現レギュラー声優8人にシリーズ最終回の収録前に独占インタビューを実施。第2回目は、国際捜査班から異動してきたマット・シモンズ役の中川慶一のインタビューをお届け!
――ファイナルを目の前にして今の心境は?
一ファンとしてずっと見てきた作品なので、まずはシンプルに、終わってほしくないというのが正直な思いです。いよいよシリーズ最終話の収録(取材当時)を行うことになった今、特別な思いはたくさん湧いてきますが、変に力んでも良いパフォーマンスを発揮出来ないことは経験上知ってますから、いつも通りに落ち着いて、全力で最後の1話を全うしたいなと考えています。すべて録り終わった時にどんなことを思うのかはまだ想像もつきませんが、今は余計な事はすべて脇に置いて、目の前の1話に集中したいです。
――いつからファンでしたか?
シーズン1からです。シーズン1の何話だったか話数は忘れてしまったんですが、まだ業界デビューしたてぐらいのときに実は出演させていただいているんですよ。それがきっかけで。(※編集部調べ 第19話「メキシコの猟奇犯」でタクシーから降りてくるロベルト役)
――シーズン5と6でも別の役を吹替えていらっしゃいましたが、シーズン1でも出演されていたんですね。
1カットぐらいの出演だったんですが、めちゃくちゃ緊張していましたね(笑) 同時に、当時ご一緒させていただいたレギュラーメンバーのみなさんを見ると、どの現場でも番組の大役を担って声優業界を牽引されている凄い先輩方ばかりだったので、"いつか僕もこういう面白い作品で、みなさんとレギュラーとしてご一緒できるようになりたいな"と強く思っていたんです。なので、そう思っていた作品に巡り巡ってレギュラーとして出演させていただけると決まったときには、本当に驚きました。
最初はその奇跡にひとしきり喜び浮かれましたが(笑)、国際捜査班の初回の台本をいただいたときには、"諸先輩方が紡いできたあのドラマに、本当にこれから参加させていただくんだな"という実感が強く湧いて、一気に身が引き締まりました。初回収録時に感じていた緊張感は今でもよく覚えています。
――国際捜査班からBAUに異動してきたわけですけれども、演じる上で意識した点などはありましたか?
意識したとすれば、精神的な距離感でしょうか。マットとBAUのメンバーは国際捜査班時代から何度か一緒に捜査をしてきている、ある程度見知った仲ではあります。とはいえ、同じチームとして毎日活動してきたわけではないですから、その分まだお互いによく知らない部分もあったでしょうし、異動直後のマットとBAUメンバーの間には少しだけ距離感があるように感じていました。そういう状況って私たちの現実にもありますよね。でも、BAUチームに貢献できるよう彼が頑張っているうちに徐々にメンバーと打ち解けていって、あるときから"あ、マットも本当にチームの一員になれたな"と感じるようになりました。
これまでのシーズンで、古参のメンバー同士はすでに知っているけどマットはまだ知らないエピソードが会話の中で出てきたり、ふとしたことでメンバーの新たな一面を知ったというシーンが時々出てきました。背中を預け合いながら危険な捜査をしていく日々の中で、さらに知り合っていくうちに、より尊敬し合えるようになったりして、関係を深めてこれたんでしょうね。徐々に徐々に距離感が変化していく様が見て取れました。その様子に従っていたら、異動してきた当初とはメンバーに対する接し方や喋り方が、こちらもだんだんと変わっていきました。
――シモンズの好きなところは?
これはマットだけに限らないことですが、正義感などの熱い気持ちを持ちながらも、事件が起きて緊急で対処しなければならない事態が起こったときには、いかに卑劣で憎き犯人を目の前にしているときであっても怒りなどには振り回されず、そのとき一番必要な行動を冷静にとれるところがカッコイイなと思います。
あと、国際捜査班で描かれていたお話ですが、出生にコンプレックスをもっていたり、祖母との確執があったり、捜査官としては超一流でも父親としては必ずしも完璧ではないところも人間らしさがあって魅力的だなと感じています。
――印象深いエピソードやシリアルキラーは?
マットがまだ登場していない頃のエピソードですが、リードと壮絶な心理戦を繰り広げたキャットが一番に浮かびますね。あのリードをあそこまで乱し、暴いた手法や頭の良さはとても怖かったです。僕が彼女のリストに載ることは絶対にないですけど、もし狙われたらイチコロだろうなって(笑) そしてなんとも切ないキャラクターでもありました。
その後のリードの展開につながる大きな変化を起こした人物ですし、最後にリードが彼女に放った覚悟の一言も素敵でした。あの一連のエピソードは見ごたえ十分で大好きです。
――本作の魅力は何だと思いますか?
多くのクライムサスペンスシリーズって、レギュラーキャストの背景や内面を掘り下げていくのはよくある展開ですけど、『クリミナル・マインド』は捜査官側だけでなく、犯人が持っている苦悩や独特の心理を他のドラマよりももう一歩踏み込んだところまで深堀りして描いているエピソードが多いと感じています。そこが大きな魅力のひとつじゃないでしょうか。
――もともとファンだったということで、好きなキャラクターはいますか?
パッと浮かぶのは、やっぱりロッシやギデオンですかね。そして国際捜査班時代のジャック。みんな大人な男性で、今の自分にはないものを備えている。カッコイイし、憧れます。そして、そんな役を演じられるようになりたいですね。
――収録現場の雰囲気は?
和やかだけど常に適度な緊張感がある、素晴らしいプロフェッショナルたちが集まっている現場だと思っています。休憩中はとても和気あいあいとしていて、いただいた差し入れをみんなでモリモリ食べながらよく笑っていますが、いざ収録が始まるとみんな凄い集中力で細やかな演出にもビシバシ応えていく、そんな現場です。先輩方には毎週それぞれのかっこいい背中を見せていただいています。負けるものかと僕も必死です。
今は感染症拡大防止策の一環として少人数での個別録りを行っていますし、なんでもないお喋りをすることもみんな控えているので、現場の光景は以前とは変わりましたが、漂っている空気感は基本同じだなと感じています。良いもの作るために、こんな状況だからこそ、尚のこと各々が高いモチベーションと集中力を保って収録に臨んでいる。入れ替わりでスタジオに入るときにすれ違うみなさんの様子を見ていても、先に録っていた方の台詞を聞いてもそう感じますね。良いチーム、良い現場です。
――普段はどのようなお話をされていますか? 思い出深いエピソードがあれば教えてください。
本当にありがたいことに、BAUに入った収録初日からチームのみなさんには大変気遣っていただきました。早くにBAUチームに馴染めたのは、現場でも収録後の時間でも、みなさんが積極的に迎え入れようとしてくださったおかげだと思ってます。
たとえば、チームのみんなが大好きなとある洋食店があるんですけど、前シーズンまではほぼ毎週、収録が終わったらそこでご飯を食べながら色々なお話をして、それから帰宅していたんですよ。そこでね、みなさんがいつも僕にちょっとずつ、おかずを分けてくださるんです(笑) 僕も一応自分の分は注文しているんですけど、最年少の男性で、一番後輩で、しかもよく食べるほうだからでしょうか、「中川くん、これちょっと食べる?」「良いんですか?いただきます」なんて言って、美味しいご飯をたくさん食べさせていただいてきました(笑) まさしく同じ釜の飯を食ってきたわけですね。
そういったお芝居以外でのやりとりも含めて、みなさんとたくさんのコミュニケーションをとってこれたおかげで、早いうちに本当の意味でチームの一員になれたんだと思っています。みなさんには本当に感謝しています。今はみんなで食事にいくのは難しくなってしまいましたが、またいつか、みんなであのお店に行けたら楽しいなと思ってます。
――本作に携わって影響を受けたことはありますか?
マットを演じるようになってから、どんなに強い感情が沸き立つ時があっても、今一番必要なことに徹して冷静に物事に対処していける自分であれるよう、改めて心掛けるようになりました。
――ファイナルということで、シモンズに対して気持ちを伝えるとしたら?
マットと、演じられたダニエル・ヘニーさんお二人に向けて、「二人に出会えたおかげで、シーズン1に出演していた頃の夢が叶ったよ!ありがとう!」ですね。また一緒に仕事ができる日がきたらいいなと期待しています。
――シモンズのファイナルシーズンのみどころは?
マットは一流の捜査官であると同時に、夫や父親の顔も持っているというのが大きな魅力の一つだと思います。そのあたりをクローズアップしたお話がファイナルシーズンにも出てきます。ほかの多くの事件やエピソードとともに、この夫婦・家族の展開も最後まで見守っていただけたら幸いです。
――最後に『クリミナル・マインド』吹替版のファンの方にメッセージをお願いします。
『クリミナル・マインド』は一ファンとしてもずっと好きだった作品です。何度かゲスト出演させていただいてきたことも毎話光栄に思っていました。まさかレギュラー出演までできるとは当時は想像していませんでしたが、その幸運とたくさんの感謝に報いるためにも、今日まで精一杯努 めて参りました。
終わってしまうのはとても寂しいですが、最後までみなさんに楽しんでいただけるようにマットと一緒に頑張りますので、ぜひBAUメンバーの行く末を見届けてください。よろしくお願いいたします!
ついにフィナーレを迎える『クリミナル・マインド FBI行動分析課』シーズン15(全10話)は、WOWOWプライムにて放送中。そして、毎週火曜日に吹替キャストの本作への思いをたっぷりと語っていただいたインタビュー記事を掲載していきますので、引き続きお楽しみに。
■『クリミナル・マインド』吹替キャストインタビュー
【1】 ジェニファー・ジャロウ役 園崎未恵
【2】 マット・シモンズ役 中川慶一
【3】 タラ・ルイス役 塩田朋子
【4】 ルーク・アルヴェス役 阪口周平
【5】 デヴィッド・ロッシ役 菅生隆之
【6】 エミリー・プレンティス役 深見梨加
【7】 ペネロープ・ガルシア役 斉藤貴美子
【8】 ドクター・スペンサー・リード役 森久保祥太郎
(海外ドラマNAVI)
Photo:
中川慶一
『クリミナル・マインド15 FBI行動分析課 ザ・ファイナル』(c) ABC Studios