
ワンテイクにこだわる映画監督(サラ・ポーリー)と、それを見学しようとする新任スタジオ責任者マット(セス・ローゲン)の姿が描かれるApple TV+オリジナルドラマ『ザ・スタジオ』の第2話「長回し(原題:The Oner)」。このエピソード自体もワンテイクで撮影されており、まさに「映画作りを題材にした作品の中で、その映画作りの手法を実践する」という、メタ構造の極みともいえる試みだ。
撮影監督が語る挑戦の舞台裏
「長回しなんて馬鹿げてる。監督の自己満足のために、全員が苦しむだけだ。観客は気にもしないよ」
劇中で、ワンテイク撮影への苛立ちをぶちまけるシーンのセリフにあるように、冒頭から最後まで目が離せないエピソードとなっている。
セス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグが「1話丸ごとワンテイクで撮影しよう」と言い出したとき、撮影監督アダム・ニューポート=ベラ(『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』)は、その挑戦に乗り気だった。しかし、それが決して容易なものではなかったことは、彼の言葉からも明らかだ。
「すべてのビートを徹底的に追求すること、それに尽きました」
彼らは何度も現場を訪れ、脚本を片手にシーンの流れをチェックした。特に苦労したのは、撮影現場の特性に合わせて撮影方法を調整することだったという。
「ロケーションは素晴らしかったですが、全面ガラス張りだったんです。だから映ってはいけないスタッフや機材、モニターがすぐに視界に入ってしまう。時間帯も決まっているので、ごまかしは効かない。機材の配置も限られる中で、どうすれば最も効果的にこの空間を使えるか、何度も話し合いました」
最適なルートを見つけ、俳優の動きを計算し、何度もテストを重ねる。このプロセスは、俳優やカメラオペレーターからの意見も取り入れながら進められたという。
ドライブシーンの舞台裏——カメラワークの妙技
エピソードの冒頭と終盤に登場するドライブシーンは、技術的にも最大の挑戦の一つだった。マットとサルがハリウッドヒルズを駆け上がり、車道で会話を交わすこのシーン。ここでは、Roninジンバルを駆使した撮影が行われた。
「撮影車両の前に、カメラオペレーターが乗った車を配置し、それが先導する形で撮影しました。そして駐車のタイミングで、その車両は素早く画面外へ。ジンバルを取り外して手持ちに切り替え、そのままワンテイクの流れを維持しながら、次のシーンへとスムーズに移行していく必要がありました」
このシーンでは、俳優が演技に集中しつつ、カメラや車両の動き、スタッフの立ち回りと完璧に連携しなければならなかった。つまり、少しでもタイミングがずれれば、すべてが台無しになる。数え切れないリハーサルの末に完成したこのシークエンスこそ『ザ・スタジオ』が誇る長回しエピソードの象徴とも言えるだろう。
毎エピソード、映画製作の裏側を風刺たっぷりで描く必見の『ザ・スタジオ』はAppleTV+にて独占配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:Variety
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Photo:Apple TV+画像提供『ザ・スタジオ』