『マッドマックス:フュリオサ』は「男性社会の中で戦っていく物語」【インタビュー】

ついに明日より公開される映画『マッドマックス:フュリオサ』。このたび、プロデューサーのダグ・ミッチェルにインタビュー! 長年、監督ジョージ・ミラーの隣にいる彼に、その才能や本作の魅力、近年の映画業界について話を伺った。

『マッドマックス:フュリオサ』ダグ・ミッチェル インタビュー

マッドマックス:フュリオサ

――『マッドマックス 怒りのデス・ロード』からさらにパワーアップした世界観が素晴らしかったです。ジョージ・ミラー監督は『ベイブ』や『ハッピー フィート』なども手掛けていますが、同じ人が撮った作品とは思えないほどです。ミッチェルさんにとって、ミラー監督はどんな人だと感じますか?

ジョージとはもう43年の仲ですが、彼は素晴らしいストーリーテラーであると同時にメディカルドクターでもあります。非常に教養のある方で、子どもの頃はオーストラリアでも都市部から離れた場所で暮らしていたので、その頃からいろいろな世界を頭の中で想像していたのだと思います。

監督であると同時にアーティストでもある方はほかにもいらっしゃいますが、彼の場合、ビジュアルとともにストーリーを語るという才能があります。それは、相手がペンギンでも豚でも人間でも、関係ありません。

そして『マッドマックス』シリーズですが、これまではマックスというヒーローの旅路を描いてきました。初め、第1作があれほど成功したのか、理解できなかったそうです。でも、世界を見渡してみると日本には侍、デンマークにはバイキング、そしてアメリカではウェスタン(西部劇)がありますよね。「自分はいったいどこからきたのか」というテーマを、ジョージは非常に劇的な形で物語ることができる。それが長けている人だと常々感じます。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に関していえば、3日間と2夜にわたる物語です。社会から逃げ、生き延びようとする。この砂漠の世界では、武器と車を走らせるガソリン、そして水が重要。城壁の上にいる階層のトップが、下にいる人々を使ってこれらを支配するという社会構造になっています。

マッドマックス:フュリオサ

本作『マッドマックス:フュリオサ』は、13歳の彼女が26歳になるまでの旅を描いています。男性社会の中でただ生き延びるだけでなく、自身も戦士になって悪と戦っていく。復讐劇の一面もありますが、彼女がどうやって『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でのフュリオサになっていくのかを追う物語になっています。

凶暴な社会において、ある意味でカルト的な存在が現れるわけですが、本作ではそれがクリス・ヘムズワース演じるディメンタス将軍です。コメディアン的なセリフがありながらも、強く恐ろしくキャラクターを演じています。そして、フュリオサを演じるアニャ・テイラー=ジョイも、負けないぐらいパワフルな存在感を発揮しています。

私たちが住む世界でも、強い存在に対して魔法にかかったように従ってしまうことがありますよね。今でもテロがありますし、昔でいえば神風特攻隊のように、死ぬとわかっていても突っ込んでいってしまう、そういうものが我々の歴史や文化の中にあるということを、ジョージは映画を通して示しているのです。

マッドマックス:フュリオサ

――プロデューサーのお仕事について伺いたいのですが、具体的にどのような役割を担われているのですか?

作品によっても変わってくるのですが、私はもう長いことジョージのビジネスパートナーとして、金融的なポジションを担当しています。特に今回はものすごいスケールでした。週に300万ドルくらい使うのですが、それが何か月も続くわけです。

チームとして誰かがきちんとお金を管理しなければいけません。今日決めるべきこと、明日まで待てないこと…。ジョージはジョージでクリエイティブな作業に集中しているので、代わりにそれを処置して、明日もまたきちんと撮影できるように、ということ毎日繰り返します。

1000人ほどのクルーが仕事をしていますので、それが遅れないようコントロールする必要があります。また、どんなに情熱があっても危険なことは絶対にさせない。そういったことを確認するのも私の仕事です。オーケストラの指揮者をイメージしてもらえればと思います。

マッドマックス:フュリオサ

――本作はまさに映画館で見るべき作品だと感じました。近年、映画館ではなくストリーミングで映画を見る人が増えていますが、そのことについてどうお考えですか?

映画業界においても、この5年の間に大きく変わってしまいました。まず、コロナ禍によって人が劇場に足を運ばなくなりましたよね。今はまた戻ってきましたが、この先人々がストリーミングで映画を見ることは、止められないと思います。

オーストラリアでは、ストリーミングに対して税金をかけ、そのお金を映画製作に戻すといようなことをやってはいます。映画会社としては、何百万ドルという莫大なお金をかけて作るわけですから、損はしたくないですよね。プラスマイナスゼロにならなければ、リスクが大きすぎて投資もためらわれます。

本作に関しては、とにかくすべての人に見てもらう映画を作りたいと思いました。ワーナー・ブラザースさんも簡単にOKをくれたわけではないのですが、劇場に送れるような価値がある映画だということで投資をしてくれました。

今、皆さんが劇場には足を運んできちんとお金を取れる映画はとても少ないと思います。そういう意味では、簡単にその映画が作れる時代ではなくなってしまいましたね。

――ありがとうございました。

マッドマックス:フュリオサ

『マッドマックス:フュリオサ』公開情報

『マッドマックス:フュリオサ』は、2024年5月31日(金)全国ロードショー!

(海外ドラマNAVI)

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