『ウォーキング・デッド』エキストラが受講するゾンビスクールとは?

ウォーカーと呼ばれるゾンビがはびこる終末世界で生き残りをかけた人々のドラマを描く『ウォーキング・デッド』シリーズは、ゾンビの質にもこだわっているようで、エキストラに“ゾンビスクール”を受講させているという。米Colliderが伝えた。

ウォーカーの理想形は名作ホラーのキャラクター

『ウォーキング・デッド』の特殊効果クリエイターであり、シリーズの監督や製作総指揮も務めるグレッグ・ニコテロは、作品に欠かすことのできないゾンビのクオリティを追求。その結果、各シーズンの撮影が始まる前に“ゾンビスクール”を開催することを計画した。

“ゾンビスクール”ではウォーカーのオーディションを行うだけでなく、ナチュラルなスキルを磨くための授業も行われる。一話につき少なくとも一体登場するウォーカーは、作品に欠かせない存在であるものの、撮影にかけられる時間はわずか。最初のショットで正しく演じることが求められる難しい仕事なのだ。ウォーカー役には特殊メイクや視覚効果を施すとしてもなるべく簡略化するため、ニコテロはオーディションの時に特定の骨格を持つ痩せた人々を選ぶことが多いのだという。

その次にニコテロが重視する要素は演技力。1930年代の映画『フランケンシュタイン』シリーズで科学者によって生み出された哀れな人造人間を演じたボリス・カーロフをイメージに、“特殊メイクの下に隠されたキャラクターを感じさせること”を大事にしていて、痩せ衰えたクリーチャーがかつて人間だったという感覚が常に存在するように意識している。そのためにも、演じる側にはゾンビへの自然な親和性と、死と生の完璧なバランスを実現するための厳しい準備が必要なのだ。

決して主人公ではないウォーカーは一般的に過小評価されがち。しかし、優れたウォーカーがいれば、そのおかげで作品の雰囲気が高められるだけでなく、人間のキャラクターから注目を奪うことなく印象的なシーンも生まれる。その最たる例の一つが、記念すべきシーズン1の第1話。ここに登場した、腹部が避けた女性のウォーカーは、ガラスのような目をして明確な憂鬱さの表情を漂わせており、単なる腐敗した死体ではなく失われた生命の具現を見事に表現していた。

しかし、シーズンが進むにつれてウォーカーの評判が低下。質の高いウォーカーを作り上げるプロセスに変わりはなく、細心の注意を払って作り込まれているのだが、この一貫性がかえって停滞に繋がってしまうことに。視聴者が彼らを見慣れてしまっただけでなく、生きているキャラクターが成長していくのに比べると、変化のないウォーカーは恐怖心の対象ではなくなってしまったようだ。確かに生存者たちの真の脅威が、ウォーカーではなく人間の集団へと変化していったことは否めない。

もはや疎ましい蚊のように軽々しく扱われるようになってしまったウォーカーだが、シーズン11で“バリアント”という進化したウォーカーが登場したことで、再び真の脅威として復活の兆しを見せている。さらにスピンオフ『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』でも“バーナー”といった新時代のウォーカーが登場。原点に立ち返って、ゾンビサバイバルドラマらしくゾンビの恐怖を堪能できるようになった。

今、再びゾンビスクールの貢献度に注目が集まっている。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Collider

Photo:『ウォーキング・デッド』© 2011 AMC Film Holdings LLC.