第二次世界大戦が始まったばかりの1939~1940年のヨーロッパを舞台に、戦争で人生が激変した人々がそれぞれの戦いを生き抜いていく様子を描く戦争ドラマ『World on Fire』が、無料チャンネルBS12トゥエルビの「金曜キラー通り」で日本初放送される。今回はこのドラマのみどころを紹介しよう。
『World on Fire』は、1939年から1940年にかけての第二次世界大戦初期を描いた英BBCで放送されたドラマ。全7話。イギリスでは2019年秋に日曜夜9時のゴールデンタイムで放送され、平均670万人の視聴者数を記録、「ガーディアン」紙をはじめ、英メディアに高い評価を受けた。脚本はトム・ハーディ主演のドラマ版『嵐が丘』を手がけたピーター・ボウカー。
一般の人々から見た戦争
今作では、ベルリン、ワルシャワ、パリ、マンチェスターなどイギリスとヨーロッパの街を舞台に、第二次世界大戦に巻き込まれた一般人たちの視点から戦争を描いている。
英北部マンチェスターでは、ハリー・チェイス(ジョナ・ハウアー=キング)が、恋人で歌手志望のロイス・ベネット(ジュリア・ブラウン)と、英ファシスト同盟の集会で反戦歌を歌って袋叩きにあうが、ハリーは厳格な母親ロビーナ(レスリー・マンヴィル)から身分違いのロイスとの交際を反対される。ベネット家の父親ダグラス(ショーン・ビーン)は第一次世界大戦の激戦地ソンムの戦いによるPTSDで苦しみ、警察沙汰の問題ばかり起こす息子トム(ユアン・ミッチェル)は刑務所入りを免れるために海軍に入隊する。ベルリンでは米ジャーナリストのナンシー・キャンベルが、ナチスの検閲を受けながらラジオ放送で戦争の真実を全世界に伝えようとしている。そのナンシーの甥のウェブスター(ブライアン・J・スミス)はパリで医師として働いているが、ジャズクラブで黒人サックス奏者のアルバート(パーカー・ソーヤーズ)に出会い、ふたりは愛し合うように。一方、ハリーは、外務省の翻訳官としてワルシャワに赴任、ウェイトレスのカシア(ゾフィア・ヴィフワチュ)と恋に落ちる。そんななか、ナチス・ドイツがポーランドを侵攻、カシアの父と弟はポーランドを守るために出征。イギリスとフランスがドイツに宣戦布告して、第二次界大戦が始まる…。
このドラマは異なる国の異なる立場にある複数の人々が主人公の人間群像劇でもある。まったく接点のない登場人物たちがさまざまなきっかけで繋がり、次第に点と点が線で結ばれていく過程が面白い。彼らは、愛、自由、友情、祖国、家族など、それぞれが何かのために戦っており、何かを失ったり得たりしながら、戦禍のなかで日常を生きようとしている。それはおそらく当時の人々が実際に体験したことでもあるのだろう。
個性派俳優たちの競演!
ジョナ・ハウアー=キング(『リトル・マーメイド』)、ジュリア・ブラウン(『ラスト・キングダム』)など、注目の新進俳優たちのフレッシュな存在感が瑞々しいが、それに加えて、『恋愛小説家』でアカデミー主演女優賞を受賞したヘレン・ハント、『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーン・ビーン、『ザ・クラウン』のレスリー・マンヴィルといった実力派俳優が脇を固めている。実直で無骨ながらも子供思いの父親を演じるショーン・ビーンは、まさに彼のハマり役。また、個人的に推しなのが、トム役のユアン・ミッチェル。『ゲーム・オブ・スローンズ』の前日譚『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』でエイモンド役に抜擢された彼が、やさぐれた不良青年を好演している。
的確な時代考証とリアルな戦闘シーン
史実をしっかり押さえているので、歴史ドラマとしての見応えも十分だ。1939年9月のダンツィヒ(ポーランド語ではグダンスク)への砲撃で始まるポーランド侵攻とワルシャワ陥落、1940年6月のパリ陥落など、第二次世界大戦の西部戦線の流れがよくわかる内容である。
戦争を一般人の視点で描くといっても、戦争ドラマなだけに激しい戦闘シーンも繰り広げられる。特に、1940年5〜6月に北フランスに追い詰められた英軍兵士を本国に撤退させたダンケルクの戦いのシーンは圧巻だ。クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク 』の題材でもあるので映画ファンにはおなじみだろう。英海軍の重巡洋艦「エクセター」と独海軍の「アドミラル・グラーフ・シュペー」が対戦するラプラタ沖海戦のシーンも、リアルな描写で戦争の恐ろしさを見せつける。
また、ファッションやヘアスタイル、建築、インテリアなど、ドラマ全体が1940年代の雰囲気をうまく再現している。アッパーミドルクラス(上位中産階級)のチェイス家とワーキングクラス(労働階級)のベネット家の暮らしぶりの違いにも注目したい。例えば、チェイス家では居間でティーポットにティーカップでお茶を飲み、ハリーの寝室も豪華。それに対して、ベネット家では台所に洗濯物を吊るし、ロイスとトムはカーテンで仕切った部屋を共有するなど質素な生活をしている。
現代に生きる人々にも共感できるドラマ
これまで普通の生活を送っていた市井の人々の暮らしが戦争の開始により突然変わるというのは、現在の世の中でも変わることはない。ロシアによるウクライナ侵攻や台湾をめぐる米中国の緊張など、不安材料の多い現在の世の中で、このドラマの内容には共感できる部分が多いのではないだろうか。
続編となるシリーズ2の製作はすでにスタートしており、イギリスでは2023年に全6話で放送予定。映画のような壮大なスケールで戦争に翻弄される人々を描かれるドラマ『World on Fire』をぜひ堪能していただきたい。
◆『World on Fire』は11月18日(金)よる9時「BS12トゥエルビ」にて放送スタート【全国無料放送】
テレビ放送後、TVerにて期間限定で見逃し配信予定。
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◆番組HP
https://www.twellv.co.jp/program/drama/fridayskiller/page-world-on-fire/
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(名取由恵 / Yoshie Natori)
Photo:『World on Fire』🄫2019 Mammoth Screen Limited