思わずうなる見事な転調、衝撃展開の連続の映画『シンプル・フェイバー』、海外メディアはどう見る?

とても魅力的な作品だが、ジャンルを聞かれるとはたと困る映画というものがある。『シンプル・フェイバー』は、まさに笑いと恐怖を両取りにする秀作。小学生のママ同士のコメディを楽しむうちに、身も凍るサスペンスの世界へと誘われる本作は、3月8日(金)より劇場公開中だ。

完璧な妻の黒い秘密

夫を事故で亡くしたステファニー(『ピッチ・パーフェクト』のアナ・ケンドリック)は、小学生の息子と二人暮らし。子供同士が仲良く遊んでいたことから、別の保護者のエミリー(『ゴシップガール』のブレイク・ライヴリー)と顔見知りになる。家に誘われてついてゆくと、そこはなんとも瀟洒(しょうしゃ)な邸宅。アパレル会社に勤務するエミリーは、成功した人生を送っているようだ。一緒にカクテルを楽しみ、変わったセックス体験談などの秘密を語り合ううち、二人は親友になる。

ある日、ステファニーはエミリーから"シンプル・フェイバー(簡単な頼みごと)"を聞いてくれないかとの電話を受ける。そのちょっとした依頼を最後に、エミリーは姿を消してしまう。突然の失踪を心配したステファニーは懸命に消息を追うが、情報を集めるほどにエミリーが隠していた黒い秘密に気づいてゆく。虚言癖と消失願望、冷え切った上司との関係、夫がかけていた巨額の生命保険。そんな中、エミリーと思われる死体が湖で発見される。失意のステファニーはやがてエミリーの夫に惹かれてゆくが、死んだはずのエミリーの影を感じるようになり......。秘密と嫉妬のサスペンス・コメディ。


ユーモア溢れるコメディ調で幕を開け、エミリーの失踪を契機に衝撃的なラストまでノンストップというユニークな本作。女同士の友情にまつわる茶目っ気と愛らしさに満ちたコメディ、と述べるのは米New York Times紙だ。それと同時に、不吉な空気感を伝統的な撮影技法で再現した現代映画のジャンル「ネオ・ノワール」にもなっている。平凡な日常を送る女性が恐怖の生活に転落するという意味では、『ゴーン・ガール』『KIZU-傷-』といった作品の原作者ギリアン・フリンが紡ぎ出す世界観に似ている。

ジャンルを巧みに融合した本作に、米Chicago Sun-Times紙も注目している。ダークコメディの風味を、加速度的に不可解になってゆくプロットに練り込んだ一本。絶え間なく興味を惹かれる、と同紙は称賛する。殺人が明るみに出る瞬間にさえ笑いを禁じ得ないという、通常のスリラーではあり得ない捻れた感覚が新しい。

ストーリーにも抜かりはなく、まるで風になびく旗のように何度も捻りと方向転換を見せてくれる、と紹介するのは米Los Angeles Times紙。急ハンドルを切った先に衝撃的な展開が待つ、「楽しく悪趣味な一本」と同紙。

原作はダーシー・ベルのミステリー小説「ささやかな頼み」。2017年3月の出版前に20世紀フォックスが映画化の権利を買いつけたという話題作だ。本作公開にあたり、エミリー役のブレイクはInstagramの写真を一旦すべて削除。その後、暗号と思われる写真を投稿するなど、失踪したエミリーになぞらえたプロモーションを行い、話題を呼んだ。

最後まで気の抜けない『シンプル・フェイバー』は大ヒット公開中。(海外ドラマNAVI)

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『シンプル・フェイバー』
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