『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アベンジャーズ』『ジュラシック・ワールド』シリーズなど、ハリウッドの大作映画には欠かせなくなったアクションスター、クリス・プラットが製作総指揮・主演を務める最新作『トゥモロー・ウォー』(Amazon Prime Videoで配信中)が好評だ。「タイムワープもの」と聞くと、「またか!」と思われる方も多いと思うが、本作は現在と未来が交錯することで生まれる"親子愛"が、予想以上にズキンと胸に突き刺さる。
ある日、アメリカンフットボールの球場に、武装した兵士の一団が現れる。2051年からやって来たという彼らは、「30年後、地球はホワイトスパイクと呼ばれるエイリアンに侵略され、人類滅亡の危機にある」と呼びかけ、援護を求める。未来の危機と戦う兵士に指名されたダン(クリス)は、悩みながらも家族の将来のために参戦を決意。疎遠だった父親(J・K・シモンズ)と、30年後の戦場で出会う優秀な科学者(イヴォンヌ・ストラホフスキー)と協力しながら、歴史を書き直す戦場へと立ち向かうが、思わぬ試練が待っていた。
元軍人で生物学教師、研究所への転職に失敗し、普通に生きても未来は幸薄し。一度、徴兵を逃れるために画策するがそれも断念。せめて愛する妻、そして一人娘に健やかなる未来を...という主人公ダンの気持ちを丁寧に描いている点に、この映画がただのSFモンスター・アクションではないことが見て取れる。製作総指揮も務めたクリスは、「確かに『インデペンデス・デイ』は楽しいブロックバスター映画だけれど、あのような現実味のない映画にはしたくなかった」とインタビューで答えているが、まさにそれがこの映画の生命線だ。
もちろん、ホワイトスパイクの暴れっぷりの凄まじさや、全編を通して繰り広げられる壮絶な戦闘バトルは、「ああ、自宅じゃなくてIMAX®️上映で観たかったな」と思わせるほど迫力に満ちている。SFアクションとして、しちめんどくさいことは考えずにボケーっと観ていても十分堪能できる内容だが、"人類滅亡"という大きなうねりの中で主人公ダンと父との確執、そして一人娘との切ない関係性が戦うほどに、命を危機にさらされるごとに、浮き彫りになっていく脚本、そして演出が実に秀逸なのだ。
物語はいたってシンプル、ある意味ベタと言えるかもしれないが、特に娘との別れ、再会、そして命の危機に直面する展開は、子を持つ親としてダンの気持ちに寄り添わずにはいられない。号泣というと嘘になるが、胸をキュッと締めつけられ、切ない運命のいたずらにほんのり涙を浮かべている自分にちょっぴり驚いたりもした。それもこれも、クリスが決してスーパーヒーローにならず(いざという時は想像以上に強いが)、等身大の悩める父ダンをリアルに演じたこと、そして、ダン一家の感情の変化を丁寧に描いたところに起因する。カレーライスの福神漬け的な人間ドラマはなく、カツカレーのカツに相当する存在感で親子愛を描いた勇気に、ひとまず拍手を送りたい。
すでに続編の話も上がっている『トゥモロー・ウォー』はAmazon Prime Videoにて独占配信中だ。
(文/坂田正樹)
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『トゥモロー・ウォー』©2021 SKYDANCE PRODUCTIONS, LLC AND PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.