半世紀以上も前から世界中で人気のSFシリーズ『スター・トレック』。その中で、1987年から1994年まで放送された『新スター・トレック』に登場した高次元生命体のQは、瞬く間にファンに愛されるキャラクターとなった。同作終了後も、アニメやビデオゲームと行ったプラットフォームで活躍し続けたQだが、ついに『スター・トレック:ピカード』に登場する。そんなシリーズの象徴的なキャラクターであるQを演じたジョン・デ・ランシーに単独インタビュー。そこで明かされたジョンと『新スター・トレック』シリーズ、そして日本との驚くべき関係にも注目してほしい。
――1987年に始まった『新スター・トレック』に出演した際、Qがここまで何十年にもわたって何度も復活するほどファンに愛されるキャラクターになると思いましたか。
いいえ。夢にも思いませんでしたよ。(『スター・トレック』シリーズのクリエイター)ジーン・ロッデンベリーが"これからどうなるかわかってないだろう"と言ったときに初めて少し気がついたのです、自分の置かれている状況が。そもそも当時、それほど多くのエピソードにも出ていませんしね。(Qとして)映画にも少しは出ましたが...。そして、今度は『スター・トレック:ピカード』に出るようになったのですから驚きです。
――『スター・トレック:ピカード』の出演オファーを受けたのは、いつくらいのタイミングでしたか。また、その時どのように思われましたか。
正確には言えないけれども、撮影の4、5カ月前に聞きました。でもパンデミックがあって、(2020年)6月に撮影するという話だったのですがその後立ち消えになり、という状況でした。シーズン1の後だったとは思います。
――何十年ぶりに(ビデオゲームなどの声だけでなく)ドラマでQを演じることを決めた際、どのような準備をしましたか。『新スター・トレック』で自分を見返したりしましたか。
まず、"ピチピチの衣装を着なくていいなら、話を聞こうか"とスタッフに言いましたよ(笑)
――Qのピチピチ衣装、また見たかったです(笑)
いや、見たくないでしょう(笑) ですが、本当に一番気になったのは、同じことをまたやるのか、それとも新しいことをやるのかということでした。同じことをやりたくないという意味では決してありません。ただ、再現と創造とは違うものですから、何かを再現することは、見落としてしまう部分も多々あり難しいですからね。それでどういうものをやるのかという説明を受けたのです。私自身も歳を取っていますから、その点も作中に反映されるということでしたし、ピカードも含め、みんなが直面する死という必然やその他の問題についても描かれていて、"これは全然オリジナルと違う!"と思い、気に入ったのです。
――新たな展開となっている本作ですが、以前に「今回のQは以前と違う」とインタビューでおっしゃっていました。『新スター・トレック』時のQは、ちゃめっけのある悪戯好きな部分もありました。おっしゃっていただける範囲で結構ですが、具体的にどのように違うのでしょうか。
悪戯好きというのはそもそも、失うものがない状態で、結果がどう転ぼうとたいしたことにはならないからそうなるのです。ですが、今回のQは本当の危機というものに直面します。進む道を間違えると大変なことになるので、そこが違います。実はスタッフにも、"もう少し昔のQの一面も出したらどうだろう"と言ったのです。ですが、本作は『新スター・トレック』とは脚本家もスタッフも、そして、作品自体も異なるものです。今回のQは、狂気、悪、危険、という三語で表現できると思います。
――ピカードを演じるパトリック・スチュワートとの再共演はいかがですか。
非常にいいですよ。35年前、パトリックと私は監督と一緒に家でセリフを読んでいたんですよ。そして35年後の今、また同じようにいい作品にできるように常に努力しています。みんなそれぞれスケジュール的に忙しいので、セットではもちろんしゃべることもありますが、まずは素晴らしい作品になるようプロとして取り組んでいます。
――日本にもたくさんファンがいる本作のシーズン2に向けて、一言お願いします。
日本にファンがいるのですか?
――もちろんです。『スター・トレック』は人気のシリーズですし、Qも有名です!
そうですか。いや本当に知りませんでした。実は息子が仕事で日本にいるんです。私の孫も一緒にね。でも、パンデミックの水際対策があるので、日本に入国できず(取材当時)、もうずっと会えていません。
――そうだったのですか。
でも、日本にファンがいると知って本当に嬉しいです。実は、この話はご存知ないかもしれませんが、昔『新スター・トレック』のオーディションを受けていた時、日本で舞台公演に出演していたのですよ。
――そうなのですか!
『新スター・トレック』のオーディションの日程を教えてもらったら、その舞台と重なっていたので『新スター・トレック』の方を断ったんです。舞台とかぶっていて都合がつかないと言ってね。そしたら、日程を変えてくれると言われました。
ちなみに、その舞台は「テラノバ遠征」と元にした「テラノバ」で、私はノルウェーの探検家ロアール・アムンセン役でした。真っ黒な衣装でスーパーヒーローのような格好をしたアムンセン役の私を、日本の観客はそれはもう大変気に入ってくれましたよ! そして、日程の変わったオーディションをロサンゼルスで受けるため、千秋楽の大阪公演を最後に、すぐに飛行機に飛び乗り、翌日朝6時には『新スター・トレック』のトライアルシーンの現場にいました。ですので、当時は東京や大阪と色々あちこち回っていましたね。
――それはものすごいスケジュールですね。近いうちにまた日本に来られるようになったら、ぜひお越しください。
そうですね。その日を待っています。
待望の『スター・トレック:ピカード』シーズン2は、3月4日(金)よりPrime Videoにて独占配信。
(取材・文/Erina Austen)
Photo:
『スター・トレック:ピカード』シーズン2 ©Amazon Studios