■実在する霊能者、アリソン・デュボア
死者とコミュニケーションできる霊能者、アリソン・デュボア。実在する彼女の物語をドラマ化したのがドラマ『ミディアム』だ。この『ミディアム』というタイトル、直訳すれば"中間"。日本でいえば、此岸でも彼岸でもないまさに三途の川状態ってところか。そして、スピリチュアルな言葉として使われる場合、その意味はズバリ、霊媒。
霊能者アリソン・デュボアによって、さまざまな事件を解決していく『ミディアム』。ドラマではアリソンの家族の姿も描かれている。夫のジョー、そして3人のかわいい娘たち。この設定は現実のアリソン・デュボアそのまま。昨年、来日した際もジョーを含め、ファミリー仲良く姿を現していた。さすが、ニューエイジ世代のファミリー、やることが違うわ。
さて、ドラマでのアリソンは、実在のアリソンの体験を基にしているとはいえ、だいぶ異なるように見える。たとえばアリソン本人は穏やかな雰囲気にみえたけれど、ドラマのアリソンはいつもピリピリしてる(なんでかはわからん)ような...。死者についてもドラマのように夢で見るわけではないらしい。とすると、アリソン本人がどういう人物か、気になるところ。で、日本で読むことができるアリソンの著作は『あの世から届くメッセージ』『愛する人の霊はいつもあなたのそばにいる』(いずれも徳間書店刊)の2冊。この著作から浮かび上がるアリソンは、やっぱりヒーリング系スピリチュアリストの姿でした。
ニューエイジです。
■リーディング・スピリチュアリスト、エドガー・ケイシー
そう、新大陸アメリカはいまやスピリチュアル大国。その祖ともいえるのが、ケンタッキー生まれの巨人、エドガー・ケイシー(1877~1945)。いや、スピリチュアル界の巨人ということで、実際にでかかったわけじゃあないっす。
彼の能力はアリソンとはちょっと異なり、"リーディング"というもの。アリソンは自分自身で霊と直接会話する(という)けれど、ケイシーの場合は、まず自分を催眠状態にし、第三者による質問に答えていくという方式をとる。しかも、アカシックレコードといわれる宇宙概念からさまざまな知識を引き出してくるという。
きましたね、アカシックレコード。
この概念、ニューエイジマニアには馴染み深いっす。
■19世紀末からはじまった一大オカルトムーブメント
アカシックレコードってなに?な感じだけど、もともとはドイツのルドルフ・シュタイナー(1861~1925)などが提唱していた概念。シュタイナーは神秘思想家(オカルティスト)といわれているけれど、単なる一思想家にとどまらず、ちょっとした教祖状態になったおヒト。いまでもシュタイナー教育とかございますんで、興味ある人はお調べになってみてござんしょ。
ときたら、神智学にもふれんと。神智学といえば、ブラヴァツキー夫人(1831~1891)。はい、その名のとおり、ロシアのご婦人で霊能者(とされている)。神智学は彼女の提唱したオカルトムーブメントで、20世紀最大のオカルトともいわれちゃってる。シュタイナーはこの神智学に傾倒、神智学協会に属していたけれど、最終的には袂を分かち、独自の思想を展開していく。
この神智学協会、インドの哲人クリシュナムルティ(1895~1986)も輩出しています。クリシュナムルティは子ども時代から神智学協会で英才教育を施され、神智学協会の申し子になる...はずだったのが脱退し、シュタイナーと同じように独自の思想を展開していった強―いおヒト。神智学協会ってオカルト思想者の大宝庫だったんすね。
こんな大きなオカルトムーブメントが19世紀末から20世紀初頭まで全世界を席捲(言い過ぎ...)していたわけだから、アメリカの一霊能者エドガー・ケイシーにだって影響大でしたことでしょう。
■アリソンを生み出したカルチャーとは?
でもって新大陸アメリカ。ここにはもともとスピリチュアル的文化素養が高かった。もちろん、それはネイティブアメリカンによって神聖視されていた土地や儀式、についてだけれど。そのネイティブアメリカンのシャーマニズムが60年代のヒッピームーブメントによって見直されはじめた。その代表的な例がカルロス・カスタネダという人物(1925?~1998)。
カスタネダが1968年に発表した著作『呪師と私 ドンファンの教え』には、人類学を専攻したというカスタネダがヤキ・インディアンの呪師のもとに弟子入りしようとする姿が描かれている。その後もその体験をつづった一連の著作を発表し、ネイティブアメリカンのシャーマニズムに注目が集まりはじめた。そう、新大陸アメリカ独自のオカルティズムがここに誕生!?
ところで、カスタネダを生み出した60年代のヒッピームーブメント(カウンターカルチャー)だけど、既存の文化に対抗するって意味でシュタイナーをはじめとするオカルトムーブメントに大いなる影響を受けている。加えてケイシーのリーディングも進化を遂げてチャネリングという手法をうみだし、さらにはホリスティックといったさまざまな要素を抱き込んで現在でいうところのニューエイジカルチャー(っていっていいよね?)をうみだすことに。
そう、時代はニューエイジです。
戻り戻ってアリソンの住むアリゾナ州。ここにはネイティブアメリカンゆかりのパワースポットがたくさんあるとか。これが、アリソンの"力"になにも影響がなかったとはいえなくもなくもなくもない。ってあるのかないのかどっちだ!?
ということで、19世紀末のオカルトムーブメントとネイティブアメリカンのシャーマニズムとがヒッピームーブメントによってミックスされ、それがさらにニューエイジカルチャーとして強化された...。それがアリソンに続くアメリカのスピリチュアルの系譜だ!?
ビバ、ニューエイジ!
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