ウォーカーと呼ばれるゾンビがはびこる終末世界で壮絶なサバイバル生活を余儀なくされる人間たちの姿を濃密に描き出し、世界中で大絶賛されている『ウォーキング・デッド』。日本でも高く評価されるこのドラマで主人公リックの妻ローリを演じているサラ・ウェイン・キャリーズに直撃! 目の前に現れた彼女はとてもスラリとした知的美人。インタビュー中は終始リラックスしたムードでありながら、プロフェッショナルでクレバーな素敵な女性でした。
―― このドラマの脚本を最初に読んだ時の印象は?
気持ち悪くなったわ(笑)。血だらけで生々しくて残酷で、こういう作品はもともとあまり好きなタイプではなかったの。ただ、そんな残酷なドラマの中にすごくヒューマンな要素が盛り込まれていて、人としての思いやりや、人間が"人間らしさ"を失わないために闘う姿にすごく共感できたの。タイミング的にも、今の世の中は経済的にも政治的にも暗いニュースが多いでしょ? このドラマにある翳りゆく光の中で暗闇に陥らないように人間たちが闘っていく部分は今の時代にもすごくリンクしていると思うわ。
―― 好みでないジャンルだったにも関わらず出演しようと決めた最大の理由は?
もしこのドラマが単純なホラーだったり、ただゾンビと対峙する恐怖を描いただけの作品だったら興味を示さなかったと思う。恐怖体験をしたければニュースを見ればいいんだもの(笑)。やっぱりこのドラマにあるヒューマンな要素にすごく惹かれたの。これまで私が読んだことのないようなストーリーが描かれていたし、自分自身をアーティストと言うのはおこがましいけれど、アーティストというのはクリエイティブなものに挑戦したくなるのよ。それを才能あふれる人たちと一緒に作り上げたいと思ったの。もちろん新しいことをやるにはリスクが伴うし、時には失敗もするのだけど、ゲイル・アン・ハードやフランク・ダラボンのような一流の人たちと一緒にリスクを負うのであれば、それはとてもやりがいのあるものになるんじゃないかと思ったの。彼らだったらホラーとその対極にあるヒューマン的な要素の上手いバランスを見つけてくれると信じたのよ。
―― 結果『ウォーキング・デッド』は大成功を収めたわけですけど、最初にオファーを受けた時はここまで成功すると考えましたか?
もちろん。なんて嘘よ(笑)。全く想定外だったわ。ドラマ自体は撮影現場でもファースト・シーズンの途中くらいから"これはいい作品になる"という空気をじわじわと感じ始めていて、私たちは改めて誇りを持つようになっていたんだけど、とはいってもやっぱりこれはゾンビものだし、評論家にめった切りにされるだろうと覚悟してたの。ラッキーだったらホラーファンとコミックファンとで100万人くらいは見てくれるかな、くらいに思っていたので、まさかこんなに多くの人たちが見てくれるなんて夢にも思わなかった。ファンには本当に感謝の気持ちでいっぱいよ。私みたいにホラーにも興味がない、コミックスも読んだことがないというような人たちまでこのドラマを見てくれて、それぞれのキャラクターに深い思いを抱いてくれるのは、私にとってもすごくエキサイティングなことなの。さらにこのドラマを一緒に作っている仲間たちはみんな素晴らしい人間性の持ち主で、自分のエゴなんてどうでもいい、100%以上の力を出して良い作品を作りたいと思っているの。その姿勢がまた私にとって大きな刺激になるのよ。
―― 俳優としてもこれは非常にチャレンジングな作品だと思うんですが、ローリというキャラクターを演じる上で一番気を配っている点とは?
実は自分自身がローリをどう演じるのかをあれこれ考えるというより、相手役のリック(アンドリュー・リンカーン)やシェーン(ジョン・バーンサル)の演技に反応しているという感じなの。彼らがどういう風にそのシーンを演じるか、それに誠実に反応していくようにしているわ。役作りの上では私はまず最初にその人物の欠点を探すようにしているの。彼女が何を隠していて、どんなことを恥じていて、乗り越えようとしているのか。ローリの場合はその辺はとても分かりやすいんだけど(笑)。彼女は2つの要素を持っていて、強さと柔らかさ、そのバランスをどう表現していくのかが大事だと思っているわ。ローリのキャラクターをシンプルに言えば誠実に演じることが最も重要ね。嘘をついている時でも誠実に嘘をつくのよ(笑)
―― これまであなたが演じてきたキャラクターは『プリズン・ブレイク』にしても、このドラマにしても感情の起伏はあるにせよ、基本的には落ち着いた人物像に思えたんですが、シーズン2で息子が危機に瀕した時はすごくエモーショナルだったと思うんです。それはやっぱりいつも以上に感情移入してしまったのでしょうか?
そうね。私もアンディも実際にも子供がいるから、どうしても感情移入してしまうわ。リックと一緒に息子と寄り添っている時に、カールが痙攣を起こすシーンを撮り終えた時なんて、アンディが"今までやってきた仕事の中でも最悪な場面だった"と言ったくらいよ。息子を失いかけたことはリックとローリにとって人生最大のダメージで、それは親として良く理解できる。このドラマではその後もいろんな出来事が彼らを襲うけれど、あの二人にとっては息子が死の一歩手前まで行った時の恐怖に比べれば、どれもそれほど大きな問題ではなくなってしまうのね。あのシーンは本当に良くできていて、とても原始的な狂気が描かれていたと思うわ。
―― あなた自身も母親であるだけに、やはりローリの母性に共感を覚える部分が多いんでしょうね。
その通りね。このドラマで私は母親になって初めて母親役を演じるのだけど、ある意味ローリは単純明快なの。彼女の基準は全てが息子を守ることにある、そういうところはすごく良く分かるわ。あらゆることに対して息子のためになるのなら歓迎するし、息子に危害を与えるものは受け入れないというどちらかしかない。その感覚は子を持つ母親として100%共感するわ。私も今の世の中で娘のためになることなら歓迎するし、彼女を傷つけるものは排除したいという思いだもの。母親というのは至ってシンプルなのよ。
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『ウォーキング・デッド』シーズン1
FOX bs238にて1月13日(金)21:00より放送開始!
毎週金曜 21:00~ほか
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