ニューヨークを代表する祭典の幕開け?第1回トライベッカTVフェスティバル取材レポート

9月22日から24日にかけて、ニューヨークのオシャレタウンとして有名なチェルシーにて、記念すべき第1回トライベッカTVフェスティバルが開催されました。

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世界中で頻繁に映画フェスティバルは開催されていますが、TVフェスティバルとは何なのでしょうか? 一言で言うと、昨今、米国を中心に大きく発展してきているTV向けコンテンツ(ドラマ/ドキュメンタリー)専用のプレミア上映会です。TV向けコンテンツはこれまでは毎春開催されるトライベッカ映画祭で取り上げられていましたが、いまや年450本以上が制作されていることから、今回より独立して開催されることになりました。アメリカ同時多発テロ事件の後、ニューヨークの復興を願って2002年にスタートした同映画祭に引き続き、映画プロデューサーのジェーン・ローゼンタール、俳優のロバート・デ・ニーロなどが創立メンバーとして名を連ねています。

米国では歴史的にケーブルTVが発達しており、HBO、FX、TNTといった放送局が日本のそれとは比べものにならないほどの力とお金を持ち、その贅沢な資金をふんだんに使ってTVコンテンツを作ってきました。そのため、計10話ほどから成る米国ドラマは、昨今の映画と同等の迫力を持ちつつも映画以上に見ごたえがあるとの評価も聞こえています。

現在ではそのケーブルTV会社に加えて、Netflix、Amazon、Huluなどのストリーミング配信会社も、独自に製作したコンテンツでエミー賞を獲得するなど、すごい勢いで力をつけているのは皆さんもご存知の通り。例えばNetflixの『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、映画界で活躍するデヴィッド・フィンチャー監督を製作総指揮として招き入れ、制作費1億ドル(現在のレートで約115億円!)もの巨額を投じてシーズン1が制作されました。

このようにアメリカのドラマ界がかつてないほどの盛り上がりを見せる中で開催された本TV フェスティバルでは、以下15作品が取り上げられました。

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『GOTHAM/ゴッサム』...バットマン誕生前のゴッサム・シティを舞台とした犯罪ドラマ
『Religion of Sports(原題)』...スポーツが社会や文化に与える影響を追うドキュメンタリー
『Released(原題)』...刑務所から釈放された人を追うドキュメンタリー
『Better Things(原題)』...『カリフォルニケーション』パメラ・アドロンがシングルマザーを演じるコメディ
『サバイバー:宿命の大統領』...『24』キーファー・サザーランド主演の政治サスペンス
『YouTube Creators for Change(原題)』...YouTube を通じてクリエイターを支援する企画のドキュメンタリー
『At Home with Amy Sedaris(原題)』...コメディエンヌのエイミー・セダリス企画・主演のコメディ
『Pillow Talk(原題)』...『SUITS/スーツ』パトリック・J・アダムス主演のコメディ
『Liar(原題)』...『ダウントン・アビー』ジョアン・フロガット主演のサイコスリラー
『ウィル&グレイス』...約10年ぶりに復活する、ゲイの男性とストレートの女性の友情を描く人気コメディ
『Ryan Hansen Solves Crimes on Television(原題)』...『ヴェロニカ・マーズ』ライアン・ハンセンが本人役で出演する犯罪捜査コメディ
『A Conversation with Trevor Noah & the Writers of The Daily Show(原題)』...人気風刺番組のホストを迎えたトークショー
『Ten Days in the Valley(原題)』...『クローザー』キーラ・セジウィック主演の新作
『Red Oaks(原題)』...1980年代の大学生が主人公のコメディ
『Queen Sugar(原題)』...『トゥルーブラッド』ルティナ・ウェスリー主演の家族ドラマ

このように話題作が多く扱われていたため、意気揚々と会場である映画館、シネポリス・チェルシーに向かいました。

最寄りの駅からついにその映画館の全貌が!!

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と、ここで気づいたのは、あれ?
フェスティバルと聞いてイメージしていたような、いかついボディーガードや、会場周辺に溢れんばかりの人だかりは??

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会場周辺にそれらしき人たちは見つかりません...。ただ、建物内にはボディーガードと思われる人物の姿も。会場の外は少し落ち着いているけど、中に入ったら全く雰囲気は違うんだろうと、唾を飲み込み、暗いシェードガラスの入り口の向こうへと進んでみます。

するとそこに待っていたのは大盛況...ではなく、まばらな入場客たち。スナックスタンドにて新発売となっているチートス ポップコーンの大きな看板が目に飛び込んできました。

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どうやら本イベントは知る人ぞ知るといった感じで、会場周辺や街全体が盛り上がっているわけではない模様。トライベッカ映画祭の知名度が徐々に上がってきているとはいえ、これが開催第1回の本TVフェスティバルは、認知度・注目度ともに本家にはまだまだ及ばないというのが正直なところです。レッドカーペットは会場の2階にありましたが、こちらも人がわんさかいるというよりも、少しおとなしい印象でした。

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本題から逸れますが、前述したチートスは、チートスの味が絶妙にポップコーンに絡んでおり、サイコーーー!に濃厚な味わい。待ち時間にポリポリと堪能させて頂きました。
実物はこちら↓(濃厚なチーズの味と、そのポリポリ感が伝わってくるでしょうか?)
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では、今回見ることができた作品はどうだったかというと、一言で表現するなら「最高」です。見てきたのは、『Religion of Sports』という日本未公開作と、日本でも大人気の『GOTHAM/ゴッサム』の2作品。

まず『Religion of Sports』ですが、こちらは今回第2シーズンを迎えた作品であり、スポーツが社会や文化にどのような影響・効果をもたらしているかを扱っています。注目すべきはプロデューサー陣。数々のドキュメンタリー作品を手掛け、本作では企画・監督も務めるゴッサム・チョプラと組むのはなんと、NFLのスーパースターであるトム・ブレイディ元NFLスターのマイケル・ストラハンなのです。彼らスポーツ界の大物も協力した本作は、スポーツという比較的門戸の広いテーマから人を招き入れ、世の中で起きている様々な宗教的・政治的・文化的な問題についての問題意識を喚起させる作りとなっています。

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マイケル・ストラハン(中央)も登壇!向かって右がゴッサム・チョプラ監督

今回上映された第2シーズンのプレミアでは、現在EU諸国で討論の的となっているアフリカ、中東からの移民問題について、ドイツにある小さなサッカーチームと絡めながら紹介していました。移民問題だけを取り扱うと堅苦しい印象を与えてしまいがちですが、その点、ゴッサム監督はスポーツをうまくクッション材として使っていることがわかります。中東やアフリカの地で起きている内戦から逃げてきても、世間からの風当たりが強まる中で辛い時期を過ごしている移民の人々。彼らにとって唯一の憩いの時間がサッカーで、このスポーツを通じて現地の人と社会的につながることも可能になるし、苦しい日々から少しだけ抜け出せるのです。

ゴッサム監督は上映後のインタビューセッションで、「本作を通じてぜひスポーツの持つ真の魅力を知ってほしい。また、世界で起きている社会的な摩擦についても、これをきっかけに考えるようになってほしい」と述べていました。日本への上陸は未定のようですが、シーズン1が米国のNetflixで配信されることになったので、もしかしたら日本でもNetflixでストリーミングされるかもしれません。その暁にはぜひご覧ください!!

ここからは、今回のフェスティバルで私が最も楽しみにしていた『GOTHAM/ゴッサム』(前述した監督の名前と同じで、少し紛らわしいですね)の新シーズンプレミアについてです。

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右から、エリン・リチャーズ(バーバラ・キーン役)ジェシカ・ルーカス(タビサ・ギャラバン役)、ベン・マッケンジー(ジェームス・ゴードン役)

すでにご存知の方も多いと思いますが、本作はブルーノ・ヘラー(『メンタリスト』)企画による、バットマン誕生前のゴッサム・シティを舞台に、ジェームス・ゴードン刑事とブルース・ウェイン(のちのバットマン)を中心に展開されていく作品。今回はいよいよそのシーズン4です。

シーズン3までご覧になっていた方ならおわかりだと思いますが、プレミア開始後まもなく、「あれ、なんでこのキャラが!?」というシーンが見られます。これ以上はネタばれとなってしまうため具体的には言えませんが、シーズン4では第1話から驚かされること間違いなしです。

また、このシーズンからいよいよ、主人公がゴードンからブルースへと移行していくようです。このプレミアでもブルースのカット数は過去シーズンより確実に多かったですし、上映後のインタビューでは監督・出演者が口を揃えて、そのことを認めていました。

20171016_tribeca_10.jpg【関連記事】『GOTHAM/ゴッサム』キャラクター紹介~ヒーロー編~

上映後のインタビューセッションの模様は以下の通り。砕けた質問が多く、出演者もリラックスしながら回答していたのが印象的でした!(それにしても、バーバラ・キーン役のエリン・リチャーズとタビサ・ギャラバン役のジェシカ・ルーカスは本当に美人でした...)

――ゴッサム・シティはどこで撮影しているのか?

ブルーノ・ヘラー:基本、ニューヨークで撮影しているよ。ただ、ゴッサム・シティは暗い印象を保たなくてはいけないから、そのイメージにそぐわない場所はVFXチームがうまく映像編集してくれているんだ。その具体的な方法? それは言えないよ(笑)

――このシーズンから主役がブルース・ウェインに移行していくとの発言があったが、その理由は?

ブルーノ・ヘラー:年齢も関係するだろうね。シーズン1~3の時のブルースはまだ少年で、彼を中心にストーリーを進めるのが難しかった。だからディレクター陣で話し合い、彼が成熟するまでの繋ぎとしてゴードン刑事を主役にしようと決めたんだ。このプレミアでも少し触れたけど、今シーズンはいよいよブルースがバットマンへと本格的に変貌していくから、楽しみにしていてほしい。

――今回上映されたストーリーでは人々が心の奥底に抱える「恐怖」を扱っていたが、バーバラ・キーンを演じるエリンにとっての恐怖とは?

エリン・リチャーズ:私にとって最大の恐怖は原子爆弾。(会場で笑いが起きたことを受けて)多分みんなは蜘蛛とか高い場所といった答えを期待していたんでしょうけど、冗談じゃなく、私にとって今最も怖いのは原子爆弾なの。北朝鮮などの行動には時々、心底恐怖を覚えるのよ。

――今シーズンのペンギンの役割は?

ロビン・ロード・テイラー:今回も大活躍するよ。今シーズンの彼の目標は、ゴッサム・シティでの存在感をより高めていくことだと思う。あまり多くは語れないけど、新シーズンもペンギンの登場シーンは多いよ。

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以上、トライベッカTVフェスティバルでした! 来年も楽しみですね!

(写真・取材・文:家徳悠介)

Photo:
『GOTHAM/ゴッサム』
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『サバイバー:宿命の大統領』
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