全米大ヒットの医療ドラマは『ベイツ・モーテル』と共通点多し!WOWOW『グッド・ドクター 名医の条件』フレディ・ハイモア直撃インタビュー

本国アメリカで昨年秋から放送されるやいなや大きな反響を呼び、同シーズンの新作ドラマとして最高の視聴率を記録した医療ドラマ『グッド・ドクター 名医の条件』。『Dr.HOUSE』のデヴィッド・ショアが企画、『HAWAII FIVE-0』のダニエル・デイ・キムが製作総指揮を担当した本作は、第2話放送後に早くもフルシーズン製作が決まり、先日には第2シーズンへの更新も発表された。

天才的な能力を持ち、自閉症でサヴァン症候群の青年医師ショーンを演じるのは、『チャーリーとチョコレート工場』や『ベイツ・モーテル』で知られるフレディ・ハイモア。本作の主演だけでなくプロデューサーも務める彼が、2007年以来となる2度目の来日を果たしたので直撃! いつの間にか26歳の青年へと成長していた彼に、本作のことはもちろん、私生活も含めていろいろ語ってもらった。それによると、感動の医療ドラマは実はフレディの過去作といろいろ共通点があるようで...。

 

――出演が決まった経緯を教えてください。『ベイツ・モーテル』の撮影終了の3日後に早くも本作のクリエイターであるデヴィッド・ショアと会われたそうですが...。

本当に早い転換だったね。文字通り、『ベイツ・モーテル』の撮影が終わった直後に(撮影地のバンクーバーから)ロサンゼルスへ向かっている途中で本作の脚本を読んだんだ。そして3日後にデヴィッド・ショアと会っていたんだよ。『ベイツ・モーテル』が終わったらすぐに次の作品にかかるぞ!と考えていたわけじゃなかったんだけど、こんなに早く素晴らしい機会と役柄を与えられてすごく幸運に思う。

――主人公のショーン・マーフィーは自閉症とサヴァン症候群を抱える天才医師という非常に特異なキャラクターです。どういう意識で演じられたのですか?

まず言いたいのは、ショーンはスーパーヒーローではないということ。彼も他の人と同じように間違いを犯すし、天才とはいえ毎回正しいとは限らない。人間だからね。それから彼は、自閉症を代表する存在というわけじゃない。自閉症にはいろんな症状があって、本作で描いているのはあくまでショーン特有のものなんだ。そういう意識で演じているよ。

そして彼には一人の人間として独自の性格や癖がある。ユーモアのセンスや人間関係などショーンのいろんな面は話が進むにつれて徐々に明らかになっていくから、みんなにはそんな彼の姿を見て好きになってもらえればと思う。

 

――どのように役作りされたのですか?

デヴィッド・ショアとともに、いろんな文献やドキュメンタリー映像に目を通したよ。あとは、もともと知り合いだった自閉症の人に会ってリサーチをしたりもした。それと、撮影現場には常に自閉症のコンサルタントがいるんだ。

――とても難しい役どころですが、特に大変だったシーンは?

第1話の終盤で、ショーンは自分を雇うべきかどうかで揉めている理事たちの前で、なぜ医者になったのかを語るんだけど、あのシーンは挑戦だったね。自閉症の人は感情がないと思われがちだけど、それはナンセンスで、うまく表現できないだけなんだ。ショーンはとにかく内向的で寡黙なタイプだけど、彼だって感情を露にすることはある。ただ、あまり大げさに表現することなくそのニュアンスを出す、他の人と表現方法は違うけれども感情はあることを示すというのはちょっと大変だったね。

 

――元ネタである韓国版はご覧になりましたか?

最初の10分だけ観たよ。なぜなら元の作品と本作の第1話はそっくりなんだ。第2話以降は違うけどね。でも第1話では全く同じことを自分がやるから、韓国版は観ていない方がいいと判断したんだよ。僕たちなりの作品を作るべきだからね。ショーン役にあたる主演の俳優は素晴らしかったけど、彼を単にコピーしたくはなかったんだ。

――ショーンに関して好きな点は?

彼は楽観的で希望に満ちていて、人の良い面を探そうとする。テレビを点けるとネガティヴなニュースばかり報じられている今の世界において、ショーンは新鮮な存在だし重要な意味を持つ。人類は善にもなれるという証明だと思うよ。

 

それとショーンは時には、他の人なら怖くて聞けないようなこともズバッと口にする。他の人が考えたこともないような重要な質問をすることもあるんだ。

――先程、内向的というお話がありましたが、あなたご自身は子役の頃から、ショーンのように自分の考えていることをあまり表に出さない、思慮深い役を演じることが多いですよね。その理由は、そうしたキャラクターに魅力を感じるからですか?

そういうキャラクターに魅力を感じるのは確かだね。少ない台詞でいろんなことを伝えることができる他の俳優たちを尊敬しているんだ。あと、『ベイツ・モーテル』のノーマンも本作のショーンも、ドラマというフォーマットにぴったりのキャラクターだと思う。二人とも、長い時間をかけてじっくり掘り下げていく甲斐のある人物だから。

 

――ショーンは弟に昔もらったおもちゃのメスを大事に持っていますが、あなた自身にそうした宝物や、いつも身に着けているお守りのようなものはありますか?

うーん...いい質問だけど、特にないな。今ズボンのポケットに入っているのはホテルの部屋の鍵くらいだし(笑) ショーンにとってあのメスはすごく大事なもので、あれがあると彼は気を落ち着けたり集中することができるんだ。ある日、ショーンはこのメスを失くしてしまうんだけど、それでどうなるか注目だよ。そういえば、僕自身はアーセナルというサッカークラブのファンで幸運のユニフォームを持っているんだけど、彼らは今シーズンすごく不調だから、もうそのユニフォームは捨てるべきかもしれないね(苦笑)

――ショーンとご自身の似た点、あるいは違う点があれば教えてください。

ショーンよりも僕の方が英国人な分、シニカルかもね。デヴィッド・ショアが手掛けた別の医療ドラマ『Dr.HOUSE』の主人公ハウスは英国的なメンタリティを持っているから、彼の方が僕に近いかもしれない。ただ、ショーンから学びたいと思う。僕だけでなく、みんな彼から得るものはあるはずで、それこそが本作のテーマでもあるんだ。ショーンは単に病院に受け入れられて働くわけじゃなく、彼が加わることで病院はより良くなっていくんだよ。なぜなら彼は他の人には見えないものを見ることができるからね。

 

――以前、ずっと俳優を続けるつもりはないという旨の発言をされていましたが、今もその気持ちに変わりはありませんか? 本作で主演だけでなくプロデューサーを、『ベイツ・モーテル』では監督と脚本家も務めた上、大学でかなり熱心に勉強されたり銀行や法律事務所でも働いたりされていましたが、俳優以外の仕事をする準備なのではないかと心配です。

18歳の頃は、演技から少し離れたかったので大学に進学することを決意したんだ。子役として俳優の道を歩み始めたけど、そのまま受け身のように続けたくはなかったから、本当にこれが自分のやりたいことなのか、距離を置いて考えてみたかった。そして、大人になった自分の意思で俳優を続けていくことを決めたんだ。『ベイツ・モーテル』で脚本家・監督を体験したのもすごく楽しかったよ。だからこれからもそういった形でプロジェクトのごく初期の頃から最後まで関わっていきたい。俳優もこれからも続けていくつもりだよ。

――本作の影響で健康面に気を付けるようになったりしましたか?

多分、もっと運動すべきなんだろうね(笑) とはいえ、有り難いことに僕はまだ若くて健康だから、今のうちにたくさんチョコレートを食べておくつもりだよ。

 

――もしも日本のテレビで知っている番組、お好きな番組があれば教えてください。

日本のテレビは観たことがないんだ。昨日、WOWOWのスタジオに行ったけど、番組自体は目にしていないんだよ。でも、観るならWOWOWかな。だって『ベイツ・モーテル』も『グッド・ドクター』も同局が放送元だから(笑)

――26歳にしてすでに20年近いキャリアをお持ちですが、いわゆる"子役"から脱することができたと思ったのはいつですか?

『ベイツ・モーテル』の時にだんだん成長することができたと思う。僕自身、5シーズンにわたる撮影期間で成長したし、ノーマンも10代の少年から大人へと変わっていくからね。モーテルを経営し、人を殺し、女装したりしてね(笑)

――2014年に、『ベイツ・モーテル』のケリー・エーリンと組んでコメディドラマのパイロット版の共同脚本と製作を担当されていますよね(同作はシリーズ化には至らず)。あなた自身にはあまりコメディの印象がないのですが、そのジャンルにも興味がおありなのですか?

ああ、ぜひ別のジャンルにも挑戦したいと思っている。ずっと似たようなキャラクターばかり演じていたら、僕も視聴者も飽きてしまうだろうから。実際、『グッド・ドクター』と『ベイツ・モーテル』も全く異なるトーンの作品で、それも面白いところなんだ。だからコメディももっとやりたい。日本のコメディ番組にゲスト出演する手もあるかもね(笑)

 

――本作は人間性や生死を扱っていますが、どういう方に観てほしいですか?

ショーンのような自閉症の人に限らず、自分は他の人とは違うと疎外感を味わっていたり、差別されていると感じている人には誰でも観てほしいね。どんな人にも自分の力を証明して輝くチャンスはあるんだ。ショーンは多くの人を代弁する存在だと思う。なぜなら、人は誰でも他の人とはどこかしら違うものだから。

――作品のトリビア的な情報があれば教えてください。

『ベイツ・モーテル』にアレックス・ロメロ役で出演しつつ、数話で監督も担当していたネスター・カーボネルが本作でもメガホンを取っているよ。彼以外にも『ベイツ・モーテル』と同じスタッフが何人もいたから、現場では家族のような雰囲気が感じられて良かった。それにどちらの撮影地もバンクーバーだから、もしかしたらノーマンが歩いていた道をショーンも歩いているかもね。そういう見覚えのある風景が出てくるところも注目してもらうと面白いと思う。

 

――ショーン以外で注目してほしいキャラクターは? それと、特にお気に入りのエピソードがあれば教えてください。

ショーンとドクター・グラスマンの関係はとても面白いと思う。(同役を演じる)リチャード・シフはとにかく素晴らしい俳優で、グラスマンに多くのものをもたらしてくれているよ。ショーンがいかにして自立していけるかどうかも本作のテーマの一つで、第1話はものすごくいい導入部だけど、ショーンとグラスマンが対立する第10話もぜひ観てほしい。あとは、ショーンの弟にそっくりな患者が出てくる第5話もおすすめだよ。ショーンのバックストーリーを知る上で重要なエピソードだから。

 

――最後に、本作を楽しみにしている方たちへメッセージをお願いします。

違法ダウンロードをせずに放送を心待ちにしていてくれてありがとう(笑) ぜひ楽しんでね。

 

Photo:
フレディ・ハイモア
『グッド・ドクター 名医の条件』
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