お調子者の元サーファーが思いがけず「秘密結社」に入会し...コメディ『ロッジ49』レビュー

アメリカではAMCで、日本ではAmazon Prime Videoで8月6日(月)から放送が始まった『ロッジ49』は、父を亡くした双子の男女が、両極端なスタイルで人生の困難な時期を乗り越えようとするドラマ。破天荒なコメディのようでいて時にシニカルなセリフが心に響く本作は、これまでのジャンルにとらわれない新しい世界を切り開こうとしている。

♦拾った指輪に導かれ、秘密結社の扉を叩く
主人公ダッドは、サーファー上がりの愛すべきダメ男。刹那的な楽しみを追い、マイペースな毎日を過ごしている。そんな彼にも、1年ほど前に父親を海で亡くしたという心の傷が。遺体が陸に戻らなかったことから死を受け入れられず、まだ葬式も済ませていない。

ある日ロングビーチの浜辺で金属探知機を試していると、偶然にも立派な紋章の入った指輪を発見。質屋に持ち込むと、同じ紋様を掲げる建物の存在を知らされる。愛用のおんぼろオープンカーで何の気なしに見学に出向くと、建物の前でガス欠に。これも何かの縁とばかりに中に踏み込もうとした瞬間、ドアの向こうから「君を待っていたよ」という中年男性が姿を現す。こうしてダッドは秘密結社「ロッジ49」こと「古き慈悲深きヤマネコの会」との邂逅を果たす。

会のメンバーたちは全員が大きな夢を持ち、実現できないフラストレーションを抱え、拠り所を必要としている人々。秘密結社とは名ばかりで、街で奇行を繰り広げている。ダッドは持ち前の楽天的性格を存分に発揮し、メンバーと突拍子もない冒険を共にする中で新たな親友を見つけ、ロマンスを紡ぎ、父を亡くした心の傷を癒してゆく。

♦対照的な双子
主人公ダッドは、楽天的に考え人生を謳歌する、まさに典型的な南カリフォルニアのサーファー。そんな彼の引き立て役とも言えるのが双子のリズ。奔放なダッドとは正反対のシニカルな性格。元弁護士見習いというしっかり者だが、父親に対しては複雑な感情が。それもそのはず、30年続いた父のビーチグッズの店は傾きかけていたが、そのことを知らされないまま父のローンの保証人に。父の死後、8万ドルもの借金を抱えることになってしまった。恥を忍んでセクシーなバーでウェイトレスをして日銭を稼ぐリズは、明日のことなど考えもしないダッドと激しく衝突する。

街で突飛な行動を繰り広げるダッドに対し、現実味を持ったリズのパートがうまくバランスをとっている、と米Varietyは評する。金銭的な困難を前に、バラバラに砕けそうになりながらも、何とか返済をこなすリズの苦々しい表情が、現実の厳しさを物語る。ダッドの奇行の不条理さが笑いを誘う本作だが、リズの置かれた厳しい現実こそが真に不条理なのではないかと同メディアは同情の念を寄せる。

♦海もキャストの一人
演技力豊かなキャストが揃う中、ロングビーチの海も偉大なキャストの一人だと米Hollywood Reporterは紹介する。人々の前に立ちはだかり、老いや哲学、敗れた夢、そしてこれから叶う夢などを静かに問いかける。底抜けに不条理なコメディの中にも、ふとした拍子に、人生とは何かという深い問いを投げかける作品だ。主演のダッド役のワイアット・ラッセル、双子のリズを演じるソーニャ・キャシディ、秘密結社のメンバーで、ダッドの親友アーニーに扮するブレント・ジェニングス。この3人は、落ち込んでいるときに元気を与えてくれる貴重な存在だ。

ストーリーにはもちろん恋のエピソードも散りばめられており...ダッドは意外な女性と恋に落ちたり、アーニーも秘密結社のメンバーの一人に気がある様子。傑出したキャストが演じるこれらのキャラクターたちは、セリフで表現される範疇を超えた熱量を視聴者に届けてくれるとVarietyは讃えている。

向こう見ずでお気楽な男が、仲間と失意の時を乗り越えるドラマ『ロッジ49』は、米AMCで放送中。日本ではAmazon Prime Videoにて配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ロッジ49』
(C)James Minchin III/AMC