2015年から米Huluで人気を博してきた、心温まるコメディ『カジュアル』。出会い系サイトを共同設立したアレックス（トミー・デューイ）が、離婚したばかりの姉ヴァレリー（ミカエラ・ワトキンス）と一緒に、ヴァレリーの娘ローラ（タラ・リン・バー）を育てる物語。7月31日（火）にアメリカで公開されたシーズン4では、自分にどこか問題があると気づきながらも素直になれない家族が、それぞれの進歩を見せる。4年間の物語に可笑しくもホロ苦い有終の美を飾る。
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（※本記事には、シリーズのネタばれを含みますのでご注意ください）
■父親になったアレックス 新しいビジネスに漕ぎ出すヴァレリー
シリーズ最終章となる今期は、昨シーズンから数年後の世界が舞台。アレックスは民泊サイトAirbnbを通じて泊まりに来たラエ（マヤ・アースキン）と一夜限りの関係を持ち、彼女を妊娠させてしまっていた。一児の父となったアレックスは、いまだナルシストのきらいがあるものの、地に足のついた人物に成長。ただし出会い系サイトの誘惑は断ち切れないと見え、VRゴーグルを装着した近未来型の出会い系サービスに興じては、次々とポップアップする邪魔な広告にイライラを募らせる日々を送っている。
一方、姉のヴァレリーは、AmazonのAlexaを思わせるバーチャル・アシスタントの扱いに四苦八苦。仕事面では長かったセラピストを卒業し、ワイン・ショップのオーナーとして新たな一歩を踏み出そうとしている。しかし急な思いつきに、店の将来への不安は尽きない。そんなヴァレリーの元を訪れたのは、2年間の海外生活で彼女から距離を置いていた傍若無人な娘ローラ。久々に帰国した彼女は、新しいガールフレンドと真剣な交際をしながら、心のどこかで母親との関係修復を望んでいる。登場人物がそれぞれの価値を認め合い、人間として一歩前に踏み出す最終シーズンがスタートする。
■親子が手探りで手に入れる、それぞれの成長譚
過ちを繰り返しながらも、より良い人間になろうとするキャラクターたちが愛おしい本シリーズ。一緒にいるとついイライラしてしまうような人々だが、前進しようともがく様子がはっきりと伝わってくる、とは米Vulture。友人を作ることさえ上手くできない性格だったアレックスとヴァレリーだが、シーズン3からは成長の気配が垣間見える。口を開けば辛辣な意見を口にしていたヴァレリーは、周囲の人々に心のこもったアドバイスをするように。セラピストとして活動していた頃より助言に優れているのは愉快だ、と同誌は喜ぶ。アレックスは照れ隠しに皮肉を言うクセが抜けないが、娘に対しては素直な感情を見せるように成長。今期ヴァレリーと見せる血の通った美しい姉弟関係も見逃せない。
米Indie Wireは、生意気なローラの成長に注目。母親との関係修復に心を砕くほか、元カノとの間に残っていたわだかまりも解消へ。自分自身に対しても前向きな感情を抱けるようになる。最終話では母ヴァレリーと向き合い、お互いを気遣う一言を交わす。何気ない言葉だが、この一言こそ4シーズンにわたってヴァレリーが求めていたことばだと同メディアが指摘するとおり、長年の視聴者ならば心に響くものがあるはずだ。
■王道コメディのフィナーレ シリーズ最終章にふさわしい出来栄え
最終話までにキャラクターたちはそれぞれの将来を見出し、関係はあるべき所に収まってゆく。シリーズの最後を飾るにふさわしい見事なエンディングで、これまでで最高のシーズンだとIndie Wireは絶賛。ネット越しの奇妙な出会いを綴ったシーズン1に始まり、家族愛を描いた完成形に昇華することとなった。今シーズンはガジェットの登場が目立つが、テクノロジーが溢れる近未来に舞台を移しても、愛を探し求める一家の物語は変わらないと同メディアは評価する。
デジタルの波が押し寄せる現代において、人と人とのつながりを持つことの難しさを語る作品、とVultureは評する。『ウエストワールド』のようなロボットは本作に登場しないし、『ゲーム・オブ・スローンズ』のような派手なドラゴンもない。しかし、賑やかで親しみやすい王道コメディだ、と総括。日常の出来事の機微で楽しませてくれる作品に仕上がっている。大失敗したひどいデートや、ナイターを観に行って喧嘩してしまった夜、そして誰かが間違ったガソリンを給油したせいで台無しになったロードトリップなど、何十年も経ってから懐かしく振り返るようなエピソードが満載の、心に残るシーズンだ。
笑いとともに、明日への前向きなチカラを届けてくれる『カジュアル』は、米Huluで最終シーズンが公開中。日本ではAmazon Prime Videoでシーズン1から3を購入可能で、うち、それぞれ第1話が無料配信されている。（海外ドラマNAVI）
Photo：（左から）ナシャ・ハテンディ、タラ・リン・バー、ミカエラ・ワトキンス、トミー・デューイ
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