ライバル売春宿との泥沼の闘いに突入、米Hulu『Harlots』シーズン2 18世紀イギリスの風俗産業を描く

18世紀のロンドンで、2軒の売春宿が火花を散らす『Harlots(原題)』。女性にとって高収入を得ることが難しいこの世界では、上流階級との婚姻か、あるいは風俗産業への従事だけが豊かに暮らすための道だった。米Huluで7月11日(水)から配信が始まったシーズン2は、娼婦として生計を立てる女性たちのライバル関係がますます熾烈に。権力と財力に翻弄される彼女たちの生き様を描いたシリーズだ。

■ロンドンで憎しみ合う因縁の置屋
前シーズンでは、マーガレット(サマンサ・モートン)の営む色宿が、ある高級な地域に進出。ところがそこは古くからリディア(レスリー・マンヴィル)の店の縄張りであり、二人の間に憎悪の炎が。マーガレットは若い頃にリディアの店で娼婦として働かされていた過去があり、二人の因縁の関係が再燃する。

マーガレットが苦境にめげず商売を続けることができたのは、店で働く二人の娘を含め、家族との強い絆があったからこそ。しかし、今シーズンでは状況が一変。人気の娼婦である長女シャーロット(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)は、母の店を裏切るかのように、リディア率いるライバル店に移籍する。シャーロットには何か考えがあるようだが、その狙いは果たして。さらにマーガレットは内縁の夫ウィル(ダニー・サパーニ)との関係も悪化するなど、次々と降りかかる困難に精神は限界へ。しかしその時、順調に見えたリディアの売春宿に査察が入ったことから、リディアの店は混乱状態に。マーガレットは起死回生を賭け、リディアの保釈前に店を破滅に追い込むための奇策に出る。

■「樽の中のカニ」
リディアの不在を突き、その復帰前に彼女の商売の息の根を止めようと画策するマーガレット。親しくしているナンシー(ケイト・フリートウッド)とともに進めるこの作戦を、AV Club誌は、脚本上用意された大きな見所の一つだと見る。マーガレットは、嫌がる少女の純潔を売り物にするリディアの悪行を暴き、金のためには道徳観に目をつぶる彼女の冷酷な所業を明らかにしてゆく。

ただしマーガレット自身も、色宿の経営主であることに変わりはない。彼女の店は商売を望む女性だけを働かせているという違いこそあれど、本質的には両者ともモラルが欠如している、と米IndieWireは指摘。過去にマーガレットは、店の経営危機を逃れるため、実の娘であるシャーロットの処女を売りに出している。同メディアは本作を、「樽の中のカニ」タイプのドラマだと分類。樽から這い出ようとするカニは、他のカニに脚を引っ張られ、決して外の世界に逃れることができない。作中の売春婦と店主たちも、ただでさえ生活が苦しいところへ、輪をかけて互いを不幸に追いやってゆく。だからこそリアルなのだ、とIndieWireは評価している。

■現代にも通じる不屈の精神
商売の凋落を目の当たりにしたリディアは、憤怒とやるせなさの混じった表情を見せる。マーガレットとの緊張は前シーズンと同様にワクワクさせてくれる、と米The A.V, Clubはさらなる展開に期待を寄せる。実は両者には共通の敵が存在している。街の処女を買い漁る上流貴族の秘密組織がそれに当たるが、財力と権力を振りかざす彼らに対し、二人は大切な店の従業員が傷つけられるのを見ていることしかできない。正義の名の下に傷つけられる弱者たちが本作のテーマの一つになっている、と同メディアは見ている。

このメッセージを象徴するキャラクターの一人が、今シーズン初登場のイザベラ(リヴ・タイラー)。良い家柄の生まれで、しかも娼婦ではないが、それでも人生を男性に掌握されているという役どころ。IndieWireは、財産はすべて兄のブレイン侯爵(ジュリアン・リンド=タット)の手中にあり、私生活をこと細かに監視する彼の存在からイザベラは逃れることができない、と紹介。不遇の女性たちが顔を揃える本作は決して気楽に見られるシリーズではない、と断言している。しかし、現代にも通じる不屈の精神と、人間の打たれ強さを感じさせる、観る価値のある作品だと同メディアは評価する。

置屋の主人同士が泥沼の闘いを繰り広げる『Harlots』シーズン2は、米Huluで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:
サマンサ・モートン(C) JMVM/FAMOUS
レスリー・マンヴィル(C)JHMH/FAMOUS