盟友デヴィッド・フィンチャーと共に未知なる挑戦!Netflix『ラブ、デス&ロボット』の仕掛け人ティム・ミラーを直撃インタビュー!

3月15日より配信開始以来、大好評を博しているNetflixオリジナル・アニメアンソロジー『ラブ、デス&ロボット』。全18作品、最短6分から最長17分の短編SFアニメが収められ、内容もアクション、バイオレンス、ホラー、エロスなど、ほぼ無制限のハードな描写が満載だ。

『ドラゴン・タトゥーの女』でタッグを組んだデヴィッド・フィンチャー(製作総指揮)とともに本シリーズを仕掛けたティム・ミラー(原作・製作)がインタビューに応じ、企画立ち上げから困難を極めた作品の具現化までを熱く語った。

――固定概念にとらわれないダイナミックな発想と映像表現には度肝を抜かれました。

ありがとう! このシリーズは、フォーマットもジャンルも持たない、作り手の意思を尊重した完全に自由な世界。唯一、ルールがあるとすれば、「大人向け」であることと、「エッジ」が利いていること、くらいかな。

――本シリーズを発案したのはミラーさんだとお聞きしていますが、きっかけは何だったのでしょう。

若い頃からから、短編小説やアニメーションのアンソロジーものが大好きで、僕の中では、アーティスト、あるいはストーリーテラーの一つのスタイルとして、「ぜひカタチとしてしたい」と思っていたプロジェクトだったんだ。自分が若かりし頃に楽しんだアニメーションを「最新テクノロジーで作ってみたらどんなものになるんだろう?」という好奇心もあったしね。

――デヴィッド・フィンチャーやジョシュア・ドーネン(『ゴーン・ガール』などの製作者)らとタッグを組むことになった経緯は?

『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年/ティムはタイトルシークエンスのクリエイティブ・ディレクターを担当)で一緒に仕事をして以来、デヴィッドとは親交があったので、いつも「何か面白いことをやりたいね」と話していたんだ。そんなある日、「新進気鋭のクリエイターを選んで、大人向けのアニメアンソロジーを作ってみたい」と彼に話したら、「面白いじゃないか!それ、やろうよ」と大いに賛同してくれて。ただ、なかなか首を縦に振ってくれるスタジオがなくて、映画というカタチで具現化するのは無理だった。ただ、その中で、唯一、Netflixが手を挙げてくださったときはうれしかったね。他社が怖がる企画でも、「やってみよう!」と言ってくださるチャレンジ精神は、本当にファンタスティックだよ。

――確かにNetflixだからこそできた意欲的な作品でしたね。ミラーさんの熱意と才能はもとより、フィンチャーさんの力添えも大きかったと思いますが、お二人はどんな関係性なんですか?

最初の出会いは、『ゾディアック』(2007年)が公開された頃かな? 彼は「L.A.をマグニチュード12の大地震が襲ったら?」というゲームを開発しようとしていて、制作会社を探していたところ、ゲーム業界で「ブラー・スタジオ(ティムが設立した映像制作会社)は映像の腕がいい」ということを聞きつけて、自ら会いに来てくれたんだ。僕とデヴィッドの美意識は全く違ったけれど(笑)ブラーのセンスは非常に気に入ってくれて、何より人間的に馬が合ったのが大きかったね。『ドラゴン・タトゥーの女』で初めて映画の仕事をやらせてもらったんだけど、とてもいい感じでタッグを組むことができた。以来、いろんな企画を温めて来たけれど、一番残念だったのは『子連れ狼』の映画化が立ち消えになったこと。某大手映画会社で、もうちょっとのところで実現しそうだっただけにね。だから今回、デヴィッドと一緒に企画した本シリーズが具現化してくれて、本当にうれしく思っているよ。

――本シリーズは、大人向けということで、エロス、ホラー、バイオレンスなどの描写も凄まじく、驚異的なテクノロジーの進化も見どころだと思いますが、ミラーさんが本シリーズで一番こだわったポイントは何ですか?

ブラー・スタジオが基点となり、「アニメのパイプラインをいかに進化させられるか」に関心を抱いていて、すべての企画は「新たな技術や表現力を開発する機会」と捉えているんだ。アニメ業界は、テクノロジーが常に進化しているので、目が離せないくらい面白いんだけれど、そこを模索しながら、現時点でのアニメーションの素晴らしさを伝えていく、という感じかな。例えば、第4話「スーツ」では、あえて2Dの映像効果を追求したり、レンダリングを独自に様式化したり、パイプラインを駆使してさまざまな技術開発にトライしているが、これはブラー・スタジオにとっても大きな挑戦だった。「目撃者」という作品では、実験的な映像制作しか経験のない新進クリエイターを思い切って起用し、彼の芸術的な感覚を、テクノロジーを通して表現するということにも挑戦している。あとは、ストーリーテリングのクオリティーを高いレベルでキープしたかったので、ここは僕らがかなり気を付けた部分だね。

――「目撃者」は特に肉体の動きが繊細でリアルでしたね。

そうなんだ。例えば、アクションに伴う女性の「胸の揺れ」は技術的にとても難しいところだけれど、よく表現されていたよね。ちなみ、僕の奥さんから、「男性のシンボルも揺れないと!」とアドイバイスされたんだ。男女平等にってね(笑)

――本シリーズは、表現の自由度が非常に高かったと思いますが、若手を発掘するような登竜門的な意味もあったのでしょうか?

新しい才能に関心は持っているけれど、「自分たちが育てる」ということに関しては、今回の企画には含まれていないし、ちょっと僕たちにはおこがましい気がするね。どちらかというと、すでに才能があるとわかっている人に表現する場を提供する、という意味合いの方が強い。例えば、とてもユニークなストーリーを綴る才能があるのに絵コンテばかり描かされている人や、アートディレクターという立場にありながら映像監督になかなかなれない人など、そういう人にアニメ業界への橋渡しができれば、という感じかな。

――ちなみに、言いにくいとは思いますが(笑)、18作品の中であなたが一番気に入っている作品は?

第3話「目撃者」のスタイルは物凄く気に入っているし、第18話「秘密戦争」のエンディングも個人的には気に入っている。18作品全てが自信作だから、お気に入りは日によって変わるんだけれど、たぶん第5話「魂をむさぼる魔物」が僕のベストフィルムかな。脚本も若々しいし、あのユーモアはすごく笑えるんだよ。

――最短6分から最長17分のアニメアンソロジーというスタイル、視聴者にはどのように楽しんでもらいたいですか?

空いた時間にスマートフォンで楽しんだり、(クオリティーも高いので)逆に家の大型テレビでイッキ見したり、楽しみ方はそれぞれ自由さ。作り手の僕らは、「周りに誰もいなくて、気が散らないパーフェクトな環境で観て欲しい」なんて全く思っていないからね。むしろ、観てくださる皆さんの日常に織り込まれていくような、そういう見方をしてくれているとうれしいね。

――このシリーズが続いていく可能性は?

僕たちは続けたい気持ちでいるけれど、Netflixはギリギリまで教えてくれないんだよ。とにかく本シリーズがたくさんの方に観ていただければ、チャンスはあるかもね(笑)

――『デッドプール』で実写映画の監督としても手腕を発揮したミラーさん、最新監督作『ターミネーター:ニュー・フェイト』(11月公開予定)も楽しみにしています!

ありがとう! とてもいい映画になると思うよ。ほとばしる情熱をぜひスクリーンで感じとってほしいね!

Netflixオリジナルシリーズ『ラブ、デス&ロボット』独占配信中。

(取材・文:坂田正樹)

Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ラブ、デス&ロボット』独占配信中。