第2の『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』!?お嬢様が特殊な環境で再出発を図るコメディ『American Princess』

ニューヨークで上流の暮らしを送ってきた女性がフィアンセの裏切りで絶望の淵へ。しかしそれは、本当の仲間と出会う始まりだった。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のチームが手掛けるコメディ『American Princess(原題)』は、米有料チャンネルのLifetimeで6月上旬から放送中。

人生の成功者が出会う、下品で最高な仲間たち

マンハッタンで優雅な暮らしを楽しむアマンダ(『ウェントワース女子刑務所』のジョージア・フラッド)にとって、緑あふれる式場での結婚式は人生最高の晴れ舞台となるはずだった。しかし結婚式当日、式場の控え室で新郎がほかの女と濃密な行為にふけっているのを目撃してしまったアマンダは動転のあまり会場を抜け出し、気がつくと辺りの田舎道をさまよっていた。

まだウェディングドレス用のコルセットを着けたままだったことから、アマンダは出演者と間違われて「ルネッサンス・フェア」の園内へ案内される。ルネッサンス・フェアとはアメリカで行われる興行イベントで、豊かな自然の中で歴史的雰囲気を楽しむテーマパークのようなもの。豪華に着飾った貴婦人にケンタウロスなど、古き良きイギリスの世界観にアマンダは息を呑む。そのまま会場で働きたいと願い面接に臨むと、問われたのはただ一つ、「重罪を犯したことは?」。間髪入れずに「ないです」と答えただけで即採用となる。

最初は慣れない職場に失敗続きだったが、徐々に働くコツを習得するアマンダ。親切なデイヴィッド(『シングルパパの育児奮闘記』のルーカス・ネフ)との間にはロマンスの予感も。エキセントリックで最初こそ近づきにくかった同僚たちとも次第に打ち解け、最悪に泥臭く、そして最高にハツラツとした暮らしに生き甲斐を見出してゆく。

作中では、ルネッサンス・フェアとそこで働く出演者たちの舞台裏がよく再現されている。高校生の頃に実際にフェアで働いたことがあるという米Hollywood Reporter誌の記者は、驚くほど正確にフェアを描写した作品だと証言。主人公のアマンダはニューヨークから田舎のフェアに移り住むが、その戸惑いまでよく描かれていて、自身の経験とぴったりだという。ちなみに同記者は、中世の鎖かたびらのような衣装を売る店の担当だったとか。ほかの皆と一緒に店の裏で眠り、売れ残りのターキーレッグを食べ、シフトの空いた時間には馬上戦闘のショーを見たものだ、と若き日の思い出を綴っている。

ちなみにルネッサンス・フェアの存在自体は、アメリカでもそこまで広く浸透しているわけではないようだ。本作の放送によって、「へえ、こういうのがあるのか。楽しそうだね」と人々の意識を集めることになるだろう、と米Paste誌。奇抜なキャラがてんこ盛りのドラマに引かれ、週末の外出先にルネッサンス・フェアを選ぶ人々がアメリカでにわかに増えるかもしれない。

『オレンジ・イズ~』の黄金パターンに乗せて

ドラマゆえの誇張もあってか、作中のフェアはかなりトガった人々の集まり。アマンダ本人のセリフを借りれば、「超発情中のオタクたちが考えたテーマパーク」だ。特に深みのあるドラマではないが、だからこそ素晴らしい、とPaste誌は評価。ネジの緩んだ出演者たちの生活を、遠くからこっそり覗き見るように愉しむことができる。

本作のエグゼクティブ・プロデューサーには、刑務所内の人間模様を描く『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のクリエイター、ジェンジ・コーハンをはじめ、同作のスタッフが何人も名を連ねる。お高くとまっているが憎めない主人公がまったく見知らぬ世界に迷い込む点など、両作の共通項は多い。Hollywood Reporter誌はさらに、勢力争いの起きている仲間グループに徐々に溶け込んだり、下品なジョークの連発で視聴者が知らない世界を見せてくれたりといったところも共通点だと指摘している。

人気作の成功パターンを継承する『American Princess』は、米Lifetimeで放送中。同じ製作チームによる『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』はNetflixで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:

『American Princess』
(C)Everett Collection/amanaimages