根強い人気の刑務所ドラマ 大ヒット作から2020年注目の話題作まで一挙紹介!

2020年からNetflixで再配信され、再び注目度が上昇中の『プリズン・ブレイク』は、2000年代初頭の海外ドラマ・ブームの一端を担い、近年の刑務所ドラマ人気の火つけ役にもなった世界的大ヒット作。海外ドラマNAVIでも2017年に本作を含めた刑務所ドラマの面白さを紹介しましたが、今回は新作を含めた今だからこそオススメで、動画配信サービスでも見られる刑務所ドラマ作品の魅力を紐解いていきたいと思います!

■刑務所ドラマの魅力とは?フォーマットを確立した『OZ/オズ』

...と、オススメ紹介の前に、2000年代の刑務所ドラマを語る上で絶対に外せない作品があります。それがHBO初のドラマシリーズとして全米で1997年から放送された『OZ/オズ』。刑務所という逃れられない極限の閉鎖空間を舞台に、そこで形成される独自のヒエラルキーと、一般社会より激しさの増すバイオレンス、人種差別、同性愛などによって生み出される人間ドラマが描かれました。

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日本でも2001年からスーパー!ドラマTVで放送されていたのですが、規制が少ないHBOというケーブル局ならではの大胆で過激な描写の連続に衝撃を受けた思い出があります。残念ながら、2020年8月現在、日本で視聴することはできませんが、刑務所という閉鎖的なシチュエーションに、特殊なヒエラルキーと過激描写の数々をベースとした人間ドラマという刑務所ドラマの魅力とフォーマットを確立した名作です。

そして、このフォーマットをベースに、様々な要素をプラスしたり、よりフォーカスを当てた刑務所ドラマがアメリカ以外にも世界中で続々と登場し、近年の刑務所ドラマ人気ができあがっているのです。

■脱獄要素をプラスした『プリズン・ブレイク』と『エスケープ・アット・ダンネモラ』

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そんな刑務所ドラマのフォーマットに、"脱獄"というスリル&サスペンス要素をプラスして大ヒットとなったのが『プリズン・ブレイク』。刑務所ドラマの基本要素にスリル&サスペンス満載の脱獄劇をメインとして加えつつも、数々の謎や陰謀といったミステリーも盛り込んだストーリーに、イケメン主人公マイケルの活躍や兄リンカーンとの兄弟愛、ティーバッグのような個性的なキャラクターたち、さらにシーズンごとに脱獄劇や逃亡劇へと変化するテーマというように、エンタメ要素がこれでもかと盛り込まれた傑作です。

2009年に終わったシーズン4でシリーズ完結かと思いきや、2017年にはシーズン5がまさかの復活! シーズン6製作の可能性も高く、その人気は今なお衰え知らず。海外ドラマとしても刑務所ドラマとしても外せない一本です。

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一方、同じ脱獄劇ながら、実際にアメリカで起きた脱獄事件を元ネタとしているのが『エスケープ・アット・ダンネモラ~脱獄~』。最高レベルの警備体制を敷くニューヨーク州ダンネモラのクリントン刑務所を舞台に、脱獄を企てる囚人のリチャードとデヴィッド、彼らに誘惑される刑務所で働く女性ティリーという3人を中心として、脱獄計画とその顛末を描きます。

監督は、俳優としても活躍するベン・スティラー。出演はリチャード役にマーベル・シネマティック・ユニバースでコレクターを演じるベニチオ・デル・トロ、デヴィッド役にバットマンの新作映画でリドラーを演じるポール・ダノ、そして、ティリー役に海外ドラマファンにとっては『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』や『CSI:サイバー』でおなじみのパトリシア・アークエット。2019年の第76回ゴールデン・グローブ賞リミテッドシリーズ/テレビムービー部門で作品賞などにノミネートされ、パトリシアは主演女優賞を受賞。同年の第71回エミー賞でもリミテッドシリーズで12ノミネートと高い評価を得ています。

日本では2020年3月からひかりTVで日本独占放送となった話題作。ダークなユーモアを交えた名優たちの演技合戦が見もので、脱獄劇の中でもドラマ性を求める方にオススメです。

■女子刑務所を舞台に人間ドラマへとフォーカスしたドラマにも注目!

脱獄モノとは一転し、女子刑務所を舞台とした女囚モノとして刑務所内での人間ドラマにフォーカスしたドラマシリーズが2010年代に続々と登場しました。それが、2013年よりNetflixで配信された『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』、同じく2013年にオーストラリアでスタートした『ウェントワース女子刑務所』、そして2015年からスペインで放送開始された『ロック・アップ/スペイン女子刑務所』の3作品です。

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Netflixオリジナルシリーズとして人気を博した『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』は、不運にも犯罪に巻き込まれたお嬢様育ちのパイパーが女子刑務所に収監され、そこで起こる理不尽なトラブルを生き抜く様を、シニカルな笑いを通して描いています。原作が「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 女子刑務所での13ヵ月」というノンフィクションだけに、アメリカにおける女子刑務所のリアリティさも見どころ。パイパーのほかにも様々なキャラクターにフォーカスを当てた群像劇となっており、移民問題などアメリカが直面する現実の問題も扱いつつ、感動を呼び起こす作品です。2019年のシーズン7で完結しているので、シニカルな笑いと感動がセットになった刑務所ドラマをじっくり見たいという方にオススメです。

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オーストラリアで1979年から1986年に放送されていた人気ドラマのリメイクとなる『ウェントワース女子刑務所』は、同国のTVドラマ歴代視聴率で1位を記録し、配信中のHuluでもトップクラスの人気を誇ります。平凡な主婦だったビーは、虐待に耐えかねて夫を殺害し、刑務所へと収監されることに。彼女は刑務所内で繰り広げられる権力闘争に巻き込まれながらも、自分と娘を守るため、やがて「伝説」と呼ばれるまでに刑務所内で上り詰めていく姿を描いています。刑務所を舞台とした映画やドラマでは、主人公が理不尽な境遇や暴力からいかにして逃れるかというテーマが多い中、囚人同士だけでなく看守側とも権力闘争を繰り広げて主人公がボスとして成り上がっていくというのが注目ポイント。"頭脳派サバイバル・ドラマ"なんてキャッチコピーが付けられているだけに、脱獄劇とはまた違った人間ドラマの中にスリルを求めたい方にオススメしたい作品です。

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そして、スペイン本国で『ウォーキング・デッド』が作ったストリーミングでの視聴者数記録を打ち破るなどの大ヒットとなったのが『ロック・アップ/スペイン女子刑務所』。不倫相手の上司に詐欺行為を手伝わされた挙句、騙されて収監された主人公マカレナが、刑務所内の囚人と看守との駆け引きサバイバルを繰り広げる女子刑務所ドラマです。また、塀の外にいるマカレナの家族も巻き込んでのミステリー・サスペンス要素によって予測不能な展開が待っているなど、人間ドラマだけではない魅力も持ち合わせています。同シリーズは本国では2019年に放送されたシーズン4をもって終了していますが、スピンオフが2020年に放送予定。日本ではHuluでシーズン2まで配信中で、シーズン3以降の日本語版配信を期待したいところ。英語圏のドラマとはまた違った雰囲気を醸し出している刑務所ドラマを見たい方には特にオススメの一本です。

■看守を主人公としたブラジルの異色作『JAILERS/ジェイラーズ』

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最後にオススメするのが、今までの刑務所ドラマの中で主人公側としてスポットの当たらなかった看守を主役に据えたブラジルのドラマ『JAILERS/ジェイラーズ』です。犯罪大国ブラジルの中でも最も危険で無法地帯と化している刑務所の看守アドリアーノが、刑務所内で起こる様々なトラブルと、さらには自身の家族にまで及ぶ危機に立ち向かうという設定。実際にブラジルの刑務所で働いていた看守たちの証言に基づいて作られているというだけあって、危険でリアルなブラジル刑務所の実態を描く衝撃的な作品となっています。2020年4月からHuluで配信となったホットな注目作で、あまりお目にかかれないブラジルドラマを堪能できる意味でも異色の一本です。

刑務所という特殊なシチュエーションを舞台に、アメリカだけでなく世界中で制作されて人気となっている刑務所ドラマ。自分の好みで選ぶも良し、見比べて楽しむのも良しと、いろいろと楽しんでみてはいかがでしょうか?

Photo:『OZ/オズ』© HBO 『プリズン・ブレイク』© 2005 - 2006 Twentieth Century Fox Film Corporation
『エスケープ・アット・ダンネモラ~脱獄~』© 2018 “Escape At Dannemora” Showtime Networks Inc. All Rights Reserved. 『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』『ウェントワース女子刑務所』 ©FremantleMedia Ltd.『ロック・アップ/スペイン女子刑務所』 © 2015.Globomedia. All Rights Reserved 『JAILERS/ジェイラーズ』 © Globo/Ramon Vasconcelos © Globo/Marcelo Tabach