『ドクター・フー』を手がけるラッセル・T・デイヴィスの最新ドラマ『Tip Toe(原題)』が、「必見の意欲作」として高い評価を受けている。なぜ本作が従来のLGBTQ+ドラマとは一線を画すのか、その魅力を英Radio Timesが分析しているので紹介しよう。
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現代イギリスの縮図を描く、あるクラブオーナーの視点
物語の中心となるのは、アラン・カミング演じるレオ。マンチェスターのカナル・ストリートでクラブを経営する彼の視点を通して、現代イギリス社会に存在するさまざまな価値観や対立が描かれる。
本作は一見するとLGBTQ+コミュニティを描いたドラマだが、そのテーマはそれだけにとどまらない。レオと近隣住民クライヴ(デヴィッド・モリッシー『ウォーキング・デッド』)との衝突や、家族や仲間との関係を通じて、人々がどのように互いを理解できず、孤立していくのかを浮き彫りにしていく。
苦悩でも希望でもない、第三の道を切り開くアプローチ
近年のLGBTQ+ドラマは、大きく二つの方向性に分かれることが多い。一つは『ユーフォリア/EUPHORIA』をはじめ、差別や暴力など当事者が経験する苦しみを強く描く作品。もう一つは『HEARTSTOPPER ハートストッパー』などに代表される、若者たちの成長や恋愛を通じて希望を描く作品だ。どちらも重要な役割を果たしているが、『Tip Toe』はそのどちらにも当てはまらない。
本作が描くのは、SNSを開けば対立する意見が飛び交い、街を歩けば自分とは異なる価値観を持つ人々とすれ違う現代社会そのものだ。LGBTQ+当事者だけでなく、誰もが経験する「理解されない苦しさ」や「社会から取り残される感覚」に焦点を当てている。
ラッセル・T・デイヴィス自身も、本作はユダヤ人や障がい者、女性、さらには疎外感を抱える異性愛者の白人男性にも置き換えられる物語だと語っている。つまり『Tip Toe』は特定のコミュニティだけの物語ではなく、現代を生きるすべての人に向けられたドラマなのだ。
また、本作の大きな特徴は、どちらか一方を善人、もう一方を悪人として描かない点にある。異なる意見を持つ人物たちにもそれぞれの事情や背景があり、視聴者は自分とは考えの違うキャラクターにも共感してしまう。だからこそ、本作は単純な社会派ドラマではなく、人間ドラマとして強い説得力を持っている。
もちろん、LGBTQ+コミュニティが直面する差別や偏見、インターネット上でのヘイトなども描かれるが、『Tip Toe』が最終的に伝えようとしているのは怒りや対立ではなく、「コミュニティの力」と「対話の重要性」だ。分断が深まる時代だからこそ、互いの声に耳を傾けることが必要なのだと訴えかける。
『Tip Toe』は、LGBTQ+ドラマであると同時に、現代社会そのものを映し出すドラマでもある。だからこそ当事者だけでなく、より多くの人々に観られるべき作品だろう。ラッセル・T・デイヴィスが再び世に送り出すこの意欲作は、今の時代だからこそ大きな意味を持つ作品となりそうだ。
『Tip Toe』は、英Channel 4で放送中。日本での放送・配信が決まった際には当サイトでお伝えしていきたい。(海外ドラマNAVI)





