Amazon Prime Videoの人気シリーズ『ザ・ボーイズ』が、現実世界のニュースを先取りするかのような展開を見せるのは、今や珍しいことではない。しかし、クリエイター兼ショーランナーを務めるエリック・クリプキによれば、そのシンクロニシティは作り手の想像を絶する領域に達しているようだ。クリプキは、最強にして最悪のヒーロー、ホームランダー(アントニー・スター)の描写が、ドナルド・トランプが公開した「AI生成によるイエス・キリスト」の画像と、公開タイミングを含めて奇妙に一致していた具体的なエピソードを明かした。
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『ザ・ボーイズ』シーズン5、「トランプが風刺を難しくしている」現実が追い越す異常事態にクリエイターが苦言
Amazon Prime Videoの人気シリーズ『ザ・ボー …
『ザ・ボーイズ』ですら現実という強敵に苦戦する風刺の最前線
クリプキは、最強にして最悪のヒーロー、ホームランダー(アントニー・スター)の描写が、ドナルド・トランプが公開した「AI生成によるイエス・キリスト」の画像と、公開タイミングを含めて奇妙に一致していた具体的なエピソードを明かした。
米Deadlineが主催するイベント「Contenders Television」に、クリプキはスタント・コーディネーター監修兼監督のジョン・コヤマ、出演者のジェシー・T・アッシャー(Aトレイン役)、福原かれん(キミコ役)と共に出席。最終章となるシーズン5について熱く語った。
「これまでの4シーズンは、ホームランダーが狂気へとゆっくり転落していく過程を描いてきた。そして最終シーズンとなる今作では、彼を可能な限りクレイジーな状態にまで持っていこうと考えたんだ。それが、彼が神になりたいと決意する展開だった」と振り返る。
しかし、劇中での「神への志向」がどれほど過激なアイデアであっても、現実がそれを瞬時に追い抜いてしまう。「それが起こり得る最もクレイジーなことだと思っていた矢先、我々の放送のわずか48時間前に、トランプが自分を神として描いた画像を公開したんだ。これだけは言わせてほしい。彼は風刺を行うことを本当に難しくしている。ほんの一分間でいいから落ち着いて、我々のドラマよりも不条理でいるのをやめてくれないか? そうなれば素晴らしいのだが」と、現実世界のスピード感に苦笑混じりの本音を漏らした。
漆黒の物語の底に流れる「希望」というテーマ
あまりにダークで冷笑的だと思われがちな『ザ・ボーイズ』だが、クリプキが真に取り組みたいと考えているポジティブなテーマも依然として存在する。
「人々は『ザ・ボーイズ』を非常にダークだと言うが、我々が最も関心を抱いているのは希望というテーマなんだ。考え得る限り最も暗い時代において、いかにして希望にしがみつくか。それは現代において、極めて共感できる問いだと思う。打ちのめされるたびに、いかにして立ち上がり続けるかということ」
さらに、彼は作品を通じて一貫して訴えてきたヒーロー像の否定についても言及。「どこかの偉大なヒーローが、あなたを救うために空から舞い降りてくるわけではない。だからこそ、我々自身が自分たちを救うために動き出さなければならない。そのプロセスがどのような光景になるのか、それを描きたいんだ」
時代の精神を捉え続けた稀有なシリーズへの惜別
パネルの締めくくりに、長年連れ添った『ザ・ボーイズ』という場を去ることへの寂しさを吐露した。彼にとってこの番組は、現実世界の混迷を処理するための貴重な「出口」でもあったからだ。
「このドラマが、権威主義、セレブリティ、ソーシャルメディア、ファシズムといった現代の渦を、これほどまでに的確なタイミングで捉えられたのは、まさに一生に一度の奇跡だ。キャリアを通じて時代精神を追いかけ、それを捉えようと努めるものだが、これほどの交差点に再び立ち会うのは至難の業だろう」
また、ドラマの終了に伴い、個人的なジレンマも抱えているという。「今や僕は、毎朝ニュースでどんな恐ろしい見出しを読んでも、それをぶつける場所がないんだ。ライターズ・ルームに持ち込んでドラマに昇華することができない。他の誰もがそうしているように、今はただニュースを飲み込み、内面化しなければならない。それは本当に最悪な気分だよ! だからこそ、皆にはそれについて書くことを勧める。そのほうがずっと健全だからね」
時代を映し出す鏡として走り続けてきた『ザ・ボーイズ』。現実がフィクションを凌駕する不条理な世界で、彼らが最後にどのような「希望」を提示するのか、世界中のファンがその結末を固唾を呑んで見守っている。
『ザ・ボーイズ』シーズン1~5はAmazon Prime Videoで独占配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:Deadline



