
2000年代に世界中で社会現象を引き起こしたミステリー・サバイバルドラマ『LOST』。本作を製作したJ・J・エイブラムスが、同作でジェームズ“ソーヤー”フォード役を演じ大ブレイクしたジョシュ・ホロウェイと久しぶりにタッグを組んだ超話題作が、U-NEXTで独占配信中の『DUSTER/ダスター』だ。
『ウォーキング・デッド』の脚本家ラトーヤ・モーガンがエイブラムスと共に脚本を担当している本作は、1970年代のアメリカ南西部が舞台のクライムドラマ。物語は、犯罪組織のために車“ダスター”のハンドルを握り逃走するドライバー、ジム(ジョシュ)と、彼の組織を壊滅させようと執念を燃やすアメリカ初の黒人女性捜査官ニーナ(レイチェル・ヒルソン『THIS IS US/ディス・イズ・アス』)との複雑な関係を中心に描かれる。
今回、そんな主演の二人に本作の魅力についてインタビューを行った。
ジョシュ・ホロウェイとレイチェル・ヒルソンにインタビュー
――まずはお二人の演じる役柄について、そしてそれぞれキャラクターのどのような部分がお好きかも教えてください。
レイチェル:私の演じるニーナ・ヘイズは、クワンティコ(FBIアカデミー)を卒業したばかりの新米捜査官です。アリゾナ州のフェニックスに赴任してくるのですが、そこで彼女は、自分の父親を殺したであろう人物を捕まえようとします。彼女には悪質な部分もありますが、とても強くてまっすぐで頑固です。父親を失ったせいもありますが、まだまだ未熟な部分が多いですが、とても賢い人です。
私としては、ニーナのウィットに富んだところが好きです。その個性のおかげでいろいろと捜査が広がる部分もありますし、逆にトラブルに巻き込まれることもあります。
ジョシュ:1972年のマフィアのフィクサーで、ヤバいことを始末してるのがジム。もうその設定だけで楽しいキャラクターだよね(笑)ジムは昔から一緒に育ったマフィアファミリーのために危ない仕事をしているけれど、とても幸せな毎日を過ごしていたんだ。このニーナが現れるまではね(笑)そして自分が働いてるマフィアファミリーに疑問を持ち始めたせいで、その生活が一変するんだ。
ジムの好きなところは、成長しようとしているところ。ニーナのせいでいろいろな疑念が湧き、その答えを知りたくないと思いつつもニーナと知り合ったことで今までの殻から抜け出さないといけなくなる。ただ、その真実に迫ることで今度は自分の娘と一緒に暮らせない可能性が出てくるんだ。こういう状況に追い込まれることで、ジムの感情が表に出てくるのがいいと思う。ジムは真実を知りたくないから気が進まないと思いつつも、真実に向かって進んでいこうとする、そういう成長を演じられるのが楽しいよ。
――ジョシュに質問です。今回の役は『LOST』のソーヤーを超えるあなたの代表作になると思いますか。プロデューサーのJ・J・エイブラムスから「ジムをやってくれ」と言われて連絡を受けた時にそういうことは頭によぎりましたか。
ジョシュ:ワオ! どうだろう。まあジムという役は100パーセントの自信を持って演じられると言い切れるし、実際そう演じ切ったよ。アイコンのようなキャラクターになるかと言われると、まあ、そうなるといいなとは思う。わからないけどね(笑)ソーヤーの時だってそういうことを考えたことはなかったし。でも、(『LOST』のジャック役)マシュー・フォックスのようにたくさん泣いたりする感情の激しい、そして重荷を背負ったキャラクターでもなかったからね。マシューは大変だったと思うよ! ソーヤーは、ささっと現れてちょっと台詞を言って去っていくという感じのキャラクターだったからね。だからソーヤーはそういう意味ではとても楽しかった。ただ当時、ソーヤーがアイコン的なキャラクターとは思ったことはなかったよ。
今回違うと思うのは、ジムではなく、この作品自体がアイコンだということだね。キャラクター全員がアイコンだと感じるんだよ。だから、本作はアイコンと言えるキャラクターをたくさん乗せて走っている車、ダスターというイメージだね。
――ジョシュに質問です。プロデューサーのJ・J・エイブラムスから、あなたをジム役に想定して作ったドラマだと連絡を受けたときどう思いましたか。また、カーチェイスのシーンもスタントではなくかなりご自身でされていると聞きましたが、その撮影についても教えてください。
ジョシュ:まず、どんな役だとしてもJ・J・エイブラムスから連絡を受けるというのはとても光栄なことだね。彼のことはアーティストとしても人間としてもとても尊敬しているから。だから「ジョシュのためにこういう役を考えているけれど」と言われた時は、もちろん笑顔になったよ。
彼から「電話ボックスと車のカーチェイスと…」とあるシーンのことを説明された時は、役者としていろいろ想像した。「かっこよく登場するんだな、でもジムは急いでるときでも走ったりしない、大人の余裕を持つ男のはず…」とかね(笑)役者としては、演じる前にその役のことを知る必要がある。カウボーイなら馬に乗れるはずだし、狙撃手なら銃を扱えるべきだし、運転手なら運転できないといけない。ロシア語を話す役なら…まあ、私には連絡しないでほしい(笑)
レイチェル:あはは!
ジョシュ:爆笑
だから、リック・シーマン(ハリウッドにおけるカースタントの第一人者)のドライビング・スクールに通ったんだ。グループでの講習をね。そこであのレジェンドからいろいろ車のことを学んだ。そして“スモーキー”クリス・ピーターソンという車のスタント専門家が自分のプライベート講師としてついてくれて、5日間集中コースでみっちり指導してくれた。車のチューニングに関するあらゆる情報もね。撮影している時もいてくれて、私が運転した後、ビンテージの“ダスター”が動かなくなって、死ぬほど焦った時にも、スモーキーがチューニングして直してくれたんだ。
そういうトレーニングを受けたおかげで、運転技術に関しても、「自分の運転は正確だ」と思えたし、ドライバーのジムという役にも自信を持って演じられた。とは言っても、この車はやはり1972年のもの。マスターシリンダーがダメになったり、やはり壊れるんだよ。だから、ブレーキが効かなくなってスタッフとかに突っ込んで事故にならないかとかそういう心配はしていた。
そこで登場したのはテクノロジーだ。ダスターをリモコンでコントロールできるようにもしたんだ。私が事故を起こさないようにね。今のところ皆無事で(笑)カーアクションのスタントもかなりやらせてもらっている。他の車を運転するスタントチームも素晴らしいよ。本当に彼らのことを尊敬している。
――本作は1970年を舞台にしていますが、演じている間は過去に戻った気分を楽しんでいますか。
レイチェル:とっても! この役が決まった時、70年代を過ごした母に質問したんです。「今とあの頃、どっちがいいと思う?」と。そしたら「あの頃はいろいろなことが進歩して前に進んでいるようだった」と言われたんです。なので、そういう先を見て進んでいた時代にタイムトリップしたような気分になれるのは楽しかったです。それにファッションや音楽も!かっこいいし、電話もない時代だから、目と目を見て話しますしね。
ジョシュ:その通りだね。未来に向かって軌道を描いている時代だね。ファッションやヘアスタイルも、個性があって皆自分を出していた。あの頃はベトナム戦争もあって市民権運動などでも皆が声をあげていた。政治に関心のある人たちも多いし、音楽もいろんなものがあって、ドラッグも蔓延してきていた。だからとても興味深い時代だったと思う。
ーーじゃあ“カット!”と言われたら、現実の今の世界に戻ってちょっと残念な気分になりましたね。
レイチェル:そうですね。あ、でも一つだけ! あの車のハンドルがパワステじゃないので、あれだけは“今の時代でよかった!”と思いました。
ジョシュ:(笑)そうだよ、あのハンドル! でも、レイチェルはちゃんと運転できてたよ! でもあれは本当にものすごく重いよね。
――レイチェルに質問です。ニーナはアメリカ初の黒人女性FBI捜査官という役どころですが、現実社会では1976年にシルヴィア・マシスが同じように黒人女性の捜査官になっていますね。彼女のことは知っていましたか。またリサーチしましたか。
レイチェル:この役が決まる前から元々、シルヴィアのことは知っていました。当時は白人の女性捜査官は存在したのですが、黒人女性はシルヴィアの前まではいなかったのです。ただ残念なことに、シルヴィアは交通事故で亡くなったので捜査官としてのキャリアは長くなかったですが。役作りのために、1980年代に黒人女性捜査官として活躍していたジェリー・ウィリアムズに色々なことを教えてもらいました。当時の彼女たちのような捜査官には厳しい状況だったことなどを聞ききました。今もまだ厳しいかもしれませんが。ですので、ニーナというキャラクターが、シルヴィアやジェリーのような当時の黒人女性捜査官の功績を称えることができるといいなと思っています。
――“逃走を手伝うドライバー”というのは面白い設定の役だと思いますが、どういうタイプの人間がこのような職業に就くと思いますか。
ジョシュ:面白い質問だね。まず大前提としてあるのは、ジムは運転に長けているということ。マフィアの中で育った彼は、ドライバーでもあるけれど、もっというと(面倒な問題をもみ消す)フィクサーだということだね。やらないといけないことはなんでもやる。その解決方法の一つとして、逃走ドライバーになる。誰よりもすごいドライビングテクニックを持っているからね。でもマフィアとして仕事をするということは、(ドライバーでなくても)常に追われる立場で逃げ続けているということなんだ。捕まったらそれで終わり。ジムの場合は、クールですごいパワーのダスターで猛スピードで逃走するということで、常に逃げ続けているマフィアの一員という立場をさらに表現できていると思う。
――ジョッシュに質問です。『LOST』のソーヤーは償いを求める詐欺師でしたが、本作もジムも犯罪者という立場ですね。ジムも同じような道を辿っていくキャラクターになるのでしょうか。
ジョシュ:本当に!(笑)なんでこういう役ばかり自分に来るのかわからないよ(笑)この髪を切った方がいいのかな(笑)
でもこういう“光に向かっていく”キャラクターを演じるのは好きなんだ。ソーヤーは最悪の状況から灯火に進んで行った。ジムは自分自身が光のような魂を持った人間なんだけれど、マフィアの中で育ったからね。家族を大切に思うタイプだから、マフィアといえども忠誠心がすごいんだ。自分の本当の父親も大事だけれど、育ての父親であるマフィアも大切だという板挟みでもあるんだ。そういうジムの部分は気に入っているよ。あれ、質問はなんだったけ(爆笑)
レイチェル:なんでこんなカオスなキャラクターばかり演じているの?って質問のはず(笑)
ジョシュ:爆笑 楽しいよ! ダークな部分からの発見や成長というキャラクターが面白いよ!
――レイチェルに質問です。ニーナは自身の弱い部分にどう対処していきますか。
レイチェル:ニーナは弱い部分を強さに変えていると思います。でも、J・J・エイブラムスとラトーヤ・モーガンが書いた脚本のシーンで、ニーナが母親と話し、弱みを見せるところがとても気に入っています。彼女の性格がよく表現されているんです。ニーナは、家族や周りの同僚と関わることで、その弱みに対処していると思います。
――1970年のことで、撮影を通して初めて知って驚いたことはありますか。
二人:…(考える)
レイチェル:なんだろう…、思いつかないですね…。
ジョシュ:あ! 洋服がぴちぴちなこと!(笑)OMG!
レイチェル:確かに! すごくタイト!
ジョシュ:それにパンツのウエストの位置がすごく高いんだよ! 洋服に性的なものが詰まってるファッションで、あれを着ると、セクシーな気分になるんだよ。パーカーとかスウェットとか楽な格好でいる時代じゃないからね。自分を全部さらけ出して、露出もすごいし体の線も出るし。だから、あの服を着る時は、“よし! これを着て見せつけるぞ!”という気合いを入れないと、着られないんだ。
レイチェル:難しい質問ですね…。でもセリフで“かっこいい!”って気に入ったものがありました。これをいうと、子どもっぽいと思われるかもしれないけれど…。たとえば、“far out”(型破りな、斬新な)とか。大好きでした。
ジム:”far out”!あれはいいね!最高だよ!あれは!あと、”you dig?”(わかる?)とかね(笑)
レイチェル:そうそう!(笑)それも!そういう言い回しを今プライベートで使ったりして、楽しんでいます。
――ありがとうございました。
『DUSTER / ダスター』配信情報
『DUSTER / ダスター』(原題:Duster)(全8話)
【配信開始日時】2025年5月16日(金)10:00 第1話配信 以降毎週金曜週次配信
\新規登録なら31日間無料!/
(取材・翻訳/Erina Austen)
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