海外ドラマファンのみなさん、いかがお過ごしですか? こちらアメリカは、ありえないくらい経済がケチョンケチョンなおかげで、ホリデーシーズンがもうすぐだというのに何となく暗い。TVの世界でも元気なのは、副大統領候補サラ・ペイリンの真似して視聴率を取りまくっている『サタデー・ナイト・ライブ』のティナ・フェイくらいじゃないでしょうか。そういう彼女も、最も力を入れているはずのTVシットコム『30 Rock』は、相変わらず細々感を脱しきれてません...。
10月からの秋の新ドラ報告第二弾をパーッといきたいところですが、3大ネットワーク期待の新ドラマの主役たちがこれまた"地味"。
○NBC 『My Own Worst Enemy』
クリスチャン・スレーター(映画に出ていた10年前なら話は別)
○ABC 『Life on Mars』
ジェイソン・オマーラ(顔はイイのに、今までなぜか主役を取れなかった、ずっと脇男)
そして極めつけは
○CBS 『Eleventh Hour』
ルーファス・ソーウェル(誰、この人?)
ねっ、ガンクビそろえて、主役みんなが地味。地味、地味、地味...。
『Heroes』以来のヒットがほしいNBC、イチ押しがクリスレ(クリスチャン・スレーター)の『My Own Worst Enemy』でした。クリスレには、ここ何年もテレビの企画をプッシュし続けていたとかで、やっと承諾してくれたのがこの国際スパイドラマ。イメージとしては、マット・デイモンの映画『ボーン』シリーズを想像していただければ良し。クリスレが脳を操作されることによって、一般人の生活とスパイの生活を使い分けるという"2重人格"の設定。難しい役どころなのでしょうが、さすがクリスレには"2役"の演技力も十分です。オーストラリアで「史上ナンバーワンの人気番組」(NBC広報談)の米リメイク『Kath & Kim』も始まりました。バカ全開の母と娘のシットコムで、皮肉な笑いが増えてるなか、純粋おバカに笑わせてくれます。
『Life on Mars』は、CW『Privileged』、そしてFOX『Dollhouse』と並ぶ、"春のパイロット版から全く変わっちゃった3兄弟"の1つ。『Life~』は、英国ドラマ『時空刑事1973~LIFE ON MARS』のアメリカ版であることは、ご存じだと思いますが、オリジナルを超えて成長する可能性もありました(はや過去形)。当初は脚本が敏腕ライター/プロデューサーのデビッド・E・ケリーだったんです。ケリー自身がアメリカに持ってきて、脚本も書き上げていたのですが、この5月に完全降板。新しいプロデューサーは同時に主役以外のキャストを総入れ替え、ロケ地もLAからNYへ移して、パイロット版を再撮影しました。新『Life~』は、ハーヴェイ・カイテル、マイケル・インペリオーリ、グレチェン・モルと豪華キャスト(主演は相変わらず地味オマーラ)。だけど、もうケリーが脚本を書くことはないわけで、英国のオリジナル版を超えるかどうかは、これから見守っていきたいところ。
3大ネットの中で、一番多くの新ドラマを出してきたのがCBS。やはり英国のリメイクとなるドラマ『Eleventh Hour』をジェリー・ブラッカイマーがプロデュースします。本家パトリック・スチュワートの役を、アメリカ版ではソーウェルが演じています。ノーベル賞に選ばれても不思議でないくらいの頭脳を持つ科学者が、FBI捜査官と一緒に犯罪を解明していくというストーリー。その科学者をソーウェルが演じているわけですが、地味顔はさておき、かなりのはまり役。何考えているかわからない天才を演じきっています。
CBSでは、ラブコメの『The Ex-List』にも注目。『グレイズ・アナトミー』のエヴァ役エリザベス・リーザーが、もう出会っちゃってるはずの"運命の人"と再会するために、元彼巡りをする話。『CSI:』などプロセジュアル・ドラマ専門(?)のCBS視聴者には合わないのか、人気はイマイチのよう。
『The Ex-List』とは逆に、この秋の新ドラマ、一番のヒット『The Mentalist』を生み出したのもCBS。イケメンのサイモン・ベーカーが「ニセ・サイキック→インチキ認めて→警察の捜査に協力する凄い観察力のある人」を演じる犯罪ドラマです。この手のドラマに目新しさはありませんが、ベーカーを応援したくて見てしまいます、高い視聴率からして、私のような視聴者、結構いるのかもしれませんね、やっぱり主役は大事。
地味づくしの今年の新ドラマですが、何年かに1本出るか出ないかくらいの優れた作品も発見。ケーブル局FXの『Sons of Anarchy』です。バイク愛好者たちの集まりと称し、実は小さな田舎町チャーミングを違法行為で仕切る集団サム・クロウの暗躍を描きます。主演は、若手俳優のチャーリー・ハナム。過激なストーリーですが"ポスト『ザ・ソプラノズ』"の声も聞こえています。
昨冬の脚本家組合のストの影響で、今年の秋は新ドラマが減少しています。その分、来年始めからのミッドシーズンにも話題を呼びそうな新ドラマがいくつか待機しているよう。秋の新ドラマの成長と同様、これからも楽しみに待つことにしましょう。