英BBCの新ドラマ『The Woman in White(原題)』は、19世紀ビクトリア朝の人気作家ウィルキー・コリンズの代表作を原作としたサイコスリラー。幾度となく映像化されたが、全5話構成の本作は現代風のアレンジが効いた良作に仕上がっている。フラッシュフォワードなど21世紀にふさわしい編集技法を取り入れたほか、「#MeToo」に象徴される女性の権利問題も意欲的に取り込んでいる。
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◆白い衣を身にまとう謎の女
ウォルターは、ロンドンで貧しい暮らしを強いられている美術教師。ある日彼は郊外で、白い衣を身にまとった奇妙な女を目撃する。彼女の名はアン。精神病院から脱走してきた彼女が白い服しか着用しないのには、ある理由があるのだった。
のちにウォルターは、裕福な娘ローラに思いを寄せるようになるが、ローラにはサー・パーシヴァルという婚約者がいる。パーシヴァルは陰謀と策略の匂いを漂わせており、ローラとの結婚も財産を目的としている節がある。ドラマは恋愛要素も絡めつつ、原作の持つ奇妙な空気を現代に蘇らせるサイコスリラーとして展開する。
◆現代風アレンジに好感
今回のドラマ化で特筆すべきは、古典的怪奇小説のストーリーを踏襲しつつ、現代的なアレンジを加えることでブラッシュアップが図られている点だ。先の展開を挿入するフラッシュフォワードの手法が採用され、物語に弾みがついた。
具体的には葬儀シーンの先出しが挙げられる。主要キャラクターが死んでしまうショッキングなこのシーンは、原作ではかなり先に設定されているイベントだ。これを冒頭に持ってくることで、チャンネルを変えがちな現代の視聴者の興味を引く仕掛けとして成立している。
セクハラ被害を告発する運動「#MeToo」の影響も、今作の現代的な一面だ。ローラの姉であるマリアン(ジェシー・バックレイ『戦争と平和』)は、快活で勇敢な女性として描かれる。ローラの死を報らされた彼女は男性による殺害を疑い、日頃女性が弱い立場に置かれていることへの不満を爆発させる。舞台となる19世紀当時に、キュロットを穿き脚を開いて座る彼女は特異だが、見ていて心地良くもある。
◆オリヴィアが挑んだ2役に、評価は...?
配役と演技の面では、評価の良し悪しが割れている。アンとローラはオリヴィア・ヴィノール(『アップル・ツリー・ヤード 裏通りの情事』)が2役をこなすが、似た雰囲気の二人をうまく演じ分けていると評価するのは米Guardian紙だ。配役が予想外にうまくマッチしているほか、オリヴィアの演技力に加え、メイクアップの魔法も効いている。ただしアン役が実に決まっている一方で、ローラ役は今ひとつパッとしない。美術教師ウォルターがローラに惹かれる心情も今ひとつ伝わりにくくなってしまっており、この点は残念だとしている。
同じ問題は英Times紙も指摘するところだ。ローラの役柄には苦戦している様子が伺えるという。また、キャラクターとしても感傷的すぎて苛立ちを感じる上、いつもナイトガウンで画面に登場するのもいただけないとコメントしている。オリヴィアの役からは逸れるが、脇役についても型にはまった役柄の多さが気にかかったようだ。墓場で幽霊を目撃したという少年や、どもりながら警察官に状況を説明する精神病院の患者などのありきたりなシーンはいただけない。
ただし、決して悪評ばかりというわけではない。英Telegraph紙ではウォルターとローラの間などにメロドラマをふんだんに盛り込んだ点を評価している。細かな不満はあるものの、全体的としては古典作品に気の利いたアレンジを加えた良作にまとまっていると言えるだろう。(海外ドラマNAVI)
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Photo:『The Woman in White』
BBC