『MANIFEST/マニフェスト』インタビュー【5】三森すずこさん(ミカエラ・ストーン役)「リアリティもあるけど、ファンタジックでミステリーもあって面白い」

乗員乗客191人を乗せて突如消息を絶った旅客機が辿り着いた先は、5年半後の未来だった――。2018年全米新作ドラマ視聴率ナンバー1を獲得した、ヒットメイカーのロバート・ゼメキス(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ)が贈るミステリー・ヒューマンドラマ『MANIFEST/マニフェスト』が、10月15日(火)よりスーパー!ドラマTVにて日本初放送となる。

その旅客機に乗り合わせて5年半後の未来に辿り着いてしまう主人公の刑事ミカエラ・ストーンの声を担当するのは、大ヒットアニメ『ラブライブ!』の園田海未役で知られ、声優やミュージカル女優、さらに歌手として幅広く活動している三森すずこさん。同じく5年半後の未来に辿り着いてしまうミカエラの兄ベンの声を担当するのは、2018年度声優アワードで海外映画・ドラマ賞を受賞し、アニメやナレーションでも活躍する森川智之さんという、豪華声優の共演が実現した。

本作のキャスト、スタッフ、声優のインタビューをお届けする短期集中連載。第5回では、ミカエラ役を演じる三森さんを直撃! 吹き替えに臨む気持ちや本作の見どころなどを語ってもらった。

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――声優としてはアニメやゲームで演じられることが多いと思いますが、海外ドラマの吹替えで初主演を務めるとなった時はどんな心境でしたか?

インド映画の『チェンナイ・エクスプレス』と海外ドラマの『ジーニアス:ピカソ』という作品で吹替えをさせていただいたんですけど、海外ドラマはアニメに比べてしゃべる分量が多いので、私に務まるのかなという不安が大きかったですね。『ジーニアス:ピカソ』では、たまに登場する役だったので、自分が出るシーンの映像だけを何十回も見て練習していたんです(笑) でも、主役となったら出ずっぱりで、何十回も繰り返して練習するなんてできないから心配だったんです。とはいえ、任せていただけるという喜びと、海外ドラマが好きなので、その一員になれる嬉しさもありました。

――ちなみに好きな海外ドラマというのは?

『デスパレートな妻たち』にすごくハマって熱心に見ていました。男性が主人公のお話よりも女性が主人公で、女同士のぶつかり合いや、ドロドロのお話がすごく好きで、なんか見ちゃうんですよね(笑)

――海外ドラマをご覧になる時は吹替版ですか?

吹替版でも字幕版でも見ます。大学の時に英米文学科専攻だったので、英語がすごく好きなんですよ。だから英語も聴きたいけど、でも自分の仕事の勉強のために吹替で見た方がいいなと思うこともあるので、日によって変えています。

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――初めて台本を読んだり映像を見たりした時の本作の印象は?

第1話の台本をいただいた時は先の展開を知らずに読んでいたので、これはSFなのか、それともミステリーなのか、何なんだろうとワクワクして、このお話はどうやって展開していくんだろうという面白さがありました。飛行機に乗って、着いたら5年半も経過していたというお話なんですけど、飛行機って誰もが乗るから、すごくリアリティもあるし、だけどファンタジックな部分もあったりするんですよ。急に自分にだけ声が聴こえたり、天使が見えたりとか、そういう超常現象みたいなことも起きるんです。リアリティもあるけど、ファンタジックでミステリーもあって面白いなと思いました。毎回、台本をもらうと、次の展開がどうなるのか、ファンの一人として気になっちゃう感じでしたね。

――シーズン2もすでに決定していますね。

シーズン2が決まっているというのも嬉しいです。第1話の収録が始まる前にそのお知らせをいただいて、吹替キャストのみんなで喜んでいました。私自身も見ているドラマのシーズン2が決まると嬉しいので、その感覚と一緒でしたね(笑)

――吹替版は、三森さんの落ち着いた大人な声と演技が新鮮でした。ミカエラを演じるメリッサ・ロクスバーグさんの声は低めですが、演技で気をつけていることは?

メリッサさんの表情や声に合わせていくと普段よりももっと低くしなければならなかったので、低い音色というのを忘れないように演じていました。それ以外にも、ミカエラは強い女性ですが、過去の出来事や時間が経ってしまったことで傷ついてしまった弱い部分があるので、そういう女性らしい部分も出せればと思いながら演じました。

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――吹替で演じる際に感じた、アニメとの違いがあれば教えてください。

あくまでも私のイメージなんですけど、アニメでアフレコする時って、声の音色に角があるというか、音色やしゃべりの滑舌に角があって、割とシャキシャキしているイメージなんです。それに対して吹替では、ほかのキャストの方がしゃべられているのを聴いていると、すごく人間味があって、ナチュラルで角がない感じなんですよ。言葉から次の言葉へとつながる感じで、日常会話でしゃべっているような雰囲気にどこまで自分が持っていけるかというところが違うかなと思いました。

――吹替の台本はアニメに比べてト書きが少なかったり、息の演技を指示するブレスのマークがあったりといろいろな違いがありますが、戸惑いはありましたか?

アニメのアフレコをたくさん経験しているからだと思うんですけど、アニメは口パクが途切れたところで呼吸とか、画面に表示されている名前のボールドが消えた時にそこで口を閉じるというように、すごく分かりやすいんです。でも、吹替では違う言語をしゃべっている同じ人間がゆえの微妙な違和感というか、演じていて「ここのセリフの途切れ方は大丈夫?」「呼吸はここでいいのかな?」とか、セリフの尺が原音に合わずにちょっとだけ短いとか、そういう微調整が難しかったですね。最終回ぐらいまではそこがかなり難しいなと思いながら演じていました。

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――吹替だとヘッドホンやイヤホンで原音を聴きながら演じますが、その点は大丈夫でしたか?

それは『マイリトルポニー』という海外アニメシリーズの吹替を長期にわたって務めていたので大丈夫でした。でも、聴こえてくる呼吸や息づかいも吹き替えるのは難しいですね。女優さんはここでこういう息をしようと思って演じているわけではないじゃないですか。演じていて自然とその息づかいになったというだけで、そこに「さあ声を当てるぞ」という意識で吹き替えると、すごくぎこちなくなってしまうんですよね。私もミカエラを演じているメリッサだと思ってやるしかないみたいなところはありました。

――もし、ミカエラのように自分以外は5年半の年月が経ってしまったらどうされますか? 例えば、後輩だった声優が先輩になっていたりとか(笑)

新人だった後輩が5年後にすごく売れていて、フォロワー数100万人超えの声優になっていたみたいな(笑) どうしよう(笑) ただ、仕事であれば「また巻き返してやる!」みたいにいくらでも頑張りようがあるとは思います。それに比べてプライベートだと、どうなっているか分からないという恐ろしさもありますよね。ミカエラは結婚しようと思っていた恋人が5年半後に親友と結婚していたというかなり特殊な状況に置かれていますが、そういうのを急に目の前に突きつけられたら、どうなっちゃうんだろうと思います。

――昼メロ的な展開もあって面白いですね。

そうなんですよ。ストーリーはミステリーもあり、ヒューマンドラマもありと、バランスがすごく良くておいしい作品です(笑)

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――ミカエラの兄ベンの声を務める森川さんとの共演はいかがでしたか?

実は森川さんと共演するのは初めてなんです。森川さんはお忙しくて別録りも多かったですし、大先輩なので緊張しちゃってそんなに気軽に話しかけられませんでした。収録の打ち上げでやっとお話しできたんですけど、その時に森川さんが「ヘッドホンをして、台本を持って、声を当てているこの時間が一番好きなんだ」とおっしゃられていたんです。そのお話を聞いて、今まで数多くのお仕事をされてきても、なお楽しみながら毎回お仕事をされているということは本当に素晴らしいことですし、私も何十年か経って、この仕事を続けている時に同じ気持ちでありたいなと思いました。

――収録現場の雰囲気は?

前半は休憩中もずっと映像を見ながら確認していて、みなさんとあんまり話す余裕がなかったですね。でも先輩から、自分の思ったようにやっていいというようなアドバイスをいただいたんです。演じているうちにミカエラがどういう性格で、どういう口調でしゃべるのかが自分の中でも分かってくるだろうから、ミカエラはこういうしゃべり方だと決めつけるのではなく、ミカエラに対する考えを持ちながらも、もっとフリーダムに幅を持って自由にやっていいということですね。みんなからも「ミカエラの声とか顔とか、三森さんに合っているから、怖がらないで自由にやった方がいいよ」みたいに言われました。それで、ちょっと気持ちが楽になりました。ただ慣れたのは最終話ぐらいで、自分の中で「来週からイケそう!」と思ったらもう終わりで、「シーズン2はいつからですか? 忘れちゃう! また初めからだ~」みたいな感じになっていました(笑)

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――作品の見どころや、印象に残っているシーンを教えてください。

見どころは毎話いろいろあります。特に、ミカエラは聴こえてくる呼びかけに従って、刑事として行動していくんですけど、正義感が強いから、どんどん突っ込んでいくその姿はカッコイイですね。だけど、私生活のことになると、すごくつらくて気苦労も多いんです。自分の運転で親友が亡くなったりとか、元恋人のジャレッドが自分のまた別の親友と結婚していたりとか、お兄さん夫婦がうまくいかなくなっていたりとか。そういうミカエラの応援したくなる部分を見てほしいですし、ミカエラとジャレッドの関係性にも注目してほしいですね。

――驚きの展開が目白押しの作品ですが、注目キャラクターがいれば教えてください。

毎回、波乱があって事件も人間関係もいろいろあるんですが、注目してほしいのはジャレッドと、ベンの妻のグレースかな。二人はすごく人間らしくて、その時の状況や置かれている立場によってどんどん変わっていくんです。それが見ていて本当に面白いですね。グレースはすごく共感もできるし、かわいそうと思っちゃう瞬間もありつつ、逆に「あんた、それはやりすぎじゃないの?」みたいに思っちゃうタイミングもあるんです(笑)

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――吹替演出家の方は映像チェックなどで先のエピソードまで確認されていることが多いのですが、本作では先の展開を教えてもらいましたか?

毎回、教えてくれるような、くれないようなという含みを持たせた感じでした(笑) だから、台本をもらうと「そういうことか!」と分かったり、みんなで「え!? あの人が死ぬの?」とかいろいろザワザワしちゃって、面白かったです。

――最後に、番組を楽しみにされている方へメッセージをお願いいたします。

本当にすべてが見どころなぐらい、見どころがたくさん詰まっている作品です。登場人物もいろんな感情を持った人たちで、すごく感情移入しちゃうし、しかも毎回いろいろと不思議な出来事が起きて、次の回が気になってしまうと思います。毎週、演じている私たちも次の話が楽しみでした。ミステリーとヒューマンドラマのバランスが良い作品なので、ぜひハラハラドキドキしながら、毎回楽しんでもらえたらと思います。

(取材・文・写真/豹坂@櫻井宏充)

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『MANIFEST/マニフェスト』はスーパー!ドラマTVにて10月15日(火)22:00より独占日本初放送。
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Photo:三森すずこさん『MANIFEST/マニフェスト』© Warner Bros. Entertainment Inc. ヘアメイク:小野寺里紗(AICON)