『ポルダーク』エイダン・ターナー主演ドラマがコロナ禍のイタリアで撮影できた理由とは?

英ドラマ『風の勇士 ポルダーク』の主演で知られるエイダン・ターナーが、レオナルド・ダ・ヴィンチを演じる新作ドラマ『Leonardo(原題)』。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により世界各地で映画やドラマの製作が中断され、現在も第二波が起きつつあることなどから撮影再開が難航する中、全8話の本作はなんと新型ウイルスが猛威を振るっていたイタリアで撮影することができた。米Deadlineのインタビューで、本作を手掛けたイタリアの製作会社、Lux Videのルカ・ベルナベイCEOが、新型コロナウイルスの第一波が去った後に、自国で『Leonardo』を含む5本の番組をスムーズに撮影できた秘密を語っている。

1月に初の感染者が確認され、2月の後半には爆発的に感染者が増えるとともに多数の死者を出していたイタリア。ヨーロッパ主要国として最初に甚大な被害に見舞われ、これまでに3万50000人以上が命を落とした同国で撮影することができたのは、ウイルスが蔓延し始めた時にイタリアがただちにロックダウンを開始し、経済的に余裕がない人々に無料で医療を提供したことにあるとベルナベイは説明する。「イタリア人は基本的に規律が好きではないが、今回はおとなしく家にこもっていたからね」

製作チームは、3月9日に『Leonardo』の製作を一旦中断せねばならず、その時点でまだ撮影は9週間分も残っていたという。しかし、Lux Videは組合と問題の解決に向けて団結して取り組み、閉鎖から3ヵ月も経たない6月8日に撮影を再開。現場では医師が常駐、セットに入る人間を制限した上で、全員が厳しい規制に従ってマスクを着用し、病院や空港などで使われる消毒マシーンを導入。ベルナベイは、撮影セットを出入りする全員が消毒マシーンを通り抜けて衣類や靴を消毒し、こまめに体温を測り、撮影後は小道具などすべてを紫外線で消毒したと明かす。

また、被害が大きかったミラノでの撮影を止めてローマに変更する対策も採られたほか、起用するエキストラは40人以下に留めて、なるべく同じ顔触れを使用。風景が違ったり人数が足りないことによる問題は適宜CGIを使って対処したという。さらにキャストとスタッフは定期的にスワブ検査を行い、新型コロナウイルスに感染していないかを調べるために抗体検査も実施。こうした工夫によって「少なくとも2600万ユーロ(約33億円)の予算のうち15%が消えた」ほど費用はかさんだものの、おかげで「セットで陽性反応が出た人は皆無」で、『Leonardo』の撮影を無事に終わらせることができたそうだ。

なおベルナベイによれば、主演のエイダンは撮影中ローマに滞在していたが、朝は誰よりも最初にセットに入り、夜は出歩いたりせず家で過ごすという「修道士のような生活を送っていた」とのこと。共演のフレディ・ハイモア(『グッド・ドクター 名医の条件』)も似たような生活を送っていたという。

ベルナベイはこれから製作を行うほかの現場に向けて、以下のようなアドバイスを送っている。「組合と団結し、規制に従うことがとても重要だ。そして自分たちのスタジオがあればかなり助かるね。借り物でなければ、自分たちでコントロールし、すべてをチェックすることができるから。そしてプロデューサーは賢く考えながらも、スタッフのことをちゃんと気遣わないといけない」

『Leonardo』はルネッサンス時代の天才を新しい視点で描き、ダ・ヴィンチが芸術だけでなく様々な分野で成し遂げた偉業を中心に物語が綴られる。年内にパイロットが製作され、来年にはきちんとお披露目できるようだ。(海外ドラマNAVI)

Photo:

『Leonardo』撮影現場(DeadlineのTwitterより)