『ゲーム・オブ・スローンズ』パイロット版の現場はカオスだった!?製作秘話が明らかに

エミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞し、世界中で大ヒットした米HBOのファンタジー大河ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』。しかし、そのそもそものパイロット版の製作はカオス状態だった模様で、キャストとスタッフが製作秘話を明かしている。米Entertainment Weeklyが報じた。

『ゲーム・オブ・スローンズ』の全シーズンにわたる製作秘話が初めて綴られた書籍「Fire Cannot Kill a Dragon: Game of Thrones and the Untold Story of the Epic Series(原題)」が10月6日(火)に出版される。その中でキャストとスタッフが混乱状態と化していたパイロット版についても語っているという。

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実はHBOで2011年に放送されたシーズン1第1話は撮影し直されたバージョンで、その前に2009年に製作されたパイロット版が存在している。当時を振り返ったジェイミー・ラニスター役のニコライ・コスター=ワルドーは、「自分たちが何をしているのか、このドラマが何なのか誰も分かっていなかった。ロバート王の到着の間に、すべてがバカバカしいと思ったのを覚えてる」と語り、下手をしたら単なるコスプレ的な作品になる可能性もあり、このシリーズが俳優人生を変える作品になるとはその時は誰も思っていなかったが、撮影自体は楽しかったと明かす。

そしてロバート・バラシオン役のマーク・アディは、「我々は新しい世界における法と秩序を確立しようとしていた。しかしパイロット版でのウィンターフェル城の中庭のシーンでは、王が到着した時に誰もひざまずかなかった。"権力にあふれた私を見てくれ"と誇示して王を演じることはできない。周りが服従の姿勢を示すことによって初めて、演じる俳優を王に見せることができるからだ。再撮影では、みんながひざまずいたので、誰がリーダーであるかを示す上で大きな違いがあった」と述べ、放送されなかった幻のパイロット版ではきちんと演出がなされていなかったと回想していた。

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ロバート王の妻サーセイ・ラニスター役のレナ・ヘディは、「(オリジナルの)パイロット版における私はベガスのショーガールみたいだったわ。毛皮を身に着けていて巨大なヘアスタイルで、まるで中世のドリー・パートンだったの。これは文句を言ってるわけじゃなくて気に入ってたの。でも再撮影では髪の毛が縮んじゃったのよ」と、サーセイの外見がまったく異なっていたと証言する。なお、サーセイの長男ジョフリーも当初は微妙に髪型が異なり、ヘンリー5世のようなマッシュルームカットだったが、撮り直しではジョフリーがより性悪に見えるような髪型に修正したとのこと。

また、パイロット版でクリエイターの一人であるデヴィッド・ベニオフのアシスタントを務め、のちに脚本・製作総指揮を担当するようになったブライアン・コグマンは、スターク家の兄弟が大狼(ダイアウルフ)を見つけるシーンを撮影した時のことに言及。非常に珍しい大狼を発見するシーンなのに、誰もそう思っていないように見えたため、コグマンは「これは大狼です! ここ百万年ほど誰も大狼を見ていません! 恐竜を目にするようなものなんです! 子犬を見つけたのではありません!」と、現場を駆け回りながら大声で説明したら、みんなに笑われたと振り返る。

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クリエイターを務めたベニオフとD・B・ワイスは、本作が初めて指揮を執ったドラマシリーズのため経験不足だったとのことで、ベニオフが「最初にうまくいってると思ったのは、僕らが何も分かっていなかったからだ」と打ち明けると、ワイスも「撮影が進めば進むほど亀裂がより大きくなり、深い裂け目に変わっていった。(ロケ地の)モロッコに到達するまでに車輪が外れるのを感じ始めていた」と振り返る。

パイロット版の撮影のためにモロッコへ飛び、デナーリス・ターガリエンとカール・ドロゴの結婚式のシーンにカメオ出演したと語るのは、原作者のジョージ・R・R・マーティン。付けヒゲと巨大な帽子を被ったペントスの貴族を演じ、「バカみたいに見えたが楽しかった」と語っている。

なお、その結婚式はもともと夜間に撮影されたが、これも失敗の一つだったという。デナーリスがドロゴから贈られた馬に乗って走るシーンを夜間になんとか撮ろうとして様々な方法が採られるもどれもうまくいかなかったりと苦労したようだ。ジョラー・モーモント役のイアン・グレンは、「誰も確信を持っていなかった。結婚式が夜に撮影され、バカみたいな情景を撮るために大金が費やされた。HBOの一部の重役は"なんではるばるモロッコまで行って撮影したんだ? これならそこらの駐車場で撮れただろう!"と言っていたよ」と振り返る。

そしてデナーリスの兄ヴィセーリス・ターガリエン役のハリー・ロイドは、パイロット版ではチタンのような銀髪で、より短いボブくらいの長さのカツラを着用して違和感を覚えたという。「"僕はドラコ・マルフォイ(『ハリー・ポッター』のキャラクター)でもレゴラス(『ロード・オブ・ザ・リング』のキャラクター)でもない...。どうすればいいんだ?"という感じだった」と述べているように、放送されなかったパイロット版は様々な点で混乱をきたしていたようだ。

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ベニオフとワイスが、紆余曲折を経てなんとか仕上げたパイロット版のラフカットを家族や友人に見せたところ、彼らは遠慮して何も言ったりはしなかったものの、その表情を見ると退屈しているのは明らかだったという。

その後、何がうまくいかず、どう修正すべきかをきちんとリスト化した上で撮り直した第1話では、デナーリスがタムジン・マーチャント(『THE TUDORS ~背徳の王冠~』)からエミリア・クラークへ配役し直されるなど、いくつかの点で改善したことが奏功し、無事にシリーズ化が決定。社会現象を巻き起こすほどの人気シリーズとなった『ゲーム・オブ・スローンズ』は、2019年5月に第八章をもって終了。現在は、スピンオフとなる前日譚ドラマ『House of the Dragon(原題)』の製作が進行している。(海外ドラマNAVI)

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