ギレルモ・デル・トロがアニメ愛を語る「世界にクソくらえと言い続けることをやめないで」

毎年6月にフランスで開催されるアニメーションの祭典、アヌシー国際アニメーション映画祭。そこで行われたトークイベントに登壇したギレルモ・デル・トロ監督がアニメに魅了され続けてきた人生について話したと、米Deadlineが伝えている。

実写でキャリア初期を築くも、初心に戻る

2017年の映画『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞し、最近ではアニメーション映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』でもアカデミー賞の長編アニメーション映画賞に輝いたデル・トロ。そんな彼は、そもそも父親が持っていたスーパー8mmフィルムを使って作品作りに興味を持ち始めたという。当初はアニメーションをメインに仕事をするつもりでいたが、次第に実写に魅了され、1992年に吸血鬼をテーマにしたホラー映画『クロノス』で長編監督デビューを果たすと、2000年代に入って『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』でブレイクしたと、自身のキャリアを振り返った。

「違う人生計画を立てていたので、ドリームワークスと一緒に仕事をして『長ぐつをはいたネコ』や『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』といった作品に関わるまではアニメーションの世界に戻ってきませんでした」と話すデル・トロ。しかしそうして2010年代からアニメーションの現場に携わるようになった彼は、『トロールハンターズ』や『アルカディア物語』にクリエイターとして参加。そしてストップモーションの技術を使って『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』を制作した。

「僕の意見では、ストップモーションはその親密さゆえにアニメーションの中でも最も美しいものだと思います。アニメーターとフィジカルモデルの間にはいつだって強い繋がりがあるんです。これはおもちゃを使って遊ぶ体験にとても近いです。僕は『Famous Monsters』のコミックを読んで育ちました。すべてのモデルが欲しかったし、今でも欲しいです。映画を制作した後はそれで使ったパペットをとっておくんです。すべて保存していますよ」と今も変わらぬアニメ愛を明かしている。

「完璧なものはマジで大嫌いです」とデル・トロは続ける。「ハンドメイドに見えるものを愛しています。だから僕の映画ではデジタル効果をなるべく使わないようにして、実際のセットを用意します。その実在感がたまらないんです。ストップモーションはハンドメイド。手で作られる映画。もしストップモーション映画でイスが必要であれば作らなければいけないし、花が必要であれば作らないといけないんです」と、一つひとつ手間がかかるからこその魅力を熱弁。

そんな彼は、将来を担う若手クリエイターたちに、何か功績を残したいと思うのであれば自身の内なる野獣に向き合うことが大切であるとアドバイスしている。「アニメーションは飼い慣らされない精神のためのもの。アニメーションは子どもの頃に目にしたように、世界に対してクソくらえと言っています。世界にクソくらえと言い続けることをやめないで。倒れるまで言い続けて。それがモンスターにとって大切なこと。僕がモンスターを愛しているのは、その精神を彼らが肉体的に表現しているから。怪物たちはあるべきでないものとされるけれど、彼ら独自の美と不完全さを持っていて、それを育てることがすごく大事なことなんです」と、自身の作風に欠かせない怪物への熱い思いも交えてアニメーション愛を語った。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Deadline