ジャック・カーによる同名のベストセラー小説を映像化した『ターミナル・リスト』は、米海軍特殊部隊Navy SEALsの隊長であるジェームズ・リースが、ある陰謀に巻き込まれ、仲間や家族を失ってしまったことから、復讐に駆り立てられるストーリーが展開される。映画『トレーニング デイ』(2001)や『イコライザー』(2014)といった骨太作品を多く世に送り出してきたアントワーン・フークアが監督・製作総指揮に名を連ね、主演にクリス・プラットを迎えた全8話のドラマシリーズだ。
『ターミナル・リスト』は、ジェームズ・リース率いるNavy SEALsの小隊が、ある極秘任務を遂行中、敵に待ち伏せされていたことで、ほぼ壊滅状態に追い込まれてしまう場面から幕を開ける。仲間を全員失い、ただ一人生き残る形となってしまったリースは、帰国後、情報の漏洩があったのではないかと上層部に訴えかけるが、すべての証拠はリースの見解と異なるもので、彼の妄想に過ぎないということを証明していた。
仲間の死を無駄にできないリースは真実を解明しようと躍起になるが、さらなる悲劇が彼を襲うことに。何者かにより、愛する妻と娘を惨殺されてしまったのだ。一体誰がこんなことを…、リースは関係者の名前を“リスト”にし、復讐を果たす決意を固めるのだった…。
『ターミナル・リスト』は、まるで約8時間の映画
全体的なトーンとしてはかなりシリアスで暗めな本作は、まるで約8時間の映画を観ているかのように、起承転結がハッキリとしたストーリーラインを辿っていく。そのため、ややスロースターターな印象を受け、第1話、第2話というのは、ほとんどジェームズ・リースという男のバックグラウンドや置かれている立場を明確にすることに終始している。そして、第3話から物語が本格的に軌道に乗り始めていくというわけだ。
本作の面白さに気がつくまでには、若干の時間を要するかもしれない。けれども、一度本作の魅力にハマってしまえば、後戻りはできないほどの面白さがある。製作総指揮にアントワーン・フークアが名を連ねていることにより、その男臭い演出の数々やキャラクターの心情を切り取っているかのような顔面にフォーカスしたカメラワークなど、非常に映画的な構図が目を引く。
記憶が曖昧な主人公が復讐にアイデンティティを見出し奔走していく様は、さながらマット・デイモン主演の映画『ジェイソン・ボーン』シリーズを彷彿させ、山中を舞台とした第6話は、ほぼほぼシルヴェスター・スタローン主演の名作『ランボー』を観ているかのようで、FBIとの壮絶な追いかけっこをまるまる1時間にわたって映し出す圧巻のエピソードとなっている。
また、軍人の役柄が良く似合う、まさにアメリカン・ヒーローの代名詞的存在となりつつあるクリス・プラットの説得力ある演技も功を奏していると言えるだろう。自宅のテレビの前でカッコいい演出やアクションに気を取られていると、終盤になっていくにつれて、物語が何やら不穏な空気を帯び始める。ジェームズ・リースが大きな陰謀の渦中にあることが明らかになり、単なる復讐劇だけでは終わらない社会性に富んだ内容へと変貌を遂げていくのだ。
戦争ドラマからアクションドラマ、そして最終的には社会派ドラマへと変遷を辿っていき、最終的な着地点は誰も予想できないものとなっている。視聴者は、このジェームズ・リースの旅路を追いかける過程で、大きな感情の揺さぶりを体感することだろう。愛する家族の幻影を追いかけ続け、復讐を繰り返していくリースに果たして安息の地はあるのだろうか…と。
『ターミナル・リスト』は、Amazon Prime Videoにて配信中。
(文/Zash)
Photo:『ターミナル・リスト』©Amazon Studios