男女の視点から"二部構成"で語られる大人対象の不倫ドラマ『アフェア ～情事の行方～』の魅力！

『アフェア ～情事の行方～』は、男女それぞれが異なる視点から自分の人生を考察する大人向けの恋愛ドラマだ。

本国アメリカでシーズン1が放送されてすぐ話題になり、その後、第72回ゴールデン・グローブ賞で、ドラマ部門作品賞と主演女優賞（ルース・ウィルソン）の二冠に輝き、主演男優賞（ドミニク・ウェスト）もノミネートされたことで、さらに大きく注目された作品である。

『アフェア ～情事の行方～』を単なるありがちな不倫ドラマと甘く見てはいけない。予想を超えるストーリー展開、"二部構成"という斬新な切り口で男女それぞれの視点から進行していく衝撃的なエピソードの連続に、視聴者はドンドン惹き込まれてしまう。

このドラマは二組の夫婦とその家族を中心に描かれていく。

ドミニクが演じるノア・ソロウェイは高校教師。小説家として一本立ちしたい夢を持ちつつも、1冊出版しただけでスランプに陥り、なかなか2冊めにペンが進まない。妻ヘレン（モーラ・ティアニー）は家庭雑貨店のオーナー。ニューヨーク・ブルックリンに暮らす彼らには男女4人の子どもたちがいる。夫婦仲は悪くないが、育ち盛りの子どもたち中心の生活になり、残念なことにあまりロマンチックな関係とは言えない。

ヘレンの両親はニューヨーク州の海辺の避暑地モントークに大邸宅を所有する富豪。長い休暇にはノアの一家は義両親の豪邸に滞在することも多い。何事にも口を出して、ノアを見下す義両親とノアの関係はあまり良くない。しかし子どもたち4人が通う私立学校の授業料や自分たちの家のローンまで義両親に経済援助をしてもらっていることで、ノアは彼らになかなか強気の態度を見せられず、一家の主としてのプライドも傷付き、ストレスが溜まっている。

一方、ルースが演じるアリソン・ロックハートはモントークに暮らしながら、ファミリー・ダイナーでウェイトレスをしている。夫コール（ジョシュア・ジャクソン）は4人兄弟で牧場を共同経営しているが、経営状態は良いとはいえない。2年前に不慮の事故で幼い息子を亡くしたことから、お互いを尊重しつつも、どこかぎこちない夫婦関係になってしまっている。

そんな現在の生活にそれぞれ"何か満たされない孤独感"を感じているノアとアリソンが、彼女が働くダイナーで知り合ったことから、磁石のように引き寄せられて、越えてはいけない一線を越えてしまい、禁じられた男女の関係に陥っていくストーリーだ。

ここで、『アフェア ～情事の行方～』が既存の不倫ドラマと大きく異なる点を紹介しよう！　ドラマ1時間の中で前半30分はノア編、後半30分はアリソン編に分かれていて、それぞれの日常生活が描かれているが、二人別々に、ノアの視点から、アリソンの視点から"二部構成"のようなストーリーで語られていくのだ。例えば、二人が出会ってお互いを意識していくキッカケについて、ノア編ではアリソンの方からノアを誘惑しているように描かれているが、アリソン編ではノアの方が積極的にアリソンを誘惑しているように描かれている。つまり、ノアとアリソンそれぞれの自分の頭に描く勝手な見解や相手に対する印象を含みつつ、登場人物は皆、毎回ノア編とアリソン編で、似たようなシチュエーションでありながらも詳細が違うシーンをそれぞれ2回演じているのだが、これまたセリフも行動も服装さえも違うのだ。ノアから見る出来事の印象、アリソンから見る出来事の印象もことごとく異なり、同じ物事に関するそれぞれの解釈も違う。このドラマを観ていると、男性視聴者は「女性からの見方では男性のその行動はそういう印象を与えるのか～」と考えさせられ、女性視聴者は「なるほど！　男性から見る女性観ってこんな感じになるのか～」と考えさせられる。そして「でもどちらが本当のことを言っているの？　どちらの視点が真実！？」と不思議な感覚に陥って、この新しいタイプの特殊な二部構成ドラマから眼が離せなくなってハマってしまうこと確実なのである。

そして、テーマは恋愛情事だけではなく、ノアの義両親のような上流家庭の生活、アリソンの家族のような中流より少し下のクラスの家庭の生活とは一体どんな感じなのか？　それぞれの財政状況や生活の実態、夫婦関係、両親または義家族との複雑な関係から生じる悩み事、子どもたちの素行問題なども深く描かれていく。

さらに、ノアとアリソンの情事と平行して、警察の捜査が介入する"ある事件"も描かれる。その"事件"に、ノアとアリソンも絡んでいることで、彼らが別々に警察に事情聴取を受けて、回想録のように"二人が知り合った日から過去を振り返って現在に至る"ストーリーが、ノア編でもアリソン編でもエピソードごとに語られていくのだ。

ノアとアリソンの不倫関係はどんな展開を迎えるのか？　彼らの不倫を知ったノアの妻、アリソンの夫、それぞれの家族はどんな行動に出るのか？　警察が捜査する事件とは何なのか？　サスペンス要素もあるラブ・ストーリー『アフェア ～情事の行方～』は、二部構成という非常にユニークな手法で描かれた情緒豊かな大人の世界に浸れるドラマである。