アカデミー賞8度受賞のレジェンド、アラン・メンケン(『美女と野獣』)直撃インタビュー

アカデミー賞作品賞にもノミネートされた名作アニメーションをディズニー自ら完全実写化した『美女と野獣』が、いよいよ4月21日(金)より大ヒット公開中。そのアニメーション映画、ブロードウェイ版に続いて、三度その世界を音楽で表現した作曲家アラン・メンケンを直撃! 20年以上にわたって数多くのディズニー作品に関わり、耳なじみの良い旋律でその世界観を表現してきた、アカデミー賞8度受賞のレジェンドに、音楽やディズニーの魅力について語ってもらった。

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――何度も来日されていますが、その際に絶対行くという場所はおありですか?

日本に来るのはこれで12回目か13回目なんだ。最初が『リトル・マーメイド』の初演の時なので1989年かな? 今回は残念ながら時間がないけど、よく箱根の旅館、強羅花壇に足を伸ばすよ。すごく美しくて、違う時代にいる気分にさせてくれる、特別な場所なんだ。

――今回、26年前のアニメーション作品を実写化するにあたって、どんな風に音楽に手を加えられたのですか?

何かを意識していたわけではなく、むしろ何かを発見する作業になったよ。まずはスタジオ側から実写版のリメイクを作りたいと聞き、ビル・コンドンが監督に決まった数年前から、彼がどんな作品を作りたいのかについて話し合ってきた。18世紀のフランスが舞台なので、その雰囲気や音楽性をより濃密に出していこうと話したよ。

――実写版のために書き下ろされた新曲が3曲ありますが、採用された以外にも作った曲はあったのですか?

アニメーション、舞台の時に作った曲も含めるなら、数えきれないくらいね(笑) 舞台版などで登場したチップの歌「Human Again」、野獣の心情を歌った「If I Can"t Love Her」といったものもあるけれど、今回は入らなかったんだ。

――この『美女と野獣』という題材のために本当にたくさんの曲を書かれたんですね。

確かにたくさん作ってきたけれど、それぞれの曲に対してはあまり思い入れないようにしているんだ。そのプロジェクトのために曲がうまくハマって、監督や観客が気に入ってくれたら嬉しい限りだけど、一旦書き終えた曲はもう自分の手を離れたものだと考えているからね。

――少し話がさかのぼるのですが、アニメーション版の『美女と野獣』がアカデミー賞史上初めてアニメーション作品として作品賞にノミネートされた時のことをお聞かせいただけますか? 当時の感動は今も鮮明に覚えていらっしゃるのでしょうか?

アニメーション作品として初めて作品賞にノミネートされたこと、さらに歌曲賞部門で3曲が候補入りしたことは、もちろんよく覚えているよ。しかもその少し前に、仕事仲間(作詞家のハワード・アシュマン)を亡くしたばかりだったから、いろんな感情が混ざり合ったね。

――そのハワードさんと一緒にディズニー作品の音楽を手がけるようになったきっかけは何だったのですか?

僕ら二人が音楽を担当した『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のプロデューサーの一人、デヴィッド・ゲフィンが、ディズニーのマイケル・アイズナーとジェフリー・カッツェンバーグと知り合いでね。ウォルト・ディズニーの甥であるロイ・ディズニーがアニメーション映画の再生を熱望していた時、デヴィッドが僕らのことを推薦してくれたんだ。

――ハワードさんとの共同作業は、いつもどういった形で進められていたのでしょう? 曲が先、それとも詞が先なのでしょうか?

何よりも最初なのは、依頼だね(笑) どんな曲を作りたいのかというのがまずありきなんだ。音楽的なアイデアをやり取りする際、これは相手がハワードの時でも他の人の時でも同じだけど、僕自身は同じ部屋にいて一緒に進行していく形が好きだね。作品に対する意見を即座に聞きたいから。

――今回主役を演じたエマ・ワトソンとダン・スティーヴンスはミュージカル初挑戦となりましたが、メンケンさんから見てお二人の歌声はいかがでしたか?

二人とも最初はちょっと緊張していたみたいだから、少しでも取り組みやすいよう、スペースを与えることを心がけたよ。素晴らしい仕事ぶりだった。最高評価のAプラスをあげたいね。

――二人以外にも、ルーク・エヴァンスやユアン・マクレガーなどが出演していますが、歌声を聴いて特に驚かされたという方はいらっしゃいますか?

一番のサプライズだったのはルーク・エヴァンスだね。彼がどのくらい歌えるのかを全く知らなかったから、あの見事な歌声を聴いた時はビックリしたよ。

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――今回は、アニメーションでも舞台版でも謎だった、ベルのお母さんのことが分かる曲「時は永遠に」が新たに加わっていますが、この曲で一番表現されたかったことは何ですか?

そこは実際に曲を聴いて感じ取ってもらえればと思うけど、ベルが生まれた場所、モンマルトルを訪れた際に流れるこの曲では、すぐに過ぎ去ってしまう瞬間をどうやって自分たちの中に留めておけるのかということを歌っているんだ。

――長年ディズニー作品に関わっていらしたあなたから見て、ディズニー作品の魅力とは何でしょう?

会社としてそれぞれの作品にあらゆる面で関わっていく姿勢は見事だし、関係者全員のディズニーに対する深い愛情を感じるよ。会社が素晴らしいというのは、そこで働く人たち一人ひとりが素晴らしいからこそなんだ。

――メンケンさんというとやはりディズニーのアニメーション映画のイメージが強いですが、先程お話に出た『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』や『ソーセージ・パーティー』の楽曲も手がけられていますよね。異なる作風によって、取り組み方や作曲をする上で違いはあるのですか?

『ソーセージ・パーティー』はいわゆる全編ミュージカルの作品とは少し違う作風だけど、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は『リトル・マーメイド』といった他と同じプロセスだよ。作曲する時に必ず考えるのは、ストーリーやキャラクターの情報を元に、どうやったらミュージカルになるのか、ミュージカルのどんなボキャブラリーを使えばちゃんと物語を伝えられるのかといったことなんだ。「ディズニーもの」と一口に言っても、『ノートルダムの鐘』のようにすごくダークだったり、『ポカホンタス』のようにすごくシリアスだったりという作品もあるから、実は僕の中ではディズニーとその他の作品を差別化したりは一切していないんだよ。

――『美女と野獣』で一番お気に入りのキャラクターは? もし演じるなら誰がいいですか?

お気に入りは野獣かな。一番の成長を見せるからね。演じるなら...やっぱり野獣かな(笑)

『美女と野獣』は大ヒット公開中!
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Photo:
アラン・メンケン
『美女と野獣』
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