現地時間9月17日(月)にロサンゼルスで開催される第70回エミー賞(プライムタイム・エミー賞)授賞式。2015年、2016年と2年続けてドラマ部門作品賞を受賞していた『ゲーム・オブ・スローンズ』が、本年は最多の22ノミネートを果たしている。昨年は放送日の関係でノミネート選考対象から外れてしまった本作が、2年ぶりに復活。さらに昨年の王者『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』をはじめ、話題沸騰中の『THIS IS US』や『ウエストワールド』『ザ・クラウン』『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』『ストレンジャー・シングス 未知の世界』なども候補入りしており、激しい賞レースになるだろう。
それでは各賞の予想とともに、日本では未公開の新作を含めノミネートされている作品を今一度チェックしてみよう。
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<ドラマ・シリーズ部門>
■作品賞予想
『ゲーム・オブ・スローンズ』
筆者の個人的な押しは、昨年作品賞を受賞した『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』。同作は1980年代にカナダ人の小説家マーガレット・アトウッドが執筆した小説を原作としているが、現在の米国政権を予測したかと思われるような社会を描いており、社会現象にまでなっている。主演のエリザベス・モスでさえも、トーク番組などで「簡単にこのドラマを説明すると、抑圧政権によって悲壮感漂う地獄郷になったアメリカが舞台なの。女性はただ子どもを生むだけの道具となっていろんな権利は取り上げられているの。全然想像できないわよね」と皮肉を交えて笑うほどだ。
だが、2年ぶりに戻ってきた『ゲーム・オブ・スローンズ』の勢いも凄い。第一章の第1話では222万人だった全米での視聴者数も、最新シーズン第七章の最終話ではなんと1210万人まで増加。長くなればなるほど視聴率は下降していくドラマが多い中、この視聴者数の伸びはまさに本物の秀作である証拠。2019年に放送される第八章が最後ということもあり、クライマックスへと向かう『ゲーム・オブ・スローンズ』が本命だろう。
■主演男優賞予想
マイロ・ヴィンティミリア『THIS IS US』
昨年の同賞は同じく『THIS IS US』のランドル役スターリング・K・ブラウンが受賞している。今年も昨年に続いてスターリングとマイロがそろってノミネートされているが、今回のシーズン2では"アメリカの父"とまで評されるジャックの死に関する謎が明らかになったため、同役を演じるマイロの迫真の演技は評価に値するのではと予想。
■主演女優賞予想
サンドラ・オー『Killing Eve(原題)』
昨年に引き続き、エリザベス・モス(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』)受賞の可能性も高い。シーズン2での驚異的なストーリー展開における卓越した演技力はシーズン1のそれよりもはるかに見応えがある。
だが、ここは『グレイズ・アナトミー』のクリスティーナ役で5度も同賞助演女優賞にノミネートされていながらも受賞をしていないサンドラ・オーの初受賞を期待したい。サンドラが主演するこの新作『キリング・イヴ/Killing Eve』は、作家ルーク・ジェニングスによる小説を基にしたスパイドラマ。スパイドラマとはいうものの、本作で輝きを放つのはサンドラ演じるイヴのキャラクターだ。『グレアナ』と同一人物とは思えないほどの演技力で下馬評も高く、ここはアジア系女優として初の主演女優賞を獲得してもらいたい。
■助演男優賞予想
ジョセフ・ファインズ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』
グウィネス・パルトローと共演した大ヒット映画『恋におちたシェイクスピア』でウィリアム・シェイクスピアを見事に演じたジョセフ。『ハンドメイズ・テイル』で見せる、シェイクスピアの時とは全く違う凍りつくような表情に目が離せない。
だが『ザ・クラウン』フィリップ王配役で初めてノミネートされ、現在製作中の『スター・ウォーズ エピソード9(仮題)』にも抜擢されているマット・スミスの受賞もあり得るだろう。『ゲーム・オブ・スローンズ』からはニコライ・コスター=ワルドーとピーター・ディンクレイジがノミネートされているが、ピーターは過去に2度受賞しているので、彼ら二人なら待望の初ノミネートを果たしたニコライの方が有利だろう。
■助演女優賞予想
タンディ・ニュートン『ウエストワールド』
特筆すべきは『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』から、アレクシス・ブレデル、アン・ダウド、イヴォンヌ・ストラホフスキーの3人がこの部門でノミネートされていることだ。昨年、アンは同部門で、アレクシスはゲスト女優部門で受賞している。
ということで残るはセリーナ役のイヴォンヌの受賞、と言いたいところだが、『ウエストワールド』で体を張った圧倒的な演技を見せつけるタンディに受賞してもらいたい。往々にしてSF系の作品は賞レースにあまり縁がないと言われるが、今シーズンで着物姿を披露し、膨大な日本語のセリフもマスターしてみせたタンディを応援したい。
■監督賞予想
ジェレミー・ポデスワ『ゲーム・オブ・スローンズ』
同作第七章で、80分もある第7話「竜と狼」を見事に作り上げたポデスワ監督。『ゲーム・オブ・スローンズ』の過去シーズンのほか、『ザ・パシフィック』と『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』でもノミネートされたことのある彼の"4度目の正直"に期待。
■脚本賞予想
ジョエル・フィールズ&ジョー・ワイズバーグ『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』
本シリーズのクリエイターでもあるワイズバーグは、元CIA局員からTV業界に転身という一風変わったキャリアの持ち主。同作の脚本も多く手掛けており、現実味あるストーリーを反映している点で一票入れたい。
<コメディ・シリーズ部門>
■作品賞予想
『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』
エミー賞常連の『Black-ish(原題)』や『アトランタ』が順当だが、80年代の女子プロレスの世界を描いた『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』が初ノミネートということでこちらを予想。
<リミテッドシリーズ/テレビムービー部門>
■リミテッドシリーズ 作品賞予想
『Patrick Melrose(原題)』
『SHERLOCK/シャーロック』やマーベル映画『ドクター・ストレンジ』などで知られるベネディクト・カンバーバッチが主演し、瞬く間に大ヒットとなった新作『パトリック・メルローズ』。
同作は、英国人作家エドワード・セント・オービンによる小説を基にしている。ベネディクト演じる主人公パトリックは、裕福だが幼少時に虐待を受け、現在は薬に溺れ堕落した生活を送る変わり者。ベネディクトは同役で主演男優賞にもノミネートされている。
■テレビムービー 作品賞予想
『ブラック・ミラー』「宇宙船カリスター号」
Netflixで人気の高い同シリーズのシーズン4よりノミネートされた「宇宙船カリスター号」。安定の人気を誇り、現代社会の近い未来を匂わせるSFストーリーに虜になっているファンも多いので選出した。
いかがだっただろうか? 『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ハンドメイズ・テイル』が本命視されつつも、各カテゴリーには競合もたくさんあり、どう転んでもおかしくない状態のエミー賞。そんな第70回エミー賞授賞式は米ロサンゼルスにて9月17日(月)に開催され、日本ではFOXチャンネルにて9月18日(火)午前9:00より独占生中継される。どうぞお見逃しなく!
(文・Erina Austen)
Photo:エミー賞(c)Television Academy. 『ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌』(C)2017 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. 『THIS IS US 36歳、これから』TM & (c) 2016-2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 『Killing Eve(原題)』サンドラ・オー(c)NYKC/FAMOUS 『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ジョセフ・ファインズ(c)NYPW/FAMOUS 『ウエストワールド』タンディ・ニュートン© 2018 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. 『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』(C) 2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』©Netflix. All Rights Reserved. 『Patrick Melrose(原題)』(c)JHMH/FAMOUS 『ブラック・ミラー』©Netflix. All Rights Reserved.