地下室に忽然と現れた殺人ピエロ、徹底的に「恐怖」にこだわった『Channel Zero:The Dream Door』

2016年から続く人気ホラー・アンソロジーシリーズ『Channel Zero』。シーズン4となる『The Dream Door(原題)』が米Syfyで10月下旬から放送している。本作は郊外で暮らす新婚夫婦というごくありふれた設定だが、恐怖感をいっそう引き立てる。

■地下室に現れた不気味なドア
ジュリアン(マリア・ステン)とトム(ブランドン・スコット)は幸せな新婚夫婦。幼馴染の縁で結婚し、懐かしい地元に新居を構えることに。あるとき、新居の地下室の奥に不気味な青いドアが出現する。トムは無理にこじ開けようとするが、蹴ろうが叩こうがまったく動かない。しかし夫の苦闘を見かねたジュリアンがそっと手をかけると、ドアは何の抵抗もなく開く。足を踏み入れたジュリアンが目にしたのは、幼き日に友だちとして遊んでいたピエロの人形だった。人形はジュリアンに幼き日のトラウマの断片を思い出させると、何処かへ消え去ってしまう。

前後して、気味の悪い人間の大きさのピエロが新居の内外に姿を現わすようになり、地下室から解き放たれたピエロは、「友だち」であるジュリアンの守護に異常な使命感を燃やし、彼女を苦しめる人物たちを次々と恐怖の底に突き落とす。その矛先はやがて、隠し事を抱える夫トムに向かい...。

■ネットで囁かれる怪談を
本シリーズ『Channel Zero』は、Creepypastasを原作としている。Creepypastasとは、インターネット上で語られている都市伝説や怪談話を集めたサイト。米Vergeは、荒削りな書き込みだからこそ想像力と恐怖感を掻き立て、製作総指揮のニック・アントスカは、Creepypastasの有機的な側面に入れ込んでいると述べている。Vergeによると、例えば有名な書き込みの一つである『キャンドル・コーヴ』は、様々な書き手によって複数の続編が作られ、ファンアートやビデオゲームまで登場した。そして、本シリーズのシーズン1のモチーフ。『The Dream Door』は、原作の恐怖感を継承しながらもオリジナルの表現を盛り込むことを目指したという。地下室に出現するドアは、忘れたい過去を閉じ込めておくもののメタファーとしても機能していると伝えている。

さらにドラマ版では、Creepypastasの恐怖感をベースとしながら深いテーマが追加されていると米Thrillistは、アントスカの結婚観、「結婚とは互いのトラウマを許せるパートナーを探すということなのだ」とともに伝えている。主人公の夫婦は互いに明かせない過去を抱えるが、それをどう乗り越えるかが一つのポイントになってくるという。

■日常的な光景、だからこその恐怖
アントスカは「視聴者の感覚を混乱させるようなシーン作りを目指した」と語り、寝室やリビングルームなどのシーンに、どこか不自然で奇妙な雰囲気を醸し出すよう意図しているという。最も安心できる自宅のはずが、もはや気を許せる空間には感じられない。こうした独特の空間作りがホラーを増長している。

住宅という身近な場所でストーリーが進む点には、Thrillistも注目。日常的な場所を舞台に、人間関係とトラウマの恐ろしさを掘り下げ、『アメリカン・ホラー・ストーリー』ほどの人工的な派手さもなく、またメロドラマ要素もない。新たなスタイルで成功した作品と評価している。

日本では、シーズン1の『キャンドル・コーヴ』と、シーズン2の『ノーエンド・ハウス』が、Huluにて配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:マリア・ステン&ブランドン・スコット
(c)s_bukley, Eugene Powers / Shutterstock.com