帰ってきたメリー・アン...Netflix『メリー・アン・シングルトンの物語』LGBTQ文化と人の温かさ

『メリー・アン・シングルトンの物語』は、アーミステッド・モーピンの全米ベストセラー小説からインスパイアされたNetflixオリジナルシリーズ。原作は70年代のカリフォルニアを舞台にしているが、Netflix版は現代のサンフランシスコが舞台。ジェンダーとセクシュアリティ、ドラッグなどの問題を織り交ぜながら、家族や友人の温かさを描いている。主演は、エミー賞とゴールデン・グローブ賞を受賞している演技派女優のローラ・リニー。ローラ演じるメリー・アンの娘ショーナを演じるのは、同性愛者であることをカミングアウトしているエレン・ペイジ。プライド月間(この期間、LGBTの権利について啓発を促すさまざまなイベントが開催される)に合わせて6月7日(金)より配信開始された話題作だ。

第二の家族のもとへ戻るメリー・アン そこで起きる騒動とは?

バーバリー・レーン28番地に建つアパートは特別な家。同性愛者など、LGBTQの人々が集まっている。メリー・アンはここに移り住み「新しい家族」とともに暮らしていたが、20年前、自らのキャリアを追い求めてコネチカットに旅立っていた...。

そんなメリー・アンは、家主アンナ(オリンピア・デュカキス)の90歳の誕生日パーティに合わせて、夫とともにバーバリー・レーンを訪ねる。久しぶりに顔を出した彼女を懐かしむ人々が多い中、複雑な気持ちを抱いた面々もいた。元夫のブライアンと娘のショーナだ。ショーナとの会話の中で大きな誤解があることに気づいたメリー・アンは、娘の誤解を解くためにも、サンフランシスコにしばらく滞在することを決める。そしてちょうどその頃、アンナは脅迫状を受け取るのだった――。

長年愛されている秀作に新しい風を吹き込む再映像化

この物語がドラマ化されるのは初めてではない。ドラマ化4回目となる今回のNetflixバージョンは、中年となったメリー・アンがサンフランシスコのバーバリー・レーン28番地の「あの家」に戻ってきたところから始まる。4回のドラマ化を通してずっとメリー・アンを演じ続けているローラ。家主のアンナも、オリンピアが4作を通して演じている。

米Salonは、「オリンピアが物語の心臓部を担っている」と、アンナ役のオリンピアの再起用を高く評価。また、新しい住人として若いキャラクターを作り出し、かつ、アンナの若かりし頃である60年代のシーンを組み入れた内容に、「現代的で、新鮮なクィアを描いている」と評価する。

Salonと同様に、『メリー・アン・シングルトンの物語』がサンフランシスコのクィア文化をしっかりと描いていると評価するのは米Paste Magazineだ。非常に堅実な演技に支えられた同作は、「サンフランシスコのクィア文化に対する、愛情を込めて構成されたパノラマ写真」のようだと述べる。

Netflixミニシリーズ『メリー・アン・シングルトンの物語』は全10話。各話1時間だが、尺の長さを感じさせない充実感は前述の各メディアによるレビューの通り。このミニシリーズを見終わったら、メリー・アンがバーバリー・レーンにやってきた頃を描いたほかのシリーズも見たくなるかもしれない。ハマりそうな秀作である。(海外ドラマNAVI)

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『メリー・アン・シングルトンの物語』© Alison Cohen Rosa/Netflix