大人気シリーズ『ウォーキング・デッド』の新作スピンオフドラマとして注目されていた『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』が、ついにお披露目された。主人公は、ウォーカーによって世界が崩壊した後に生まれた"第一世代"の若者たち。コロニーの"壁"に守られ、一見平穏そうに暮らす彼らだが、外は死者に支配され、住民を守るはずの市民共同体はなんだか胡散臭い...。果たして若者たちは"壁"の中で何を感じ、何を疑い、そして何を決断するのか?【ドラマ・レビュー】
10年前、かつてウォーカーと呼ばれていたゾンビ(本作ではエンプティと呼ばれている)の猛攻撃によって世界は変わり果ててしまった。母を亡くし、研究者の父を市民共同体に連行された高校生のベネット姉妹(姉アイリス&妹ホープ)は、様々な葛藤や紆余曲折を経て、仲間と共に父を探す旅に出ることを決意。だが、戦闘経験の全くないコロニー育ちの彼らは、想像を絶する困難と直面することになる。
物語の中心となるのは対照的な性格を持つアイリスとホープのベネット姉妹だが、この二人のせめぎ合いの中から今回の物語が発動する。幼い頃、ウォーカーに襲われ全く違うトラウマを持ったことから、アイリスは父の生還を願う優等生となり、ホープは母の死を招き父を奪った市民共同体に対して怒りをあらわにする問題児に。このコントラストが実に面白いが、途中、二人を挑発する市民共同体のエリザベス中佐が登場し、さらに父親から緊迫したSOSのメッセージが届いたことから、アイリスとホープの心が"闘争心"という名のもとで結びつき、どんどん戦いモードになっていく心理描写がこれから始まる命懸けのサバイバルを予感させる。
主演を務める姉アイリス役のアリーヤ・ロイヤル(『レッドライン ~悲しみの向こうに』)と妹ホープ役のアレクサ・マンスール(『レジデント 型破りな天才研修医』)は、まだ日本では知られていないが、これから物語を紡いでいく中でどれだけ成長を見せるか期待度大。
さらに憎々しいエリザベス中佐を演じるのは、『インコーポレイテッド』『MAD MEN マッドメン』などのジュリア・オーモンド(映画『サブリナ』で超美人女優と騒がれたあのスターが驚くほどの貫禄女優に!)、ベネット姉妹の父レオ役に『スキャンダル 託された秘密』の国防長官役で知られるジョー・ホルト、そして『ジ・アメリカンズ』の美人KGB職員役で(個人的に)メロメロにされたアネット・マヘンドルが若者たちを追跡する警備員役で凛々しい姿で登場する!
『ウォーキング・デッド』で積み重ねた長い戦いの歴史をジュニア世代が背負っているという"重み"も感じさせる本作。本家とのクロスオーバーが期待されるシーンもあるようだが、回を追うごとに長年のファンの心に響く内容になっていくことは必至。もちろん、初見の方でも1つの独立した作品として存分に楽しむことができるので、これを機に緊迫感あふれるサバイバル・ワールドを体感してみてはいかがだろう。
『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』(全10話)は、Amazon Prime Videoにて毎週金曜日に新エピソードを配信。
(文/坂田正樹)
Photo:Amazon Prime Video『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』/(c)Jojo Whilden/AMC