人間と幽霊の切ない愛の物語で大切なものを再確認!タイBLドラマ『He's Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た』

愛する人がそばにいる、気軽に触れることが出来る、直接気持ちを伝えることが出来る。当たり前になると、それがどれだけ幸せなことか忘れがちである。その大切さを改めて思い出させてくれるのが、2019年にタイで放送されたドラマ『He"s Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た』だ。通称"とな墓"と呼ばれ、タイBLドラマ史に名を刻む名作とも評され愛される本作のBlu-ray BOXが2021年8月4日(水)に発売される。

"別れ"に向かって進む人間と幽霊のラブストーリー

タイトルに入っている"清明節"とは、春分の日から15日目(毎年4月5日頃)にある中華圏の祝日で、先祖の供養のために墓参りをする日(日本でいう「お盆」)のこと。本作ではそんな清明節に出会った人間の"彼"と幽霊の"僕"によるラブストーリーが描かれている。

主人公が"人間と幽霊"というところからしてファンタジックな印象の本作だが、物語は22歳の誕生日を迎えた青年・メットが心臓まひで亡くなってしまうという衝撃的な場面から始まる。それから約20年、成仏することができず誰も会いに来てくれない墓地で空虚な時を過ごすことになってしまうメットだったが、ある年、自分のことが見える少年・タンが隣の墓に墓参りに来たことで長い長い孤独が打ち破られることになる。

そして初めての"出会い"から数年後、大学生になったタンがメットが成仏できないのは本当の死因を知らないからだと考え、真相を探るため自分の部屋にメットを連れて帰り共同生活を始めたことで、互いがかけがえのない大切な存在になっていく...というストーリーを展開。メットの成仏、つまり"別れ"に向かって進んでいく物語となっているのだ。

ファンタジー&ラブコメ&ヒューマン&サスペンスが一気に味わえる多彩なドラマ

そんなことから始まった二人の共同生活だが、その様子は至って和やかでほのぼのとしている。とあることをすれば物を触って動かしたりすることが出来るメットがタンのために朝食や大好物の茶わん蒸しを作ってあげたり、生前優等生だったメットがタンの家庭教師を務めて一緒に勉強したり、足漕ぎボートや自転車に一緒に乗ったり、おいしいスイーツを分け合ったり。タン以外の人には見えない、そして触れ合うことが出来ないという事実を除けば、二人の雰囲気は甘酸っぱい青春の爽やかさがあり、じゃれ合う様子はとても微笑ましい。

そんな触れ合えないもどかしさや少し先の未来にある"別れ"が見えているからこそ、二人は一緒にいられる時間をもっと大切にしようと思えるのだろう。例えば、街中で幽霊であるメットと話せば周りからは一人芝居をしているようにしか見えず、訝しげな表情を見せる人もいるがタンは全く気にしない。だって今この瞬間、タンにとって一番大事なのはメットだから。限られた時間、他のことを気にする暇などなく、一緒にいられる幸せを噛み締める。そうやって二人は人知れず愛を育み、愛する人のそばにいられることの尊さを改めて感じさせてくれるのだ。

そんな二人のラブストーリーと共に、本作ではタンの友人や二人の家族との"絆"も描かれている。ファンタジックな世界観だが、登場するキャラクターたちが至って普通の人々であることも本作の魅力の一つだ。年相応に恋愛に悩み、友情に悩むタンとその仲間たち。タンが性的指向を自認した時の戸惑いやそれを母親にカミングアウトする時の葛藤。大人と子どもの境でまごつく等身大の人間としてきちんと描かれているからこそ共感しやすく、すんなりと視聴者の心に染み入ってくるのだろう。

そして、メットの死の真相が徐々に見えてくると、また一味違う雰囲気を醸し出す。日常のほのぼのとは全く違う緊迫感のある攻防と真実に向き合う恐怖。床に伝う冷たい空気が足に這い上がってくるようなゾクゾクとした感覚を味わうことができる。

全8話の中に、"人間×幽霊"というファンタジー要素に加え、王道のラブコメ感、ヒューマン、サスペンスとさまざまな要素を上手く織り交ぜ、喜怒哀楽すべての感情を揺さぶってくる本作。多面的にドラマの世界を楽しむことが出来るのも"とな墓"の醍醐味なのだ。

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繊細な画作りと人物描写が光る演出

LINE TVアワードでベスト・ドラマチック・シーン賞を受賞するほど話題を集めた本作を手掛けるのは、タイBLドラマブームを牽引する『2gether』の1年後を描いたスピンオフ作品『Still 2gether』やブルーを基調とした美しい映像美で話題になった『Dark Blue Kiss~僕のキスは君だけに~』など数々の人気タイBLドラマを演出してきたAof・ノファナック監督

美しい映像と細やかな描写に定評のあるAof監督は、本作でもキャラクター同士の距離感や感情の機微を丁寧に描き等身大で共感できるキャラクターを映し出し、ロマンチックな場面をリアルに落とし込みつつ幻想的に見せる演出力を発揮。ファンタジーなのに地に足のついた身近な物語として作品を楽しむことが出来るのはAof監督の手腕のたまものでもあるだろう。

GMMTVの超新星&人気俳優の絶妙なコンビネーション!

GMMTVと言えば、名作タイBLドラマを数々生み出し注目を集めるタイのテレビ番組制作およびタレントエージェント会社で、今はテレビ朝日と共にGMMTV四天王ペアをフィーチャーした世界初の展覧会「GMMTV EXHIBITION in JAPAN」を開催している、昨年から日本で広がる"泰流ブーム"のけん引役。

本作で主演を務めるのは、そんなGMMTVの代表作の一つでもあるタイBLドラマの金字塔『SOTUS/ソータス』の他、さまざまな注目作に出演する人気俳優のシントー・プラチャヤ―と、次世代スターとして期待視され2020年に放送されたドラマ『The Shipper』での好演も話題になったオーム・パワットだ。

"少年感"の残る向日葵のような笑顔が魅力的なオームは、大人と子どもの境界線にいる青年の心の機微を粗削りながらも明確に描き出し、純朴で真っすぐ、ずる賢さもある弁護士志望の大学生・タン役を見事に体現。撮影当時10代だったオームも現在21歳、その演技力にさらに磨きをかけて話題作に次々と出演している。2020年12月に発表されて以降注目度が上がり続けている2021年放送の新作ドラマ『Bad Buddy Series』(演出:Aof監督)でも主演を務めることが決まっており、今後の活躍に期待が高まる若手俳優の一人だ。

そして、メットを演じるのは『SOTUS/ソータス』シリーズをきっかけにGMMTVの看板俳優の一人となっていたシントー。拗ねるとすぐに口を尖らせたり、生きている頃は心臓が弱く出来ずにいた激しい運動ができるようになって喜んだり、まさかの真実を知って落ち込んだり、タンへの思いを募らせて涙を流したり...さまざまな表情を見せ、タンだけでなく視聴者の心も鷲掴みにする"かわいい幽霊"を、持ち前の繊細な表現力で完璧に描写している。今年は、よしながふみ原作の『西洋骨董洋菓子店』を実写ドラマ化した『Baker Boys』『Paint With Love』などへの出演も控えており、本作とは毛色の違う作品でさらにいろんな一面を魅せてくれそうだ。

ちなみに別事務所にいたオームは今作がGMMTV移籍後初のドラマだったこともあり、事務所の先輩であるシントーが芝居のパートナーでありながら教育係も務めることに。GMMTVのYouTube公式チャンネルで配信されているメイキング映像では貴重な撮影の裏側が見られるのに加え、"兄弟"のような信頼関係を築いていった二人の仲睦まじい様子も垣間見ることができる。さらに、本作を優しい歌声で温かく包み込む主題歌のPVやシントーが主題歌をカバーした動画なども公開されているため、本作をより楽しみたい方は要チェックだ。

そんな至極のキャスティングと演出、ストーリーを堪能することができる"とな墓"は2020年春以降に訪れた泰流ブームの中で配信や円盤化が望まれていた作品のひとつでもあったが、6月から各配信サービスでの配信が始まり、8月4日(水)にはBlu-ray BOXの発売が決定している。

例えどんな存在であっても誰かを愛することは尊く、そばにいられることがどんなに幸せなことか、そんな大切なことを再認識させてくれる『He"s Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た』は、作品全体を覆う優しい空気感で人の心をあたため栄養剤のように元気も与えてくれる作品。疲れた心をぜひ癒やしてほしい。

(文・さいぢ)

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『He"s Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た』 (C)GMM TV COMPANY LIMITED. All rights reserved  提供:アジア・リパブリック13周年