法では裁けない悪を討つダークヒーロー作品といえば、『バットマン』や今年配信の『コンフィデンスマンKR』が思い浮かぶだろうか。『復讐代行人〜模範タクシー〜』と真っ先に挙げる人もいるだろう。被害者に代わり復讐を遂行する物語は支持を集め、シーズン1、2ともにSBS演技大賞で数多くの賞を獲得し、とくにシーズン2は大賞に輝くなど確かな評価も得ており、現在シーズン3が配信中だ。
被害者に代わり復讐を請け負う“模範タクシー”の面々
物語の中心となるのは、タクシー会社に運転手として勤めるキム・ドギ(イ・ジェフン)。殺人鬼に母親を殺された過去を持つ彼は、タクシー会社社長で犯罪被害者を支援する“青い鳥財団”の代表ソンチョル(キム・ウィソン)、普段は経理として働くがハッカーとしての腕前も持つゴウン(ピョ・イェジン)、車の改造を得意とするギョング(チャン・ヒョクジン)とジノン(ぺ・ユラム)と共に、被害者から電話で依頼されるとその復讐に向かう。ドギ以外のメンバーも全員、身内が無念の死を遂げた過去を抱えている。そのため、人を陥れてなお平然と生きる者への強い憎悪をもっている。
本作の魅力は何と言っても、映画『建築学概論』で見せたような純粋なかっこよさだけではない、イ・ジェフンの様々な顔を見ることができるところ。普段は冷静でクールな性格だが高校教師、ヤクザ、刑務所の囚人、騙された就活生などに扮したときには底抜けに明るくなったり間抜けになったりと、隙を見せるふりをする。そのギャップに思わず笑ってしまうし、気づけば魅了されていくことだろう。
シーズン1・2で築かれた世界観、そしてシーズン3で広がる新境地

©SBS
シーズン1ではそれぞれのキャラクターが抱えている事情や、彼らを怪しむ検察との攻防がダークに描かれ、捕まえた悪者たちの反逆や内部の裏切りまでが複雑に描写された。シーズン2ではスケールと復讐の爽快さがパワーアップ。壮大なカーアクションに加えて、イ・ジェフンによる対人アクションも力強く、負け知らずなのも心強かった。シーズン1よりダークさが薄まり、より親しみやすくなっているのも特徴だ。
そして最新作となるシーズン3は、なんと日本から物語が始まる。韓国で脅迫を受けた女子高生が福岡へ連れて行かれた事件をきっかけに、笠松将演じる黒幕をインターポールが追う――まるで劇場版のようなスケールの展開だ。森優作や竹中直人、そして香港からイーダン・ルイまで登場し、大胆なカーアクションは日本の公道でも健在。日本のヤクザ映画的なテイストが融合することで、本作はより重厚で迫力のある作品へと進化している。
そんな大規模な幕開けに続いて、韓国国内で描かれる犯罪もさらにスケールアップ。悪質な詐欺をはたらく車のディーラーへの仕返しや、ソンチョルが“模範タクシー”を始めるきっかけになった人物との再会、スポーツ賭博と殺人を行った男たちや、アイドル事務所の社長への復讐などが展開されていく。犯罪者の罪は、救済や更生といった言葉では片づけられず、単なる社会的制裁で済むものでもない。彼らの残酷な最期は真っ当だと思えてしまうほど、その犯罪の被害は大きいのだ。
変わらぬ魅力と、初見でも楽しめる構成

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シーズン1から変わらないのは5人のメンバーと、タクシー会社の地下に隠された秘密基地のワクワク感、そして街が見渡せる高台がある、筋トレ器具が並ぶドギの家。お馴染みの光景に加えて、今までに救った依頼人や仲間が登場するなど、ファンにとっては嬉しいポイントもふんだんに盛り込まれている。それでもシーズン3から観ても置いていかれることはない。大体は2話で一つの物語が完結するようになっており、彼らが「復讐代行をする人たちである」ことさえわかっていれば、最新作からでも楽しむことができるだろう。
(文/伊藤万弥乃)
『復讐代行人~模範タクシー~』シーズン3配信情報
『復讐代行人~模範タクシー~』シーズン3はLeminoで独占配信中。毎週金曜日と土曜日に最新話が配信される。
\新規は初月無料/









