【レビュー】民俗学×オカルト!?ミステリーの新境地を切り開いた韓ドラ『悪鬼』がついに佳境へ…

Disney+(ディズニープラス)で独占配信中のオカルトミステリー『悪鬼』。ついに残すは2話となり、物語も佳境を迎えている。巧みな脚本と主演キム・テリの圧倒的な演技が話題の本作だが、それ以外にも視聴者を魅了するさまざまな“仕掛け”があるようだ。(本記事には『悪鬼』第10話までのネタバレが含まれます)

『悪鬼』はただのオカルトミステリーではない!?

韓国SBSの金・土ドラマとして放送中の『悪鬼』は、『シグナル』や『キングダム』などヒット作を連発するキム・ウ二が脚本を手掛けるオカルトミステリー。

物語は、主人公ク・サニョン(キム・テリ)の父ク・ガンモ(チン・ソンギュ)が不可解な自殺を遂げたことによって幕を開ける。サニョンは父の遺品として赤いデンギ(髪留め)を祖母から受け取るが、それに触れた瞬間見知らぬ「記憶」が脳裏をよぎる。

その後、母をだました詐欺師、そして祖母と、サニョンと関りがある者が立て続けに自殺。父と同じく民俗学教授であるヨム・へサン(オ・ジョンセ)は、サニョンに「悪鬼」が憑いており、人が死ぬたびに「悪鬼」は力を増していくと話し…。

韓国ドラマ『悪鬼』

オープング映像はホラー感あふれるが、実際のストーリーは刑事ミステリー色が濃い。前半の事件に関しては、犯人が人間である展開が多く、「幽霊なんか存在しない」というサニョンの主張が正しいのかも? と思わされなくもない。

そうはいっても、ジャンプスケアはあるし中盤からはゴアな描写も増えていくので、オカルト好きな筆者としては申し分ない内容だ。また、オカルト要素に民俗学的な視点が加わるのが、本作のポイントと言えるだろう。

作中では民俗学的な調査方法や見解によって、悪鬼とそれにまつわる謎を追求していく。日本の映画・ドラマにおいては民俗学とホラーをかけ合わせた作品は珍しくない。だが、韓国作品においてはこれまであまりなく、新しいアプローチだと好評を得ている。

悪鬼を祓う方法がある?『キングダム』を彷彿とさせる巧みな設定

悪鬼について調査を進めていくうちに「悪鬼の本名と、5つの神体を集めれば祓うことができる」という仮説が登場する。打破に向けての明確なルールがある点に、脚本家が同じ『キングダム』を思い出さずにはいられない。

朝鮮王朝×ゾンビという斬新な設定で大人気となった『キングダム』では、「気温が高いとゾンビは活動できない」「患部を水につければゾンビ化を回避できる」など、一定のルールのなかで戦略を組み立てていくのが面白かった。

『悪鬼』では、悪鬼を祓う条件のほかにも「悪鬼に狙われている人は誰がドアを叩こうと開けてはいけない」ことや、「サニョンは鏡越しに霊を見ることができる」といった設定がある。これらも、ストーリーをより深みに導くエッセンスと言えるだろう。

特に前者は「怪異は招かれないと入ることはできない」という、オカルト界隈では超王道なルール。第10話まではドアを開けてしまったパターンしか登場しないので、開けなかったら無事なのだろうか? という疑問が残る。

韓国ドラマ『悪鬼』ヨム・へサン(キャスト:オ・ジョンセ)

「若者の貧困」という社会問題にも切り込む

ただオカルトミステリーだけを描いているわけではない点も、『悪鬼』を評価したいポイントの一つだ。主人公サニョンは経済的に困窮しており、常にアルバイトに明け暮れる毎日。女手一つで自分を育ててくれた母のためにも、熱心に働いている。

韓国ドラマ『悪鬼』

そんなサニョンだが、父と祖母が亡くなったことにより莫大な遺産を手に入れることに。悪鬼は、代償と引き換えに憑りついた相手を裕福にするのだ。突然のことに、サニョンははじめ遺産の受け取りを拒否するが、最終的には受け取ることに。

これを皮切りに、悪鬼の行為はエスカレート。サニョンの周りの人を呪い殺すだけでなく、ブランド品を身に纏って同窓生との集まりに顔を出したり、クラブで一晩遊び惚けたり…。やがてサニョンは、悪鬼の行動を通して、自身の欲望に気付いていく。

実際、韓国で暮らす若い世代は、大多数が経済的に苦しい生活を送っている。本作の脚本を担当するキム・ウニと制作スタジオはドラマ終了後に脚本集を出版する予定だが、その印税を緑の傘子ども財団に寄付すると表明している。作品のテーマとして消費するだけではなく、現実社会にも問題を投げかけ、解決に向けて一石を投じるところにも好感が持てる。

韓国ドラマ『悪鬼』

キム・テリの演技力が光る!圧倒的な一人二役に脱帽

本作には演技力に秀でたキャストが集結しているが、なかでも注目したいのが主演キム・テリ。彼女といえば、2016年の映画『お嬢さん』でスッキ役に抜擢され、一躍有名に。財産を目的に侍女として屋敷に潜入する詐欺師だが、やがて令嬢・秀子(キム・ミニ)に惹かれていき板挟みに陥る…という役どころを見事に演じきった。

最近ではNetflixで配信中の韓国ドラマ『二十五、二十一』でナ・ヒドを好演。これまで出演してきた作品のほとんどが過去を舞台にしていたため、現代ドラマを主演するのは本作が初となる。

『悪鬼』では、サニョンと悪鬼の一人二役となっているが、纏っている雰囲気ごとガラリと変化するので、混乱することなくストーリーに没入できる。特に第7話、サニョンが雨の中で泣き叫ぶシーンはすさまじい。視聴者の怒りを代弁するような悲痛な声に心が動かされる。

韓国ドラマ『悪鬼』

ついに悪鬼の本名を暴いた第10話…!

悪鬼を祓うため本名を探る過程で、かつて殺された少女イ・モクタンこそが悪鬼の正体なのではないかと仮説を立てる一行。しかし、第10話にして、モクタンではないのではないか? というどんでん返しが。

ここにきてすべてがひっくりかえる展開に驚いたものの、ラストでその真名が明らかになる。手に入れた神体は4つで残すはあと一つ。残り2話で入手し、無事悪鬼を祓うことができるのか…?

さまざまな思惑がうずめく『悪鬼』。残された謎もまだまだあるので、配信前に第1~10話を見直しながら推理してみてはいかがだろうか?

韓国ドラマ『悪鬼』ク・サニョン(キャスト:キム・テリ)

韓国ドラマ『悪鬼』配信情報

韓国ドラマ『悪鬼』は、ディズニープラスで独占配信中。7月28日(金)に第11話、7月29日(土)に最終回となる第12話が配信。(海外ドラマNAVI)

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