ジェームズ・スペイダー(James Spader)

20140124_star02.jpgクールな外見に知的なたたずまい――80年代二枚目スターとして青春映画で活躍したジェームズ・スペイダーは、ずっと"ミステリアスな男"を演じ続けてきた。というより、彼という存在が、どんな役でも深みのある、つかみどころがない、影のある男にしてしまうのかもしれない。

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全米屈指の名門高校を中退し、俳優になるためにニューヨーク単身渡ったジェームズ。屈折したエリートを演じるのは、元々、エリート学校にいた彼には身近であった。『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(86)、『レス・ザン・ゼロ』(87)『マネキン』 (87)などの青春映画でも、意地悪で鼻持ちならない金持ちのボンボン役から彼のキャリアは始まった。そして、白馬の騎士よりも、ダーク・ナイトを演じる道を選び、彼はタダの二枚目スターではなく、癖のある二枚目俳優として認められるようになる。

そして、1989年のスティーブン・ソダーバーグ監督『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌ国際映画祭の男優賞に輝き、一気に実力派の仲間入り。さわやかな好青年を演じながらも、どこかダークな空気がつきまとうジェームズだが、そんな彼の魅力に惚れ込んだのが、鬼才デヴィッド・クローネンバーグだった。ジェームズは、クローネンバーグの『クラッシュ』(96)に出演し、ミステリアスな魅力に拍車をかけていく。いずれも、エリートでありながら、屈折した性癖を持つ......という癖ありまくりの役柄だ。

クローネンバーグ作品でミステリアスをディープな領域まで極めたジェームズ。特に『セクレタリー』では、ハンサムだし、仕事もできるけど、どこかヘン...な弁護士を好演。ジェームズでなかったら、変態ロマンポルノになるところを、相手役のマギー・ギレンホールと「変態だけど純愛ロマンス」映画にまで昇華している。行為は過激でも、実は超内気...というギャップを見事に演じてみせた。「変態」と「かっこいい」と到底埋まりそうもないギャップを「変態!!だけど、かっこいい!」と言わしめた非常に貴重な俳優だ。

その後、ジェームズはテレビドラマに転身。しかも、『セクレタリー』に引き続き弁護士役として...。それが、テレビシリーズ『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』と、そのスピンオフとして始まった『ボストン・リーガル』だ。もちろん、そこに"変態"要素はないが、高慢、イヤなヤツ、でもたまにいいところもあり、実は正義感が強い、という人間的にクセのある弁護士というのは変わりない。この一筋縄ではいかない弁護士役で、ジェームズは3度のエミー賞に輝いている。

そして、最新ドラマシリーズの『ブラックリスト』では、さらにミステリアスな男から、彼自身が"ミステリー"に進化している。彼が演じるレイモンド・"レッド"・レディントンは、世界中の犯罪者たちの裏取引に協力してきたフィクサー。犯罪界の怪物と言える存在だ。この怪物は何を考えているのだろうか――事件を追いながらも、常に怪物レッドの謎がつきまとう。レッド自身が、物語の最大の謎なのだ。プライドが高く、横柄な犯罪者であるレッドは、もともと"できすぎた海軍エリート"。それゆえに、何か裏の裏の、そのまた裏まであるんじゃないかと思わせる。彼が身に帯びる謎のベールの濃さがハンパない。スキンヘッドにして怪物度アップしたジェームズが演じると、もはや濃霧レベルだ。

50代に突入し、コメディ『The Office』に出演してからの『ブラックリスト』という流れ。ここにきて、ジェームズは"二枚目"という要素を手放した。外見と内面のギャップではなく、違う何か、違う謎めいたものを求めて...。そして、怪物レッドという役にたどり着いた。

エリートの闇と隠された素顔を演じ続けてきたジェームズ。ブレない俳優魂があったからこそ、映画であろうとテレビであろうと関係なく、ミステリアスな雰囲気は絶対に崩れることはないのだろう。


■ジェームズ・スペイダーのプロフィール
1960年2月7日 米マサチューセッツ州ボストン生まれ。

■役柄イメージ
何か企んでいそうな男、ミステリアスな男

■主な作品
【TVドラマ】
『ブラックリスト』 (2013~)
『The Office』(シーズン7)(2011~2012)
『ボストン・リーガル』(2004~2008)
『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』(シーズン8) (2003~2004)

【映画】
『リンカーン』 (2012)
『セクレタリー』 (2002)
『ザ・ウォッチャー』 (2000)
『スーパーノヴァ』 (2000)
『ドリフトウッド/硝子の檻』 (1997)
『2 days トゥー・デイズ』 (1996)
『クラッシュ』 (1996)
『スターゲイト』 (1994) 
『ウルフ』 (1994)
『水曜日に抱かれる女』 (1993)
『ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄』 (1992)
『ストーリービル/秘められた街』 (1992)
『ぼくの美しい人だから』 (1990)
『バッド・インフルエンス/悪影響』 (1990)
『レイチェル・ペーパー 』(1989)
『セックスと嘘とビデオテープ』 (1989)
『殺しのナイフ/ジャック・ザ・リッパー』 (1987)
『レス・ザン・ゼロ』 (1987)
『ウォール街』 (1987)
『赤ちゃんはトップレディがお好き』 (1987)
『マネキン』 (1987)  
『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』 (1986)
『放課後』 (1984)
『エンドレス・ラブ』 (1981)  

■私生活
・1987年『セックスと嘘とビデオテープ』の美術スタッフだったヴィクトリアと結婚し、2児をもうけるが、2004年に離婚。その後、『アライバル ファイナル・コンタクト』(2003)で共演したレスリー・ステファンソン(『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』)と交際し、2008年に男の子が生まれる。

・80年代青春映画で活躍したエリック・ストルツロバート・ダウニー・Jrは良き友。

・視力が悪いが、コンタクト嫌いなため、メガネをかけない役の時は、裸眼で演技。そのため、相手役の顔はほとんど見えてないという。あのどこを見ているのかわからない、深いまなざしは、もしかして本当に何も見てないだけだったり!?

・映像記憶の能力があり、脚本のページを映像で記憶するという。撮影の時は、その記憶にあるページごと思い出して、"読む"という。

Photo:ジェームズ・スペイダー

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ライタープロフィール

柏木しょうこ
柏木しょうこ
エンタメ系翻訳家・ライター・企画編集。 『SMASH』『ブレイキング・バッド』などドラマ、映画をはじめ海外映像作品の字幕・吹き替え翻訳ほか、書籍翻訳を手掛ける。主な訳書は『ロング ウェイ ラウンド~ユアン・マクレガ―大陸横断バイクの旅』(世界文化社)『アンジェリーナ・ジョリー 暴かれた秘密』(ぴあ)、『恋とニュースのつくりかた』ほか。『英語で楽しくtwitter!―~好きを英語で伝える本』執筆・監修。現在、ジャパン・ニューズ(旧デイリー・ヨミウリ)にて映画のシーンを語るFrom the Sript(木曜掲載)を隔月で連載中。

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