コメンテーター、タレントとしてはもちろん、TVプロデューサーとしても活躍しているデーブ・スペクター氏。
wowowの『海外ドラマNAVI』では幅広い知識で海外ドラマの魅力を紹介してきた彼も高く評価しているのが『ボードウォーク・エンパイア』だ。破格のスケールを誇る本作の魅力を、“ザ・海外ドラマ通”のデーブ氏にアメリカのTV事情を交えてたっぷりと語ってもらった。

――『ボードウォーク・エンパイア』はとにかく全てにおいてスケールが大きい、という印象ですが。
デーブ・スペクター(以下デーブ): このドラマがどれくらいビッグな作品かっていうと、ドラマの1話を披露するためにニューヨークでレッドカーペット・プレミアが開かれるんですよ。『ザ・ソプラノズ』もそうでしたけど、TVドラマなのに映画のようなイベントが開催されるというのは、アメリカのドラマでもそうたくさんあるわけじゃない。それくらい『ボードウォーク・エンパイア』は注目度が高い作品ってことなんですよね。
――ケーブル局制作のドラマはクオリティが高いと言われますが、このドラマはまさに“クオリティのHBO”にふさわしい作品ですね。
デーブ: もうどこでやっているのか、チャンネルを確認しなくてもすぐ分かる(笑)。それくらいHBOらしい作品。スケールが大きいってだけじゃなく、ネットワークのドラマじゃないので、言葉の表現にしても映像の表現にしても自由だけにリアリティがある。表現に規制がないという点ではHBOに限らずショウタイムやF/Xといったケーブル局でも同じですけど。見る側も、ネットワークのドラマみたいになんとなくチャンネルを合わせるというのではなく、“このドラマを見たい”っていう明確な意思が働くんですよね、ケーブルのドラマは。
――このドラマを見ると、禁酒法時代に俄然興味が沸いてきます。
デーブ: 『ボードウォーク・エンパイア』で描かれている1920年代っていうのはあまり知られていない世界なんですよ。もちろん映画『アンタッチャブル』などはあるし、アル・カポネは有名ですが、そういう断片は知っていても、実際にあの時代はどうだったのかを鮮明に覚えている人はよっぽど高齢じゃないといない(笑)。だからこのドラマを見るとすごく発見が多いんです。ドラマに登場するキャラクターはほとんど実在の人物がベースになっているから、歴史のドキュメンタリーのようにも楽しめる。単なるドラマじゃなくて本当に勉強になるんです。これは知識欲を刺激しますよね。HBOってもともとホーム・ボックス・オフィス=家にある映画館っていうコンセプトで始まった局ですから、映画に負けないドラマを作るっていうプライドがあるし、視聴者もそれを期待している。『ボードウォーク・エンパイア』がきっかけで、今、禁酒法時代のドキュメンタリーも大人気なんですよ。それくらい、あの時代のことが知りたいって興味をかき立てるドラマなんです。

――こういうクオリティを支えるポイントっていうのはどこにあるんでしょうか?
デーブ: とにかく役者の演技が自然というところも、すごくリアリティが出ているポイントだと思いますね。このドラマでは実際にアトランティック・シティのあのボードウォークを作ってしまったり、セットだけでも時代の再現力はすごいですが、それだけじゃ完璧じゃない。あのボードウォークを歩く人たちが本当に20年代に生きているような立ち居振る舞いが役者の隅々まで行き渡っているからこそ、あのリアリティが生まれるんです。
リアリティっていうのは本当に細部の積み重ねなんですよ。例えば衣装にしても、日本のドラマはちょっと整いすぎだよね。子供が学校で完璧にコーディネートされた服を着ていたり、医療ドラマや捜査もので白衣が真っ白だったり。でもそれじゃぁどうしたってリアリティに欠けちゃうでしょ?
――確かに。このドラマを見ると、ものすごく緻密に細部まで表現していて驚きます。
デーブ: アメリカのドラマってクオリティ・コントロールがしっかりしてるんですよ。もちろんそれだけのお金がかかってもいるのですが、世界100カ国に売るという目標もあるから、これは投資でもあるんです。だからこそみんな評判を気にしてどこかおかしなところはないかしっかりチェックするし、極力なくそうとする。そういう部分はドラマのリアリティに反映されるし、おのずとクオリティが高くなる。とは言えアメリカにだってくだらないドラマはありますよ(笑)。ですけど、もうずっとクオリティでは『ボードウォーク・エンパイア』みたいなケーブル局制作のドラマに負けっぱなしだったネットワーク局も、ここにきてようやく、本当にようやくこのままじゃいけないと思い始めた。だから今年の新作は当たりが多いですよ。
――お話を聞けば聞くほど、日米のドラマの違いを痛感してしまいます(苦笑)
デーブ: アメリカのドラマが日本のドラマと違うという風に感じられるのは、もちろん予算の違い、役者の演技なども大きいのですが、ビデオかフィルムかという質感の違いもあると思う。日本はほとんどがビデオ撮影ですよね。しかもHDで。それってキレイに写りますが、時にキレイすぎたりする。画が均一的だったり、カツラの境目が見えたりね(笑)。でも『ボードウォーク・エンパイア』はフィルム撮影だし、他のドラマもビデオで撮っていても、フィルム変換している。『ボードウォーク~』のような歴史ドラマには、フィルムの方がやっぱりリアリティが出ますよね。重厚感が違う。
――見どころが多いこのドラマですが、デーブさんから見た『ボードウォーク・エンパイア』の魅力とは?
デーブ: やっぱりキャラクター、そして俳優かな。『ボードウォーク・エンパイア』には『ザ・ソプラノズ』の脚本家が参加しているので、キャラクターにも共通点が多いんです。ナッキーもトニーも、どちらも悪いことをしてるけど、ハートはいい人間だったりする。家族を想っていたり、落ち込んだり。ナッキーも、何故か憎めなくて、一体彼がどのくらい悪人なのか計り知れないところがある。そういう多面的なキャラクターがものすごい魅力。そしてこれはやっぱり演じる俳優たちの力がすごく大きい。だってどんなにいい脚本でも、その役を演じる俳優に演技力がなければ台無しだし、演技力のない俳優のドラマなんて誰も見ないもの。

――スティーブ・ブシェミのキャスティングはまさに絶妙だと思いました。
デーブ: このドラマの英断のひとつが、主役にブシェミを使ったことですよ。このドラマはどうしても『ザ・ソプラノズ』と比較されてしまうのですが、だからわざとトニー・ソプラノとは間逆の、やせててちょっと貧相な人間を選んだんです。しかもブシェミはいい俳優だけど主演クラスじゃないでしょ? でもそれも狙いで、彼がアトランティック・シティにいても特に誰も目を留めない。だってナッキーは裏であれこれ悪事を働くから、目立たない方がいいんです。そういうキャスティングの妙がこのドラマには随所に盛り込まれてるんです。
――どの俳優も、キャラクターへのハマり具合が本当にすごいですよね。
デーブ: 『ボードウォーク・エンパイア』のような作品に出演することは、俳優にとってもすごく大きなことなんです。こういうドラマに出演するということは、それだけのクオリティを支える演技力があるという証明でもあるんです。例えばブシェミが演じるナッキーは表と裏の顔を使い分けてるけど、彼は彼なりに良心も倫理観もあって、その狭間で苦悩してる。その葛藤をブシェミは実に上手く演じてますよね。自然と苦悩がにじみ出る表情がすごくいい。ジミー(マイケル・ピット)にしてもそう。戦争でトラウマを抱えて、彼は一種の歩く時限爆弾ですよ。いつ爆発するか分からない危うさ。その緊張感が良く出てる。彼らは今後もっともっと活躍しますよ。アメリカでは作り手がちゃんといろんな作品を見ているんです。このドラマのクオリティの高さはみんなの知るところなので、キャスティング・ディレクターは全員注目してますよ。アメリカのドラマでは日本ほど有名スターの名前に頼らない。無名であっても役にハマればキャスティングするし、そうやって才能ある俳優を発掘していくのも醍醐味なんです。

――ちなみにデーブさんの個人的にツボなキャラクターは誰でしょう?
デーブ: マーガレットかな。彼女は一見大人しそうだけど、相当気が強い。20年代ってちょうど女性の参政権が成立した頃で、社会進出も目立ってくるのですが、そこでああいう気の強さを持った女性が、裏の顔を持つナッキーとどう付き合っていくのか。本来彼は彼女の相手どころじゃないんですよ。FBIにも追われてるし。むしろナッキーにとって彼女は一番面倒なタイプの女性(笑)。そんな二人の関係がどう転んでいくのかはすごく気になる。
あとFBIのネルソンもいいね。彼はとにかく不気味。原理主義で正義感では割り切れない執着心がある。彼は言ってみれば当時のタリバンですよ(笑)。これはね、今までにはちょっとなかったタイプのキャラクターで、それがまたドラマを面白くしてるんだよね。


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日米交流の橋わたし役として、アメリカのテレビ番組や情報等を日本に紹介している。
また、アメリカのテレビ番組ABC TV、NBC TV、CBS TV、FOX TV、及びイギリスBBC TV放送にて、日本国内の取材・調査やレポーターもこなし、数多くの日本のテレビ番組、芸能、人物、ドキュメント、情報、ニュース等を紹介、国内外を問わず活動し、幅広い層から多くの支持を得ている。小さい頃から、アメリカで子役として舞台、テレビ、CMで活躍。その後、アメリカのメディア業界にテレビプロデューサー、放送作家として活躍するようになり、1983年、米国ABC放送の番組プロデューサーとして来日する。
母国アメリカにおいて日本語弁論大会で2年連続優勝の経歴をもち、現在も1日3~5語の新しい日本語の単語を覚えることを日課とし、その卓越した日本語にますます磨きをかけている。ポイントをおさえた的確なコメント、鋭い批評は多方面から好評を博し、テレビ出演のほか、全国各地の講演や執筆活動等で多忙な毎日を送っている。
2009年度オリコン「好きなコメンテーターランキング」第一位獲得。

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- 著者
デーブ・スペクター - 価格1260円(税込)
- 出版 幻冬舎
「総理の肩にいますぐ貼りたい→リーダー湿布」など、震災後人気No.1ツイッター、待望の書籍化!「震災後初めて笑った」「癒された」という声続出の奇跡のつぶやき790一挙公開。
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