『ブラインドスポット<ファーストシーズン>』4.26ブルーレイ&DVDリリース デジタル配信同時開始

『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』、町山智浩が語る魅力

『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ <ファースト・シーズン>』アカデミー賞を受賞したマシュー・マコノヒーと、同賞ノミネートを誇るウディ・ハレルソンが競演し、そのクオリティの高さで2014年のエミー賞で5冠を達成した米HBOのサスペンスドラマ『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ <ファースト・シーズン>』。いよいよ4月20日(水)よりブルーレイ&DVDがリリースとなる本作の魅力を、毎回異なる評論家やライターが解説する企画がスタートした。1回目となる今回登場するのは、映画評論家の町山智浩。映画やドラマだけでなく小説、アメリカの文化などにも造詣の深い町山は、以下のように語っている。

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「70㎜フィルムで撮られたピントの浅い、夢のような映像。女性の死体が発見される。彼女は拷問された上、頭に鹿の角をつけた状態で見つかり、周囲には木の枝で作った魔除けが飾られていた。本作は、この儀式殺人を追う刑事コンビの物語。舞台はニューオリンズに近い、ルイジアナ州のメキシコ湾沿岸。これは一種の"南部ゴシック"だ。アメリカ南部はバイブル・ベルトと呼ばれ、聖書を字義通りに信じるキリスト教福音派が多いが、奴隷がアフリカから持ち込んだ呪術がカトリックと混じり合ったブードゥーやサンテリア、ヨーロッパ古来のまじない、いわゆるウィッチクラフトなども混在する。そんな迷信や因習に支配された神話的でグロテスクな南部の物語が南部ゴシックで、最近ではコーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』や、ダニエル・ウッドレルの『ウィンターズ・ボーン』がある。しかし、ラスト刑事(マシュー・マコノヒー)だけは異分子だ。彼は、相棒のハート刑事(ウディ・ハレルソン)にこんな話をする。『人間の自意識は進化の失敗だった。人間は自己という幻のために苦悩する。我々は意味のある存在だと信じているが、実際は何者でもない。子孫を作るのはやめて、仲良く絶滅すべきだ』 彼のセリフは押井守監督の『イノセンス』で繰り返し語られる哲学とほとんど同じ。ラスト(錆の意)は、ある悲劇によって心が錆びついてしまっているのだ。『口の中に嫌な味がする。サイコスフィア(精神圏)の匂いだ』 サイコスフィアはヌースフィア(叡智圏)とも言う。ソ連の原爆開発のメンバーでもあった科学者が1920年代に唱えた考えで、簡単に言うと人類の知性の集合体のこと。普通は刑事が口にする言葉ではない。しかもその後、ラストは色を味として感じると告白する。これは、音を色として感じたり、形に味を感じたりする、シナスタジア(共感覚)と呼ばれる現象。これは見たことのないドラマになるぞという期待を裏切らず、殺された女性ドーラのノートからは『黄色の王』という言葉が発見される。ここでホラーやアニメのオタクは仰天するだろう。ドラマ内では説明がないが、King in Yellowとは、作家ロバート・W・チェンバースの短編集『黄衣の王』(1895年)に登場する謎の邪神で、日本のアニメにまで登場する有名キャラ。『黄衣の王』から、詞の一節がドーラのノートに引用されている。『二重太陽が湖に沈み/カルコーサに影が伸びる』

このカルコーサなる場所を、二人の刑事は探し求める。実はカルコーサとは、『悪魔の辞典』の著者アンブローズ・ビアスの短編小説に登場する言葉。フランスに実在する地名だが、ビアスははるか昔に滅んだ古都として使っている。チェンバースの詩は、『二重太陽』とすることで地球外だと示している。この『黄衣の王』は、『クトゥルーの呼び声』のH・P・ラブクラフトの小説『闇に蠢くもの』にも引用されている。ラブクラフトはSFとゴシック小説をミックスしてコスミック・ホラー(宇宙的恐怖)と呼ぶ作品世界を作り上げたが、彼の死後もプロやアマがそれをふくらませて、クトゥルー神話体系なるものを育て続け、そこに黄衣の王も組み入れられた。神話体系では、黄衣の王はクトゥルーと同じく太古に猛威を振るっていた邪神とされるため、クトゥルー神話を扱った数々のゲームやマンガに登場する。クトゥルー神話は要するにカルトごっこなのだが、時々、本気で邪神を崇拝したり、生贄を捧げたりする人がいるから困る。2005年5月25日のニューヨーク・タイムズ紙は、ルイジアナ州の、ポンチャトゥラという人口わずか6000人の町のホサンナ教会の牧師ルイス・デヴィッド・ラモニカ(当時45歳)ほか9人の逮捕を伝えた。ラモニカらは1999年から数年間、自分の教会の中で自分の息子を含む25人の子どもを宗教的儀式においてレイプしたと自供。警察は教会の床に悪魔崇拝に使う五芒星が描かれた痕を発見した。ラモニカらは、猫を殺して、その血を儀式に使ってもいたらしい。彼らが何を崇拝していたのかといった詳細は報道されていない。ただ、犯人の中には地元の保安官補もいた。証言によれば彼らは熱心なキリスト教信者だったそうだが、聖書や神を現実として信じるなら、悪魔の実在も信じることになるので、何かのきっかけで寝返ることもあるだろう。本作の脚本家ニック・ピゾラットは、この事件が構想のヒントになったことを認めている。劇中で被害者の体に描かれた青い渦巻きも事実に基づく。ウィキリークスが流出させたFBIのサイバー犯罪班への通達に掲載されていた、小児性愛者たちがネット上で互いを見分ける暗号。それが青い渦巻きなのだ。

そんな虚実皮膜のドラマがじわじわと不気味に盛り上がり、第4話で一気にアクションへと爆発する。低所得者向け住宅地で三つ巴の銃撃戦の中を駆け抜けるラスト刑事を手持ちカメラで追いながら延々と続く長回しは凄まじい。相棒のハート刑事も戦う。彼の敵は自分のハート(心)の中にいる。ラストとハートはそれぞれ挫折して警官のバッジを捨てるが、トゥルー・ディテクティヴ(本当の刑事)になるのはそれから。ついに二人はカルコーサにたどり着き、黄衣の王と対峙する。クトゥルー神話によると、カルコーサは地球から150光年離れたヒアデス星団にあるという......。凄まじくもおぞましいドラマだけど、最後は意外、コスミックな感動が待ってるぞ!」

■商品情報
4月20日(水)ブルーレイ&DVDリリース
<セル>
『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ <ファースト・シーズン> コンプリート・ボックス』
ブルーレイ(¥11,300+税)/DVD(¥9,400+税)
<レンタル>
DVD Vol.1~4
発売・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

(海外ドラマNAVI)

Photo:『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ <ファースト・シーズン>』
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