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【お先見】おかしさと哀しさが表裏一体の異色ダークコメディ『Fleabag』

この秋にストリーミングで公開されたドラマには話題作が多いですが、なかでも 米国で批評家たちの熱烈な支持を集めたのが『Fleabag』。夏にイギリスのBBC Twoで放送され、9月半ばより米Amazonで配信されたこの話題作を紹介します。

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『Fleabag』は、イギリスの女優で劇作家のフィービー・ウェラー=ブリッジ(映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』)が製作総指揮・脚本を手掛け自ら主演するドラマシリーズ。1シーズン6話からなり、1話あたりは23~26分という短いドラマですが、これが観る者の度肝を抜く作品なんです。

主人公は、ロンドンに住み小さなカフェを営む20代後半とおぼしきフリーバッグと呼ばれる女性。フリーバッグには「みすぼらしそうな人、不潔な動物(人)」といった意味がありますが、なぜ主人公がそんなあだ名で呼ばれるのかの説明はありません。

ストーリーは、フリーバッグの日常生活と彼女を取り巻く人々の関係性の連なりで進行していきます。このドラマの大きな特徴は、主人公が終始こちら(カメラの方)に向かって話しかけてくること。この手法自体は新しくはないのですが、フリーバッグの語りかけがとても自然で、とにかく笑えるんです。

例えば、彼女の姉が初めて登場する場面で「姉は神経質。美人。でも多分拒食症よ」と紹介したり、父親の再婚相手のことを「彼女は邪悪な継母じゃないわ。ただ間抜けなだけなの」とコメントしたり、自分の旺盛な性欲に対して「セックスのことで頭がいっぱいなわけじゃない。ただそのことを考えずにはいられないの」などと言い訳したりします。その視点はおおかたシニカルで辛辣なのですが、それがかえって小気味よい。まるで脚本のト書きのように、相手の行動を予想し、それが的中したり全く予想に反したりする時にも笑いが生まれます。ナレーションではなく、思っていることをカメラに向かってダイレクトに語りかけていることにより、私たち視聴者はフリーバッグに不思議な親近感を抱いてしまうんです。ある意味、共犯関係と言えるかもしれません。

でも、このドラマの面白さはそこだけにとどまりません。フリーバッグは、ボーイフレンドが寝ている横でオバマ大統領の演説の映像を見ながらオ✖✖ーしたり(!)、イケメンのセフレがいてもなお行きずりのセックスをしたり、「ここはロンドンだからね」としょぼいサンドウィッチを法外な値段でお客に売りつけたり、盗み癖があって継母の部屋から盗った高価な彫刻をオークションで売ろうとしたりと、悪びれもせずによろしくない行動を重ねるわけです。

一方で、一緒にカフェをやっていた親友を事故で亡くした喪失感や、お互い素直になれない姉との微妙な関係、自分に向けられるべき愛情を継母に奪われ、関係がギクシャクしてしまった父親からの承認欲求、カフェが経営困難に陥っているといった厳しい現実がだんだん露わになってきますが、フリーバッグの孤独や哀しみ、怒りが、会話のぎこちなさから生まれる笑いと背中合わせになって、観る者の感情に刺さる。おかしくて、やがて哀しきダークなコメディなんです。

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共演者も芸達者ぞろい。40年以上のキャリアを持つ名脇役俳優のビル・パターソン(『アウトランダー』)が、フリーバッグの父親を飄々と演じ、いい味出してます。また、数々の受賞歴を持つ実力派女優のオリヴィア・コールマン(『ブロードチャーチ 殺意の町』『ナイト・マネジャー』)が演じる、にこやかに相手をくさすビッチな継母の存在感は、他を圧倒しています。

このドラマは、クリエイターのフィービー・ウェラー=ブリッジが2013年にエジンバラ・フェスティバル・フリンジ(スコットランドのエジンバラで毎夏行われる世界最大級の芸術祭)で自ら演じた同名の一人芝居の作品を元に、テレビドラマとして脚色されたものです。フィービーはとあるインタビューで、一人芝居がドラマになる時に上述の手法が取られたのは、自然な成り行きだったと言っていますが、どんな点がドラマと違うのか、受賞歴あるオリジナルの一人芝居もぜひ見てみたくなります。

『Fleabag』は、先の第7回クリティクス・チョイス・アワードでコメディ・シリーズ部門の作品賞と主演女優賞にノミネートされました。さらに、毎年師走になるとメディアがこぞってその年のベストをジャンルごとに発表するのが恒例となっていますが、NYタイムズやワシントン・ポストなどの大手紙から、女性誌のヴァニティ・フェアとELLE、音楽誌ローリング・ストーン、メジャーなエンタメ業界誌のヴァラエティまで幅広いメディアが選ぶ2016年ベストTVショーのリストの中に、同ドラマも堂々と名を連ねています。

このほどBBCアメリカが、フィービーの手掛けるスパイ・スリラーのドラマをオーダーしたことが発表されました。 米国で2017年に放送予定です。『Fleabag』のブレイクをきっかけに、ますますテレビの世界でも活躍しそうなフィービー・ウェラー=ブリッジ。このドラマの印象から、てっきり美形のコメディアンなのかと思いきや、多くの名優を輩出している名門、英国王立演劇学校でクラシックな演技の訓練を受けた人でした。今後、注目したい逸材です。

Photo:
『Fleabag』 (C)Capital Pictures/amanaimages
ビル・パターソン (C)INF/amanaimages
オリヴィア・コールマン (C)Capital Pictures/amanaimages

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キャサリン

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サーシャLK

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