米TV界で各賞受賞の傑作ドラマ「ブレイキング・バッド」の人気キャラクター、ソウル・グッドマンを主人公にした「ブレイキング・バッド」の前日譚ドラマ

ハリウッド女優たちの愛憎のぶつかり合い!『フュード/確執 ベティvsジョーン』

突然だが、あなたは「ハリウッドの第一線で活躍している50歳以上の女優」を10人挙げられるだろうか? アカデミー賞最多ノミネート記録保持者であるメリル・ストリープ(68歳)を除けば、すぐに思い浮かぶ人は多くないのではないだろうか。ただし、これが「女優」でなく「男優」となれば簡単だ。例えば、トム・クルーズ(55歳)、トム・ハンクス(61歳)、ジョニー・デップ(54歳)、ジョージ・クルーニー(56歳)、ブラッド・ピット(53歳)、ハリソン・フォード(75歳)、キアヌ・リーヴス(53歳)、ロバート・ダウニー・ジュニア(52歳)、サミュエル・L・ジャクソン(68歳)、デンゼル・ワシントン(62歳)、コリン・ファース(50歳)、リーアム・ニーソン(65歳)...と、あっという間に10人以上を挙げることができる。

人気女優であっても一定の年齢を迎えた途端、出演依頼が少なくなったり、オファーが母親役ばかりになったりするというのはよく聞く話だ。現在でもそうなのだから、50年以上前、より若さと外見が重視され、スタジオ側が大きな権力を持っていた時代の女優たちがいかに厳しい立場にあったかは想像に難くない。

20170929_feud_01.jpg【関連記事】劇中と違って和気あいあい!『フュード/確執 ベティvsジョーン』試写会付き記者発表会

そうした女優が抑圧されていた時代だからこそ生まれたドラマを描いたのが『フュード/確執 ベティvsジョーン』である。アカデミー賞で5部門にノミネートされた心理サスペンス映画『何がジェーンに起ったか?』(1962年)の撮影の裏で繰り広げられていたベティ・デイヴィスジョーン・クロフォードによる激しいライバル関係を、ライアン・マーフィーが赤裸々に捉えた話題作で、第69回エミー賞では作品賞を含む18ノミネートを果たした。

1906年生まれのジョーンは美人女優として、1908年生まれのベティは演技派女優として、ハリウッドで名を馳せ、そろってアカデミー賞主演女優賞も獲得。しかし、年を重ねるとともに仕事が減り、焦りを感じていた。そんな中、ジョーンが自ら見つけた小説をなじみの監督ロバート・アルドリッチの元に持ち込み映画化したのが、『何がジェーンに起ったか?』だった。子役時代にスターだったジェーンと、子役時代は芽が出なかったものの後に成功したブランチという姉妹が、年老いて二人だけで暮らす中で起きる軋轢を描くサスペンスだ。ジェーンは事故で半身不随となった姉のブランチの面倒を長年見ているが、お互いに対する不信から諍いが絶えない。そんな中、ジェーンが次第に狂気に駆られていく...。「かつて人気女優だったが、斜陽の時期を迎えた二人の女性」という、当時50代に突入していたベティとジョーン自身にも重なる役柄で、ジェーンをベティ、ブランチをジョーンが演じている。

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しかし、その撮影は決して順調なものではなかった。同じワーナー所属として役を競ったこともあり、本作で返り咲きを狙う女たちの戦いは熾烈を極め、さらに外野(配給会社やメディア)も二人の対立をネタにしようと火に油を注ぐ。彼女たちの板挟みになったアルドリッチ監督が疲弊しながらもどうにか映画は完成。そしてひとたび公開されると、予算の9倍の興行収入を叩き出す大ヒットとなった。だが、ベティとジョーンにハッピーエンドが訪れることはなかった。その後に発表されたアカデミー賞に関連して、またしても激しいバトルが勃発。まるで小説のような展開は同賞をめぐる有名なエピソードの一つとなったが、その内容はドラマ本編でぜひご確認いただきたい。

以降も二人の因縁は続く。『何がジェーンに起ったか?』の再現を狙ったアルドリッチ監督作『ふるえて眠れ』で再共演することになったのだ。その顛末についてもここでは述べないが、ハリウッドの黄金時代を代表する二人が相容れることはついになかった。

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ここまでずっとベティとジョーンの「確執」に触れてきたが、本作が描いているのは「愛情のすれ違い」でもある。生い立ち、仕事、演技のメソッド、結婚、子どもとの関係などが全く対照的、もしくは非常に似通っていた二人は、相手に親近感と憧れを感じていながら、それをちゃんと表現することができない。『何がジェーンに起ったか?』のラストでジェーンとブランチの姉妹はようやく腹を割って話すが、この『フュード/確執 ベティvsジョーン』にもそれを想起させる場面が最後に用意されている。第1話の冒頭につながるそのシーンを観れば、ジェーンとブランチのようになることができなかったベティとジョーンの姿に、切ない気分にさせられることだろう。

また、『アメリカン・ホラー・ストーリー』『スクリーム・クイーンズ』といった女性がメインの作品を数多く手掛けてきたマーフィーだけあって、ベティとジョーン以外の女性キャラクター ――ゴシップ記者、映画監督のアシスタント、監督の妻、女優の娘、女優のメイド――についても細かく描かれている。二人の女優の確執を通じてこの時代の女性たちの苦境、努力、挫折、献身、自立、暴走、悲哀などを取り上げているのだ。これまでベティやジョーンのような状況にあるベテランを中心に多くの女優を起用してきたほか、スタッフにも女性をはじめとした"業界的マイノリティ"を積極的に登用するマーフィーの視点は、あくまで女性に寄り添ったものだ。

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キャスティングも秀逸で、特にベティ・デイヴィス役にスーザン・サランドン、ジョーン・クロフォード役にジェシカ・ラングを起用したのは面白い。『キングコング』のヒロイン役で映画デビューした、美人女優の印象が強いジェシカと、『テルマ&ルイーズ』のように若い頃から自立した女性の役が多いスーザン。実際にはスーザンが3つ年上(スーザンは今年10月に71歳!)なこともあり、配役がむしろ逆なのではと思わせるが、ひとたび彼女たちの演技を観れば違和感はない。二人とも、ジョーン、ベティと同じくアカデミー賞主演女優賞を獲得しているのだから、それも当然だろう。

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そんな二人の間を右往左往する羽目になるアルドリッチ監督役のアルフレッド・モリーナも苦労人を好演。そして名バイプレーヤーのスタンリー・トゥッチが、ワーナーの名物オーナー、ジャック・ワーナーを生き生きと演じる。『風と共に去りぬ』のメラニー役で知られるオリヴィア・デ・ハヴィランドを某オスカー女優が演じているのも驚きだったが、個人的に一番のサプライズだったのは、ジョーンを公私にわたって支えるママシータ役のジャッキー・ホフマン。生真面目さと忠誠心をあわせ持ち、女性の地位向上を支持する彼女が画面に登場するだけで安定感が加わった。

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実際にあったハリウッドを代表する確執を、時にシニカルに、時に温かく描く伝記ドラマ『フュード/確執 ベティvsジョーン』。全編観終えてからだとまた違った見方ができるオープニングタイトルのほか、美術や衣装も趣向を凝らした、何度でも楽しめる秀作である。

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■放送情報
[字幕版]9月29日(金)より毎週金曜 23:00~【STAR 1】
[吹替版]10月4日(水)より毎週水曜 23:30~【STAR 3】※10月4日(水)は第1話無料放送

番組公式サイトはこちら

Photo:『フュード/確執 ベティvsジョーン』
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