女優たちのパワーが炸裂する、この秋の2大ヒットドラマ、『スーパーガール』『ブラインドスポット(Blindspot)』に共通するブランドとは!?

2015年秋、素晴らしいスタートを切った2本のアクションドラマがある。

"アクションもの"と言っても作品のトーンはかなり異なり、まったく好みの違う、目の肥えた視聴者たちをシーズン序盤から惹き付けている。放送開始前から背負わされた大きな期待を裏切ることなく、主演女優たちはその魅力をそれぞれ存分に発揮している。そして華々しくオープニングを飾ったこの2作のヒロインのドラマには、実はある共通点がある...。

メリッサ・ブノワとジェイミー・アレクサンダー
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まず1本目。米の地上波局CBSで10月26日に初回をプレミア放送した『スーパーガール』。ご存知、あの無敵のヒーロー"スーパーマン" のいとこの女の子の物語(DCコミック原作)だ。

存亡の危機を迎えた故郷クリプトン星から地球に送り出された赤ちゃん(やがて鋼鉄の男スーパーマンとなる)を守るという使命を帯びて、後に続いて我々人類の住む星へやってきた少女カーラ・ゾエル。クリプトン星の爆発時に起きた時流の狂いから、20年以上遅れてカーラが地球に降り立った時には、すでにスーパーマンは立派な大人に成長していた。地球に必要なスーパー・ヒーローはただ一人、彼だけ。カーラは、デンバーズ家という人間の家庭に預けられ、その秘められた力を世間に一切知られることなく大人の女性に成長したのだった。

この『スーパーガール』という題材は80年代に一度映画化されている。映画そのものは内容的にも興行的にも奮わなかったものの、当時主演を演じたヘレン・スレイターは美しく、注目を集めた。彼女はその後も『摩天楼はバラ色に』などの映画の重要な役柄に抜擢された。最近では『マッド・メン』の最終話に登場したことが記憶に新しい。そのヘレンが、今回のテレビドラマ版『スーパーガール』では、カーラの地球での育ての親を演じている。なんとも心憎いキャスティングだ。

メリッサ・ブノワ

そして今回の主人公カーラ(スーパーガール)を演じるのは、今年のアカデミー賞でも旋風を巻き起こした映画『セッション』でマイルズ・テラーに傷つけられる恋人役を好演したメリッサ・ブノワ(※なお、日本では"ブノワ"という表記が定着しているが、コミコンや本ドラマでのインタビューでも、テレビのトーク番組出演時でも、"メリッサ・ブノイスト"と正式に呼ばれている)。

メリッサは、『glee/グリー』のマーリー役でも活躍していたのでテレビファンにもおなじみだろう。しかし『glee/グリー』で脇役を演じていた時には、今の彼女の大躍進までは想像などできなかった。

そのメリッサは、このスーパーヒロインの女性として輝きを放っている。まず底抜けに明るい。アメコミの実写化にもいろいろな作風があるが、このドラマは画も鮮やかな原色が際立ち、キャスト陣の演技にも良い意味でマンガチックな小気味よさが溢れている。特に主人公カーラは24才まで冴えない、でも元気で、ちょっと天然っぽい粗忽者の女の子として描かれ、メリッサがなんとも可愛らしく軽妙に演じている。視聴者に「好感を持つな!」というほうが無理(笑)。

一度観たら、つい見守りたくなる愛嬌を醸し出している。
このドラマは確実に日本に届くと思うので見どころのネタバレはしないが、本当はスーパーな能力を秘めているカーラが、ある事件をきっかけにその力量を世界に知らしめる場面は痛快だ。なにしろ、24年間もその能力を使っていなかったカーラは、飛ぶことさえ忘れているのだから! 誰もが親心で、これからの活躍を見届けたくなってしまうだろう。

スーパーガール』はスーパーマンの血縁として有名で、人気の下地は当然あった。強く独立心のある女性ヒーローを応援する傾向にあるアメリカ市場にはもってこいの題材だったに違いないが、スーパーヒーロー映画やドラマ群が全盛を迎えている今、跳ね上がっていた期待値に応えたことは見事というしかない。

そしてもう一本ご紹介するドラマは、『ブラインドスポット(Blindspot)』

同じ地上波ネットワークである米NBCが、『ブラックリスト』以来、快心の犯罪スリラードラマを世に送り出した! "盲点・死角"という意味のタイトルのこの作品。とにかく斬れ味がすこぶる良い。はじめは名前もわからない謎の人物がNYのタイムズスクエアに現れるドラマの冒頭から、異様な緊張感が漂う。全裸で、全身にタトゥーが刻まれた「女」が路上で、激しいライトを浴びている姿はショッキングでもあり、地上波のドラマとしては挑発的とも言える。

この女性には、記憶が一切無い。名前すら判らない。しかし、身体の隅々に描かれた絵や文字には何らかの意味がある。FBIが彼女の身柄を確保すると、すぐさま特別捜査官のカート・ウエラー(サリヴァン・ステイプルトン)が事件の解決に招集される。ウエラーは、なぜ自分が突然呼び出されたのかが解らない。しかし、この記憶を失った女性には、ウエラー捜査官との明らかな「つながり」があることが判明するのだ。この「つながり」が明かされる瞬間は、一瞬、気味の悪さでゾッとする。

サリヴァン・ステイプルトン

敏腕であるウエラー役を演じ切るサリヴァンは巧い! 傑作映画『アニマル・キングダム』にも出演した実力派が、この番組の骨太で知性的な作風を牽引する。

画も、テレビではトップ級に属すると言っても過言ではないだろう。彩度を抑えた、重みを感じさせる色調でありながら、撮影&照明、そして構図がどこを切り取っても素晴らしく、1フレーム1フレームが美しい。編集、アクションにも非の打ち所の無い洗練されたセンスを感じさせるこの作品は、現時点ではこの秋にスタートした新作ドラマの中では一番のお気に入りだ。

そしてこのドラマの主人公である、謎の女性を演じているのがジェイミー・アレクサンダーである。マーベルの映画『マイティー・ソー』のシリーズやドラマ『エージェント・オブ・シールド』で、ソーの仲間の一人、"レディ・シフ"を演じて人気を集めている彼女だが、マーベルの作品の中では彼女は物語の中心にはいない。僕自身は(マーベルのユニバースに常に注目しているとはいえ)"シフ"を演じている彼女に注目することは正直あまりなかった。

ジェイミー・アレクサンダー

しかし本ドラマでは、表情も体つきもグッと引き締まり、主演として彼女はその危機感に満ちた演技を遺憾なく発揮する。記憶が無いという、心に崩れそうな葛藤を抱えながら、しかし驚くべき秘密と訓練された能力が実はあるという、かなり困難な役柄をスリリングに表現している。

記憶を失った特殊な人物」という設定は、古今よくある設定なのだが、それなのに新鮮さを打ち出し、飽きさせず見入ってしまうような迫力を生み出しているのは、ジェイミーやサリヴァンや主要キャストの演技力の確かさと、脚本家らのストーリーテリングの力量の賜物だろう。こちらはスーパーヒーローものではなく、一級の「刑事アクション・スリラー」に仕上がっている。

さて、この秋の快作2本のドラマには共通の血が流れている。

双方の製作を、バーランティ・プロダクションズワーナー・ブラザース・テレビジョンが手がけているのだ。製作総指揮の一人にグレッグ・バーランティが名を連ねる。

グレッグ・バーランティ

そう、地上波CWネットワークで近年『ARROW/アロー』『THE FLASH/フラッシュ』の(2作共にDCコミック原作)を立て続けに大ヒットさせている、脚本家・プロデューサー・トップクリエーター(作品の発案者)として波に乗り続けているその人である。

グレッグ本人のインタビューによれば、『ARROW/アロー』はクリストファー・ノーラン監督の映画『ダークナイト』シリーズ(DCコミックス原作)の雰囲気をかなり意識したという。それに対して『THE FLASH/フラッシュ』の印象はもっと明るく快活なものだ。

今回の『スーパーガール』は、近年のヒーローもののダークさを一旦忘れさせる、さらに爽やかさを増したストレートでハイテンポな作りだ。残念ながら、放送局も異なることから、『ARROW/アロー』や『THE FLASH/フラッシュ』とは一線を画し、『スーパーガール』のキャラクターたちや物語が上記2作とクロスオーバーすることは無いとグレッグは語っているが、こういう男女さまざまなヒーロー/ヒロインたちが同じ世界に存在しているのだな...と想像を巡らすだけでも楽しい。

一方、『ブラインドスポット(Blindspot)』はコミックとは関連はなく、『ARROW/アロー』に見られるようなリアルな斬れ味に、より一層の磨きをかけた大人世代の視聴者を引き込み得るドラマだ。こちらはアメコミでもともとファンを獲得したジェイミー・アレクサンダーが、ドラマチックな女優として一歩も二歩も飛躍した印象を与える。ジェイミーは前述したようにマーベル世界の"シフ"役で知られてきた女優だが、『ブラインドスポット(Blindspot)』は間違いなく彼女の演技キャリアの代表作となるだろう。

メリッサ・ブノワにしても、ジェイミー・アレクサンダーにしても、溢れる魅力と確かな演技力を持つ人材は、別のジャンルや別の製作チームの現場でも、しっかりと輝くことができるのだと感じさせる。抜擢されるには確かな理由があると!! そして、優れたクリエイターたちやキャスティング担当者たちは、輝き得る宝石の原石をしっかりと見極める眼があるのだと、思い知らされる。

スーパーガール』は今秋の新作ドラマの最高の数字となる、初回1296万人の視聴者数を叩き出し、業界を賑わすニュースとなっている。
一方『ブラインドスポット(Blindspot)』も、初回放送で1000万人以上、録画視聴も含めると1700万人に迫る視聴者数を記録した。

グレッグ・バーランティ」というクリエーターの名前が、J.J.エイブラムスやジョス・ウィードンのように、世界中の映画やドラマファンにとって誰もが知るところになる日...、「巨匠」と呼ばれる日は、もう目の前かもしれない。

Photo:
メリッサ・ブノワとジェイミー・アレクサンダー
(C)Izumi Hasegawa/www.HollywoodNewsWire.net
(C)Hanako Sato/www.HollywoodNewsWire.net
メリッサ・ブノワ(C)Mayuka Ishikawa/www.HollywoodNewsWire.net
サリヴァン・ステイプルトン(C)Ima Kuroda/www.HollywoodNewsWire.net
ジェイミー・アレクサンダー(C)Kazuki Hirata/www.HollywoodNewsWire.net
グレッグ・バーランティ(C)Thomas Lau/www.HollywoodNewsWire.net

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ライタープロフィール

尾崎英二郎
尾崎英二郎

リアリズムを追求する米国の演技手法を日本で学び、NHK『あぐり』でTVデビュー。

99年のNYオフ・ブロードウェイ公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』で現地メディア批評家に演技を称賛され、その後アメリカの映画/TV業界を目指す。03年、侍のアクションメンバーとして出演した『ラストサムライ』をきっかけに人脈を広げた。

06年に主要キャストとして日本から抜擢された『硫黄島からの手紙』でハリウッドへの扉をこじ開け、ついに念願の本格渡米を実現。

米TVシリーズ『TOUCH/タッチ』『フラッシュフォワード』『HEROES/ヒーローズ』など、自らの出演体験をもとに、ハリウッドのシステムの凄みを伝える。

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