米TV界で各賞受賞の傑作ドラマ「ブレイキング・バッド」の人気キャラクター、ソウル・グッドマンを主人公にした「ブレイキング・バッド」の前日譚ドラマ

『スタートレック』の逆襲!?

スタートレック

米国の人気テレビドラマ『スタートレック』のオリジナル・シリーズのキャラが、映画になって帰ってきた! 
それも、今や押しも押されもせぬ米テレビドラマ界の鬼才J・J・エイブラムス(『LOST』『エイリアス』)の監督・プロデュースで。もともと、『スタートレック』より『スター・ウォーズ』の方が好きだった(!)という不謹慎なエイブラムス監督だが、しかしそんな彼だからこそ、一部の熱狂的なファン(「トレッキー」や「トレッカー」と呼ばれ、イメージ的には日本のオタッキーに近い)のみならず、特にSF好きでもない一般の人たちにもアピールする作品に仕上げることができたのだろう。

そんな映画『スター・トレック』(なぜか最新作だけ中黒《・》付き)は、6月半ばの時点で、2009年上半期の全米興行成績第一位を獲得。さらに、1979年から2002年の間に作られた10本の『スタートレック』映画の興行成績をすべて抜き去り、同時に批評家の評価も全11作の中で一番高い(Rotten Tomatoes調べ)という偉業を達成した。

そもそも、『スタートレック』って何?

「名前は聞いたことあるけど、観たことない。『スター・ウォーズ(以下、SW)』なら観たけど」という方も多いかもしれない。
そもそも『スタートレック』とは、1966年に放送開始された米国のテレビドラマシリーズ(うち、オリジナル・シリーズの邦題は『宇宙大作戦/スタートレック』)。1977年公開のSWより10年以上も前に始まった、"元祖スペースドラマ"なのだ。その特徴は宇宙を舞台にした"人間ドラマ"にあり、ファンタジー色が強い"スペースオペラ"であるSWとは一線を画している。
たとえば、『SW』が「遠い昔、遥か彼方の銀河系」での昔話であるのに対し、『スタートレック』は「22世紀から24世紀の間の、地球を含む惑星連邦が治安を維持する銀河系」が舞台。
登場する異星人も、ちょっと耳が尖ってたり、妙に顔色が悪かったり、やけにデコが広かったりするが、基本的に人間っぽい姿かたちをしており、ガマガエルの親分やチューバッカは出てこない。得体の知れない"フォース"で"悪"をやっつけたりせず、人間の"智慧"と"機転"で危機を乗り越える、いわば「人間の人間による人間のための」SFドラマなのだ。

人種の壁を超えたパイオニア的ドラマ

未来の地球では人種差別が完全になくなっているという設定から、オリジナル・シリーズの主人公ジム・カーク船長(ウィリアム・シャトナー『ボストン・リーガル』)率いる宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の乗組員たちは、アフリカ系女性、スコットランド人、ロシア人、アジア人と、まさに人種のるつぼ。
今では何でもないようなことだが、まだ人種差別意識が残っていた60年代当時のドラマで黒人女性を主要キャラに据えたり、ソ連との冷戦中にロシア人を配役したりすることは極めて異例のこと。かのウーピー・ゴールドバーグはこのドラマで「召使い役じゃない黒人女性」を初めて観て衝撃を受け、女優になることを決心したという。
また、アジア人代表のヒカル・スールー役には、日系アメリカ人俳優のジョージ・タケイ(『HEROES/ヒーローズ』)が抜擢された。そしてこのドラマの代名詞ともいえるミスター・スポック(レナード・ニモイ)に至っては、地球人とバルカン星人のハーフ。"バルタン星人"ではないので、ザリガニみたいなハサミではなく普通の手だが、しばしば中指と薬指の間を離して手のひらを相手に向け、「長寿と繁栄を(Live long and Prosper)」というバルカン星流の挨拶をする(『HEROES/ヒーローズ』そのほかのSFドラマでもオマージュとしてよく登場)。
このように多様な登場人物が繰り広げる群像劇が幅広いファン層に支持され、『スタートレック』は現在までにアニメシリーズ1本を含めた6本のテレビシリーズが作られ、合計30シーズン・716話という他に類を見ない圧倒的な歴史を持つテレビドラマとなったのだ。

若返り、イケメン化したキャラたち

そんな歴史ある『スタートレック』、シリーズが重ねられるごとに主要キャラも変わり、映画も今回で11作目。
この最新作の物語設定は、なんと1966年のオリジナル・シリーズの"ビギニング"。何しろいっちゃん最初の話だから、これまでのストーリーを全く知らない人でもモウマンタイ。
そして主要キャラは若い俳優に一新、昔の二枚目から今風のイケメンへと進化した。主役のジム・カーク船長役には、ポスト・ブラピの呼び声も高い、イケメン俳優クリス・パイン。そしてスポック役には、『24 -TWENTY FOUR-』のアダム・カウフマン役や『HEROES/ヒーローズ』のサイラー役でお馴染みのザッカリー・クイント。そしてオリジナル・シリーズでスポック役を演じていたレナード・ニモイが、未来のスポック役として出演しているのも、昔からのトレッキーにはうれしい限りだ。

テレビドラマの娯楽性を受け継ぐ映画!

SF映画らしく、SWばりの息もつかせぬSFXアクション満載(それもそのはず、特殊効果を担当したのはジョージ・ルーカスのILM)だが、特筆すべきはそういったSFにこだわってマニアックになりすぎることなく、全編を通してギャグやユーモアが散りばめられ、誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっていること。これは、オリジナル・シリーズの世界を大切にした監督エイブラムスの心憎い演出で、テレビドラマ・クリエイター出身監督の面目躍如といえよう。
この復活版『スター・トレック』、すでに続編の製作が発表されており、これまで映画ではSWに押され気味だったテレビドラマ界の大御所が今、新しい波を起こしつつある。
今ならまだ間に合う、あなたもトレッキー(またはトレッカー)となって、このビッグウェーブを乗りこなそう!


■『スター・トレック® シーズン1』 Vol.1 2009年07月01日発売予定!
【価格】¥6300円(税込)
【発売元】パラマウント ジャパン

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ライタープロフィール

南雲祐輔
南雲祐輔

NY在住のリサーチャー/ライター。好きなドラマは『シックス・フィート・アンダー』『ブレイキング・バッド』『ゲーム・オブ・スローンズ』など。好きなシチュエーション・コメディは『HEY!レイモンド』。

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